ショスタコーヴィッチの「森の歌」
 ムラヴィンスキー(左)指揮のショスタコーヴィッチ(下)の交響曲第12番と「森の歌」のCDを買って来た。MELODIYAのBVCX-4026。これは昔LPで買ったものだが、石丸で何気なく手に取って中が見られたのが運のつきである。何と「森の歌」の歌詞がちゃんと訳されているではないか(笑)。

 LP時代のこの「森の歌」の歌詞対訳と言えば、「原曲で歌える様に」とか言う配慮から、オブラートで包まれた訳しか載っていなかったものである。おかげで、ひょっとしたら、あれが本当の訳だと思ってしまった人が居るかもしれない(笑)。とんでもない話で、「Voskhodit zarya kommunizma!」がどう訳せば「まことの光いまや」になるか。今回はちゃんと「コミュニズムの夜明けがやってきた!」と書かれてる。もっとはっきりと「共産主義」と書けば、もっとよいのに。おまけにこの録音は1949年のものだから、元の歌詞を使っていて、フィナーレを「叡知あふるるスターリンに栄光あれ!」と堂々と歌い上げている。この部分はスターリン批判後、書き換えられてしまった。でも、ロシア語を聞き取る力なんぞ無い私には書き換えられた歌詞が何と言ってるのか残念ながらわからない。

 高校生の頃、NHKのFMで初めてこの「森の歌」を聴いて(歌詞改変後のもの。確かスヴェトラーノフが来日して演奏したものだと思う)、さっそくキリル・コンドラシン指揮のLPを買って聴いたのだが、その時歌詞カードと実際に歌われている歌詞が違う事に気がついた。あとからムラヴィンスキー指揮のこのLPも買って聴いた時は「おー、ちゃんとスターリングラードって歌ってるよ。」と感心したものである。で、友人と「流石、ソ連。スターリン批判でクラシックの歌詞まで変更してしまうとは。」とさらに感心したのである。

 と言う訳で、私の知ってる範囲(ったって、音楽も全然専門じゃないから、極めて狭い範囲)で唯一の「ちゃんとした対訳の付いてる『森の歌』」なので、これを目的に買っても良いかもしれない。定価\1,733なんだけど。昔、ロシア語の辞書ひきひき訳してみた所は何となく合っていた。あの労力を考えると、きっと\1,733は安い。

 ところで録音状態なのだが、この録音の「森の歌」ってこんなに悪かったっけ?前にLPで聴いた時はひょっとしたら再生状態が悪くてかえってあらが見えなかったのかもしれない。勿論、MONO。カップリングされている交響曲第12番は、解説でMONOって書かれてるのだが、本当にMONO?LP時代のはSTEREOだった様な気がしたし、聴いてみてもあんまりMONOの様な気がしないのだが。でも私の耳はいいかげんだから全然あてには出来ません

平成9年卯月30日



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