理想の部屋

理想の部屋

石川なお子

 いい年をしたおっさんとしては、こういう若い女性のプライバシーを描いた作品を読むと、無性に嬉しくなって邪心がうごめくのではありますが、それはさて置き。
 この作品は二つの段落からなっています。第一段落では部屋の外(社会)のことが書かれており、第二段落では部屋の中(自分の領分)のことが書かれています。自分の領分は一人暮らしの気楽さから散らかって、自分にとって価値のあるもの、気持ちいいものだけが存在しています。この部屋を心地よく思い、外に出たくないと思うのは、社会に合わせて生きることに対して嫌悪や疲労を感じているからなのでしょう。「いまはひとりだからいいけれど……」という言葉の裏には、いつまでも一人の世界を失いたくないという気持ちが隠されているようにも思えます。この作品は、同年輩の女性にどのように受取られるのか伺いたいところです。