生まれうる思い
天津狐
(一次予選得点:16)
古くて新しい「生まれることに内包された恐怖」を正面から取上げた作品です。祖母の死と、姉の子どもの誕生を対比しています。ただ、祖母の死、姉の初めの子どもの死、次の子どもの誕生、という三つの出来事の描写が曖昧に行われているため、スムーズに読み進めることができませんでした。特に第二大段落の描写は初めの子の時なのか二番目の子の時なのかが判別し難くなっています。取上げた素材の大きさに対して、表現が追いつけずにいるように思われました。もうすこし、場面を整理して、千字に見合った内容に絞り込んではいかがでしょうか。
また「用事があるからと、母は心配する義兄を私に押しつけ、私は新生児室の前の長椅子に座り込んでいた」という文は、描写の視点が定まらず、意味の取り難いものになっています。
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