足りない
うこん
(一次予選得点:17.5)
ある意味では、始まった途端にある程度のストーリーが予測できる作品です。しかし、それでこの作品が価値の無い物かというと、そういうわけでもないのです。自分のエビフライではなかった、というところに重要な点があるのではなく、自分なりに理解している(あるいはそうだと思いたい)家族の関係が、じつは違ったものであるというところにあるわけです。家長として、この家で尊敬される存在だと思いたいが、実のところ「勝手なことを考えて」いたということに気づくところが、この作品のポイントです。だから、主人公は「これでええ」と呟いてしまうのでしょう。
さて、翌日のハンバーグですが、そこには誰の名が書かれていたのでしょう。また、同じように主人公以外の名前でしょうか。そう考えれば、家族たちがただ主人公に配慮のない人として描かれることになります。それでは、作品的にやや浅薄な気もします。もし、全員の分が用意されていて、主人公の名前があったならば……。主人公は労られる存在として家族で認識されているわけで、主人公の寂しさがより際立つでしょう。作者は意図的にかその辺りをはっきり書いていないのですが、さてどちらのなのでしょう。
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