キレる
雅
(一次予選得点:16)
普段は「無関心な」時には「ボランティア精神」を発揮するような男が、徐々に憎しみを持つようになる。そうした過程が丁寧に描かれていると思います。たとえば、秋に落ち葉が際限なく降り積もっていたとしても、彼は毎日掃除をしていたでしょう。しかし、誰かがゴミを自分に押し付けていると感じたからこそ、主人公は耐えられなかったのです。ほぼ主人公の心の中だけで話が進行し、破局に向かいます。最後に殺す、というのは小説では「ほぼ禁じ手」だとおもいますが、この作品はそうする必然性があり、許容されるように思いました。
余談ですが、多くのキレる事件を見ていますと「生意気だから」「偉そうにしているから」「いじめられていたから」といった理由が目立ちます。つまり、相手が間違っているから制裁の意味で傷つける、という理由が多いのです。誰だかの言った「信念のために人を殺すのは、金銭のために人を殺すより下等なことである。なぜなら、金銭は万人に共通の価値を有するが、信念の価値は当人にしか通用しないからである」という言葉を思い出します
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