落 ち る
横田雅明
(一次予選得点:16)
事態の深刻さのわりには、明るい調子の作品です。良くも悪くも読者に負担をかけない表現といえるでしょう。ほとんどが会話で構成されており、事態の説明も控えめです。この作品から、読者が共通に一つの主題を読取るのはなかなか困難な気がしますが、それは最後の部分で論の展開に戸惑ったせいがあるように思います。最後の文が読取れないと、全く作品が死んでしまいます。実は私もこの作品の主題が読み切れず、自分の解釈に自信が持てません。
ここからは、私なりの解釈。落ちるということは、まさに私たちの生き様のことでしょうか。人により羽のある者もあり無い物もあり、それぞれが孤独に落ちてゆく。終着地点には死が待ち受けているかもしれないが、われわれはそこに到着することを目指して落ちているわけではない。そこがどんなところかは良く分からない。行ったことがないから。それよりも自分が何であるのか、そしてそれにふさわしい落ちかたとは何なのか、それをもとめてわれわれは落ちているのだ。と、こんな風に読取ったのですが、ちょっと飛躍しすぎでしょうか。この解釈には全く自信がないということは、やはり私にとっては読取るのが難しい作品のようです。
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