朝の出来事

朝の出来事

あさ

(一次予選得点:19)

 日常を切り取った作品です。長距離通勤をする父親が、電車の中で娘や妻との心のふれあいをするという内容ですが、この作品に取上げられた事件だけでなく、日々にいろいろな些細なことがおこり、そしてまた、それがみな一様に幸せに満ちているという含みが感じられます。タイトルからも分かるように、これは非日常(大事件)ではないと思われます。そのことが、幸福感や安心感を支えているのです。
 こうした作品は、ストーリーの奇抜さや展開のスピード感とは無縁の存在で、読者によっては、どこがおもしろいのかわからないということもあろうかと思われます。あくまで、読者がこうした日常を想像することができて、また、その幸福感を共有できた場合のみ、持ち味が活かせるのでしょう。読者に想像力を求める作品ではありますが、文章の運びも巧みで「うまい」作品だと思います。