狐狩り
黒木りえ
(一次予選得点:15)
前回の同じ作者の作品とかなり似たニュアンスです。全体に主人公のか弱さや、社会への恐怖が滲んでいます。今回の「死んでしまえ」にも同じものがあるかもしれません。「他者をいたぶることの快楽」「他者を攻撃することで自分の安全への不安を打ち消そうとすること」そうした行為が事実として存在するということを、そしてそれによって体と心に傷を負っていく側が存在するということを、一貫して描写しているように思います。作品自体は、だからといってどうあるべきだと主張しているようには読取れません。これは、読者に解釈を委ねたということでしょうか。こうした、シチュエーションを正面から描き続けることが、この作者のスタンスかと思います。
最近は、いじめや暴力やドラッグを取り上げた(あるいは小道具とした)作品が多いようです。作品に刺激を増すため、安易にそうした方向に流れるのはどうかとも思うのですが、そうした素材が読者に求められる必然性があるというのも、書き手として理解すべきだと、この作品を読むうちに思えてきました。
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