平和な国
のばきん
なかなか達者な書き手だと思います。分かりやすく丁寧な描写で、読むことに苦痛がありません。小説に限らず「文章を書き慣れた」という印象があります。設定も細かく述べられていて親切です。私はナイフに詳しくないのですが、ピジョンナイフ、アルバトロスナイフのくだりはお遊びでしょうか。刃渡り45センチならば、それはアルバトロスナイフというより、植木鋏ですよね。わたしはフィクションだと取りました。
近未来の設定としては、こういう発想が人々に無いとは言えないのでおもしろく思います。核の拡散の問題と同じで、無くしてしまえないものならば、信用できる理性的な人(世界警察を任ずるアメリカ合衆国)だけに持たせるか、あるいは全員が持って牽制しあうのが、とりあえずの解決法だからです。ただ作品として成立するためには、それに対する作者の見識も延べられる必要がありそうです。主人公の「太郎君」はただ登場するだけで、生きて生活しているように思えません。戸惑い、喜び、悲しむ人間として描いていなくては、ただの設定資料の域を越えられないように思います。
|