長蛇の列
samu
自分の主張をストレートに述べた作品です。ほとんどが会話で綴られています。主人公が列の最後尾だった男から話を聞く設定になっています。つまり、最後尾だった男こそが作者の意見の代弁者です。こうした構成では、弁士の信用度が作品の説得力に強く関係してきます。この場合、最後尾の男が主人公と同じレベルになっています。弁士が列に並ばない人間か、一度は回れ右した人間か、あるいは主人公とは明らかに物腰雰囲気の違う人間に描かれていれば、説得力が増すように思えます。いまのままでは、弁士がただ演説するだけの作品になってしまいます。
この列の先行きが見えないにもかかわらず並ぶことが主題なのか、一向に前に進まない列に並ぶことが主題なのか、あるいは自分が先頭になりたくないということが主題なのか、今一つ絞れていないせいもあるかもしれません。この列に並んでいればいずれかは先頭になるのでしょうか。主人公が聞き手としてはおとなしすぎて、対論になっていないことが、この作品の底を浅く見せてしまう原因のような気がします。
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