或る鉄ちゃんの出来事
夏目竜之介
鉄道ファンとしての主人公の日々を、淡々と綴った作品です。主要な内容は寝台急行「越前」(現在の「能登」にあたる?)に乗って福井に向かう場面に当てられていますが、前後に大歩危の旅師と、土讃線の女鉄ちゃんのことが出てきます。鉄道を通じて知り合った、いろいろな人のことを、懐かしく書き記しています。文章としては、あまり整理されておらず、構成のアンバランスがあります。もっと、「越前」車中のことをしっかりと書き、前後は簡潔に纏めるのが効果的ではないでしょうか。思い切って「夜10時、下り越前は入線し、茶色に白い帯を引いたグリイン車に乗車した」から書き始めてもよかったように思います。そのあとに「昨夜は大歩危から出てきた旅師と、神田の素泊まり宿で語り明かした。『土讃線に女鉄ちゃんが〜』と旅師が教えてくれた。そんな事を思い出しているうちに、私はついうとうとしてしまった」と続ければ、かなりすっきりするように思います。
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