見えない友達
池田朋子
(一次予選得点:16)
きわどいところをうまく書き抜けたという印象です。薬を否定的に使ったり、友情を前面に出すのは、小説という手法ではとても難しいことです。どうしても、うわべだけのものに見えたり、説教臭くなったりします。どういう訳か、読者は薬に溺れたり、純粋でない主人公にこそ親近感を覚えるようです。そうした難しいものにあえて取り組み、この作品は一応の成功を収めていると思います。作者の力量が感じられました。
前半の「見えない守護神」という表現が、あまり心に残っていなかったので、最後に「見えなかったのは」が唐突に感じられてしまいました。あと、桜や、受験の失敗などのシチュエーションが、十分に生かしきれていないと思います。受験のことが重要ならもっと書かなくてはいけないと思いますし、あまり関係ないなら出さなくても良かったかもしれません。桜にしても、単にサクラチルとの絡みで出したわけでは無いと思いますので、主人公の感情と桜の姿をうまくリンクさせて欲しいように思います。
ここからは、余談です。私は、この手の事情にはあまり詳しくないのですが、静脈注射で打つような「薬」ってそんなに普及してるんですか? おじさん世代なので良く分からないのですが。なんとなくイメージとして最近のものは、コカインはそのまま、アンフェタミンはアルミフォイル上で気化させて、ともに鼻孔吸引するように思っていたので、今一つしっくり来なかったのですが。年取ると、どうもその辺り弱いようです。
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