装備・アクセサリー編  Vol.2 '08/11/4更新
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 高価な電熱ベスト、買えないなら作ってしまおう・・・

2007.12.4
 カウルの性能がよいK100RSといえども、やはり冬は寒い。電熱ベストを使っている人から話を聞くと「温泉につかっているよう」だそうで、やめられないとのこと。でも結構高価。それほど寒がりではないつもりなので、欲しいな〜とは思いながらもガマンしていた。
 ところが、「簡単に自作できる」「材料費は1500円くらい」という情報が。猛烈に作ってみたくなった。
 
2007.12.5
 自作したという方からの情報をまとめると・・・
・電熱線は秋葉原の「坂口電熱」というお店で入手できる。25オーム/mのもの。
・この電熱線を80cmの長さに切って、首や背中、胸など何ケ所かに並べて、それを銅線で並列接続し電源に接続する。
・タイマIC555でON/OFFの間隔を調整するコントローラを作り、温度調整する。
ということだった。990円の安物ベスト
 まずは、ヒーター線を仕込むベストを探した。ライディングウェアの中に着るため、できるだけ薄く、内側がフリース地で外側がつるつるした生地のものが理想、ということで探したのだが、結構ないものである。ようやく、出張先でふらっと入ったスーパーの2階に吊るしてあったものを購入。税込み990円。このベストの表地と裏地の間にヒーター線を仕込むことにする。
 
2007.12.15
秋葉原の「坂口電熱」 材料を揃えるために秋葉原に出かけた。まずはヒーター線を買いに坂口電熱さんへ。目的のヒータ線を5m購入。
部品類 次に、コントローラの材料を揃える。ケース、スイッチ、タイマIC、VR、ヒータ線を接続するコネクタなど。配線材料や基板などは手持ちのものを使用した。ベストと車体の間はカールコードにしたかったのだが、適当な容量で安価なものが見つけられなかった。コネクタも防水仕様でなく普通の2ピンの110タイプとした。
 とりあえず材料が揃ったので早速製作開始である(早くしないと冬が終わってしまう)。まずはベストの加工。長さ80センチのヒータ線を4本仕込めるようにする。裁縫中裁縫中背中に1本、胸から肩を通って背中まで2本(左右)、首まわりに1本。ヒータ線が通るところが袋状になるようにミシンをかけていく。ヒータ線とコネクタが無理なく通せるよう、縫い線の間隔は2センチにする。
 ・・・ちなみに、裁縫は結構好きである。
 
2007.12.23
コネクタ取り付けコネクタ取り付け ベストの加工が終わったので、中に通すヒータ線を加工する。ヒータ線ははんだ付けができないため、ヒータ線加工完了電源線とは圧着端子等で接続する必要がある。今回は、断線したりしても容易に交換できるようにするため、ヒータ線の両端にコネクタを取り付けることにした。ヒータ線だけだとコネクタの樹脂が溶けてしまうため、断熱チューブに通して熱収縮チューブで仕上げた。なかなか凝った仕様である。なお、ヒータ線そのものの温度を低くしたかったので、電源線製作ヒータ線仕込み完了ヒータ線の長さは少し長めの90センチにした。
 次に電源ラインの製作。ヒータ線をベストに通し、ヒータ線のコネクタの位置に合うように電線を加工していく。完成した電源ラインはベストの内ポケットの底を抜いて電源線取り出し表地と裏地の間に入れ、ヒータ線のコネクタに接続する。電源線は、左のポケットの底を抜いて外に取り出す。電線の先端にコネクタを取り付けてベスト本体は完成となる。
 全体の抵抗値を測定してみると約6オーム。ほぼ計算通りである。12Vで駆動すると消費電力は24W。かなり控えめで電源容量が問題になるレベルではない。
 
2008.1.1
コントローラ回路図 新年初工作はコントローラの製作。教えていただいた回路はこちら。 → 
 タイマIC555で普通に単安定マルチバイブレータ回路を組むとONとOFFの時間比はほぼ1:1になるが、基板(製作途中)2つのダイオードとVRでコンデンサの充電電流と放電電流に差をつけ、比を変えられるようになっている。抵抗値を少々変更、コントローラコントローラ内部リレードライブ用のトランジスタを追加、など少しアレンジした。これらをケースの中に押し込めてコントローラは完成である。
 
2008.1.26
コントローラの取り付け 忙しくて乗る機会がなく(=ヒーターベストの出番もなく)少し放置していたが、実際にK100RSに取り付けてテストをすることにした。電源はアクセサリコンセントから取り、コントローラはマジックテープでタンク横に貼り付けた(ちなみに、防水は全く考えていない。雨が降ったら取り外すかビニール袋を被せるかである)。実践配備状態
 まずはコントローラだけでON/OFF動作の確認、続いてベスト本体を接続して発熱状態の確認。特に問題はないようである。
 実際に走行してみた時の温まり具合だが、これがなかなかよい感じである。特に、首の周りに一本入れているのがかなり効く。K100RSはカウルの効果が高いのでありがたみは少し薄れるが、ノンカウル車なら手放せない装備だと思う。
 なお、Tシャツなどの薄手で襟のない服の上にこのベストを着るとかなり「熱く」感じる。ベストの下には襟のあるフリース地の服などを着ないと低温やけどの心配がある。今回はヒータ線の長さは全て同じにしたが、首の周りに入れる線は他より少し長めにして表面温度を控えめにするのがよいようだ。
 
2008.10.10
 昨冬に作った電熱ベストだが、上にも書いてある通り改良の余地が少し。が、ひとりで何着も作ってもしょうがないので、材料費プラスアルファで試作品を買い取ってくれる人を募集して2008年バージョンを作ってみることにした。
 改良したい主なところは「電熱線の長さの最適化」「既製ベストにヒーター線を縫いこむ方式の改善」「既製服を使うことによるサイズ不一致問題の改善」などである。
 
2008.10.18
 前回作ったのは市販のベストMサイズに90センチのヒータ線を4本仕込み消費電力は24W、というものだったが、まず、市販のベストを使うと私の体型ではフィット感がない。電熱線が体から浮くことになるので効果が薄れ、コントローラで上げようとすると首が暑くなってしまう。袖切り取り子供用フリースジャケット着丈はベルトのラインより上くらいでよいのだが、これも長すぎて邪魔。
 たまたま家で捨てることになっていた「子供用」フリースジャケットを眺めていたところ、子供用なので胸周りがきついものの(あたりまえ)、着丈と胴回りはちょうどになりそうな感じだったので袖を取ってみた。すると、ほぼ理想のベストになることがわかったので、これをヒーター線の長さ決定用のベストとして仕立ててみた。ヒーター線3本仕様
 このベストは去年作ったものと較べて一回り小さいので背中部分にヒータ線を入れるスペースが少ない。ヒータ線の長さを120cmとし、首に1本、胸から肩を通って背中までで2本のヒータ線3本仕様にした。ヒータ線が長くなったため背中部分蛇行させて距離を稼いである(左写真赤点線部分)。ヒータ線が長く、さらに1本少ないため、消費電力は14.4Wになる。コントローラなしで使用できる熱量を狙ってある。
 このベストの具合だが、フィット感は良好。生地も薄いので邪魔にならない。温まり具合はさすがに良くなく、K100RSではそこそこ暖かいがスーパーカブで使うとカウルがない分効果が薄れ、少々寒い。
 
→→ このベストはその後改造。首のヒータ線を105cm、背中のヒータ線を100cmとした。消費電力は17W。フルカウルのK100RSではコントローラで調整が必要、スーパーカブは100%でちょうど。今年はこちらをメインで使用する予定である。
 なお、ヒータ線の長さを調節した場合、体感的な暖かさと消費電力は比例しない。ヒータ線を短くするとヒータ線の表面温度が上がるためである。
 
2008.10.19〜
 次なる改良ポイントは「既製ベストにヒーター線を縫いこむ方式の改善」。布袋作りヒータベストを着ることの利点のひとつは、「厚着をしなくて済むためモコモコしない」なのだが、ベストを一枚余分に着ることになるため当然その分着膨れする。そこで、ヒータ線だけを手持ちのウェアに取り付けられるようにできないか?ということで考えてみた。
 具体的には、ヒーター線を仕込んだ布の袋(筒?)を作り、手持ちのウェアの内側に縫い付けるというものだ。で、作り始めて見たのだがこの布筒作りが結構大変である。ヒーター線入り袋ある程度曲がる必要があるのだがヒータ線(特にコネクタとの接続部分)保護のため伸びないほうがよく、しかもなるべく薄くしなければならない。仮縫い伸びなくするために内側にストレートのアイロン接着芯を入れて一応の形になったが、一着あたり5m近く必要なので服に直接縫いこむよりかなり大変である。
 もうひとつ予想外(というか考えが至らなかった)だったのは、電源線の長さ。取り付ける服が決まってない状態では電源線の長さが決められない。この電源線、長すぎると邪魔になり、短すぎるとヒータ線にストレスがかかって良くない。ということで、結局手持ちのジャケットに仮縫いして電源線の長さを決めるという、余分な手間がかかってしまった。
 
2008.10.26
 もう一着は、今年の改良ポイントとは少し外れるが、長袖バージョン長袖のジャケットにヒータ線を仕込んだものになった。K100RSはカウルの性能がよいが、肩の部分には風があたるのでここが少し寒い。ということで、このタイプは肩の部分にもヒータ線を回しこんである。作り方は昨年のものと同じで、電源スイッチヒータ線を入れる部分の表地と裏地を縫いつけてある。
 こちらはコントローラなし仕様なので、ヒータ線は首110cm1本、背中と肩が100cm3本。実際に使ってみていないので温まり具合は不明である。
 
2008.10.27〜
 フィット感を追求してしまうと、市販の服に縫いこむ方式では限界がある。裁断市販品のサイズを調整するにしても、胴回りはまだ楽だが着丈を調整するには前のジッパーを付け直すなど手間がかかる。ヒータ線用布帯ということで、ベストを最初から作ってしまうことにした。ここまで来るとやり過ぎのような気もするが。
 使う布地は端の処理が不要なフリース地とし、型紙はそのあたりにある適当な服からとった。首の部分だけはヒータ線を入れるために二重にし、他の部分は1枚。これにヒータ線を入れるための布帯を縫いつけていく。表から見るとこの部分の縫い目がアクセントになっていい感じである。電源線には少し細いものを使い、袋状にした裾の部分に隠してしまった。ヒータ線は首が110cm1本、背中が100cm1本、肩が95cm2本。試着
首まわりの仕上げ さて、完成してみるとかなり良い出来である。試着してもらったが、当人のサイズに合わせて仕立ててあるためちゃんとフィットしている。
 市販のベストに縫いこむ方式から始めてこのタイプまで作ってみたが、どれが良いかというと一概には言えない。完成度からいうとこの自作ベストタイプが良いようだが縫製のテクニックと手間はそれなりに必要。
 2008年版の電熱服製作はとりあえず終わりである。
 

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