駐在物語

駐在物語

kazuhiro sato

 はじめタイトルを見て、森繁久弥の「警察日記」を連想してしまった私は、やはりオジサンだと思いました。これは、商社やメーカーの海外駐在員の物語です。タイに駐在する日本人の生活が、とてもフィクションとは思えぬほどに、良く書けていると思います。特に奥方が、夫の浮気をチェックするあたりは、よく実態を押さえているといえます。
 この作品は、良くある完全犯罪崩しの形をとっています。犯罪やら浮気などの証拠を完全に消したはずが、思いもよらぬところから露見するという類型です。この場合、その露見の理由が意外なほど、読者に対するインパクトが大きいわけです。そうした点から言えば、この作品の場合、そうした知的な楽しみは少ないといえます。
 リアリティの点では高く評価できますが、もっと驚きのある結末を用意したいところです。