おおかみさま!

おおかみさま!

紅葉

 この作品は、最後の部分をオチとしたアイディア勝負のものなのでしょうか。今一つ、しっくりきません。それは、この作品の雰囲気がそうしたタイプでないからかもしれません。たとえば「大人の話してくれた物語に影響されて、美人になるために嘘をついている無邪気な子ども」という設定にするなり、「嘘をつく言い訳をする生意気な子ども」にするなり、はっきりと決めた書き方がされていればと思います。たとえば、前者なら、その姿をいかにもかわいらしく描いて上げるべきでしょう。「『嘘ついたほうがメリハリの利いた美人になって得するのよ』そう言って香奈は、ちょこんとした小さな鼻を天に反らすようにして笑った。」とすれば、主人公の香奈ちゃんに対する好意がでます。後者なら、またしかり。
 せっかく周辺の環境や親のことを描いているのですから、そっちの方向へ深く切り込んで欲しかったと思っています。