K100補修履歴・オイル/ウオーターポンプ編 2006/10/22 更新
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 このK100RSは現時点ではポンプトラブルは発生していない。しかし、水漏れ、オイル漏れの事例をよく耳にするので調べてみた。

2003.6.20
*****km
 最近、「エンジンの下部にオイルがにじんでいる」「エンジンの下から蒸気が噴き出す」といった話を時々聞く。エンジン下部それらは、「オイルパンの謎の穴」からだという。どうやらその穴とはオイルパンの前方、オイルフィルターカバーのさらに前にある穴(右側写真参照、クリックで拡大)のようだ。さらにいろいろ調べたところ、この穴は
 「オイル/ウオーターポンプのシールの異常を知らせるための穴」
らしい。何も漏れていなくて乾いているのが正常で、水(蒸気)または油が出てくれば、どこかのシールがやられているという。
 ところが、さらに調べると話がややこしくなってきた。「水なら少しくらい出ても大丈夫」「即修理」「Kのポンプは漏れるもの」・・・いろいろな情報が入り混じっている。程度にもよると思うが、ポンプの構造を図面から推測する限りでは、最悪の場合は冷却水がオイルポンプ側に漏れてエンジン内部が錆びたり、潤滑が悪くなってエンジンが焼き付いたりするはずだ。冷却水の色がにごってきたり、オイル確認窓が白っぽくなってきたら疑ったほうがよいようだ。
 さて、ひどく漏れてしまったときの対応だが、根本的に直すにはオイル/ウオーターポンプのオーバーホールしかない。ポンプ構造まずはパーツ代だが、オイルポンプの軸とウオーターポンプの軸は同じものなのでこれを交換することになる場合が多く、この場合は少し部品代がかさむ。2Vと4Vとでは部品の値段が違うが、パーツリストをみると4Vでは「スペーサー1,140円、リングシール2,640円、シャフトシール1,100円、シャフト12,560円、Oリング160円」、しめて17,600円というところらしい。工賃は10,000円ほどかかる。
 なお、実際に自分で交換したことはないので責任はもてないが、少し腕におぼえのある人なら自分でやることも可能らしい。もし交換することになった場合は詳細に報告したい。
 
2005.6.12 (O/H 1日目)
50516km
 ついにポンプのオーバーホールをすることになった。オイル・水漏れ漏れ始めたのは昨年の夏、高速道路をハイペースで飛ばした時にだけ漏れる程度だったので様子を見ながら乗っていたのだが、最近急に量が増えてきたのでシーズン前にオーバーホールを済ませることにした。
 一昨年にこのページの上部分を書いた時にはよくわからなかったのだが、まずは訂正から。
「ポンプのシールが壊れても水がオイル側にまわるようなことはない。」(構造図参照。)
 水用のシールとオイル用のシールは別になっており、二つのシールの間の空間が例の穴につながっている。パーツ一式つまり、穴に栓でもしてしまわない限り、漏れたものは穴から下に出るだけである。(余談だが、F650にも同じような穴がある。ただし、2つのシールと穴の位置関係が悪く、シールがやられるとこの穴から漏れるより先にエンジン内に冷却水が大量に流れ込むらしい。通称「カフェオレ現象」)
 パーツは、ディーラーで「必要になりそうなもの一式(*注1)」と言って揃えてもらった。シャフトは交換せずに済むことが多いらしいので注文しなかったので、しめて7854円。この他に冷却水やオイル、液体パッキン(*注2)などが必要になる。
 ポンプを分解する前にエンジンオイルと冷却水を抜かなくてはならない。左側は見本用のポンプ今回、オイルは7割方抜いた。ポンプのオーバーホールが終わった後、エンジンオイルを入れてしばらく走行した後にオイルとフィルターを交換しようと思っているで(シールのカスなどが少しは混入するため)、冷却水抜き取りここで新品同様のオイルを捨てるのはもったいない、というせこい理由からである。
 冷却水は、ポンプ部のドレンボルトを外して抜くということになっているのだが、このK100RSはドレンボルト部分に水温センサーが取り付けられている。センサーは外したくないので、ホースをいきなり引き抜いて冷却水を抜いた。ドライバーを入れるならココしばらく待った後でセンタースタンドを下ろし、車体をゆすってやるとさらに出てくる。
 冷却水が抜けると、ポンプ前のカバーを取り外しても大丈夫である。ボルトは9本あるが、泥や錆で六角穴が詰まっていることがある。回す前に細いドライバーやブラシなどで清掃しておくこと。左側は見本用のポンプまた、全てのボルトを取り外してもカバーは液体パッキンで貼りついているためなかなか取れない。細いドライバーを叩き込んではがすのだが、傷がついても大丈夫な場所を選ぶこと。右上と左上なら大丈夫だ。カバーをはがすとインペラが見えてくる。これは後期型で、鉄板をプレスしたタイプだ(前期型は鋳物)。また、シャフトへの取り付けもボルトになっている(前期型はナット)。
 本日はここまで。
*注1 揃えたパーツ: 
 オイルシール         11 41 1 460 329 ×1個 1100円
 メカニカルシール       11 51 1 464 901 ×1個 2640円
 Oリング(冷却水経路用)  11 11 1 460 392 ×1個 100円
 Oリング(インプットシャフト用) 11 41 1 460 824 1個 80円
 インペラ(ローター)        11 41 1 461 173 ×1個 2620円 (*使用せず)
 ボルト(インペラ用)    12 31 1 460 853 ×1個 100円 (*使用せず)
 ブッシュ(インペラ用)   11 51 1 464 902 ×1個 760円
*注2 液体パッキン: 
液体パッキン 今回、ポンプの組み立てにはパーマテックス社の「シリコンガスケット」を使用した。これはDAYTONAから14gチューブが出ているので便利。
CLYMERのマニュアルで指定されているのはスリーボンドの「1216」。特性はこちらを参照。耐エンジンオイル性と耐クーラント性があり、ある程度流動性が低ければ何でもよさそう。「1207D」もDAYTONAから「プロ液状ガスケット18506」として15グラムチューブが出ている。その他、パーマテックスの「ウルトラグレー」、純正パーツ(07 58 1 465 170)にもなっている「OMNI VISC 1002」など。
なお、「パッキン併用タイプ」は使用しないほうがよさそう。反応形態が「脱オキシム」のタイプは銅や銅合金を腐食するので、プリント基板や端子類に使用するのは厳禁。
 
2005.6.13 (O/H 2日目)
50516km
インペラ取り外し 2日めはインペラの取り外しから。インペラ(羽根)はポンプシャフトにねじ止めされている。シャフトの反対側に六角レンチを入れられる穴があるそうなのだが、インペラ、カラーポンプがエンジンに装着されたまま外しておいたほうが楽なので先に外しておくことにした。ギアを入れ、メガネレンチを掛けてそこそこ力を入れて回すとボルトが外れた。旧型のナットタイプではシャフト側がねじ切れることがあるらしいが、インペラ取り外しこの型式ではその心配はなさそうだ。
 ポンプ本体はボルト7本でエンジンに留められている。うち2本はポンプの中。奥の3本は長めの六角レンチにパイプをつけて回す。回す前にボルトの六角穴を細いドライバーなどで清掃しておくこと。ポンプ取り外し
 ボルトを全て取り外したらポンプをエンジンから切り離す。液体ガスケットで固着しているのでドライバーでこじって外すが、これもどこでもよいというわけではない。エキパイの奥にちょうどドライバーが入れられる隙間があるのでここを使うとよい。エンジン側外れたポンプポンプを外すとオイルが少し垂れてくるのであらかじめ何かで受けておくこと。
 ポンプは、ポンプ取り外し後ドライブギアがエンジン側に残った状態で抜けてくるはずである。
 ところで、ポンプの上には細かい石が一杯たまっていた。フロントタイヤが跳ね上げたものだと思うが、結構な量である。
 本日はここまで。
 
2005.6.17 (O/H 3日目)
50516km
 3日めはポンプの分解から。メカニカルシール部シャフト抜き取り先日インペラとカラーは取り外してあるので、ポンプギアを抜き取るところから再開である。図面からではメカニカルシールとギアシャフトがどのようにつながっているかがわからなかったので、とりあえずシャフトを指で押してみたところ、何と簡単に動いてしまった。シャフト抜き取りメカニカルシールとシャフトはゴムの摩擦つながっていただけのようだ。これだとスプリングの圧力が逃げてしまう。もしかしたらメカニカルシールの内輪側とシャフトの間は空回りしていたかもしれない。シャフト損傷チェック
 シャフトを完全に抜き取って損傷具合を点検する。オイルシールの接触する部分(右の写真緑矢印部分)が若干段付き摩耗しているが、新しいオイルシールに交換すれば問題のないレベルなのでこのまま使用することにし、シール抜き取り錆を軽く削っておいた。
 次に、古いシール類を抜き取る。マイナスドライバーでも抜けないことはないのだが、ポンプハウジングに傷をつけてしまうと後々面倒なのでパイロットベアリングプーラーを使用する。シャフト損傷チェックメカニカルシールは内輪側が分解してしまったので、外輪側だけをプーラーに引っ掛けて抜く。メカニカルシールを抜くと、水側とオイル側の中間にある空間が見えてくる。オイルと水が入り混じったヘドロ状のかすでグチャグチャである。ヘドロの下のオイルシールもぼろぼろ。これでは漏れるのも当然である。部品洗浄 オイルシールもパイロットベアリングプーラーで抜くのだが、軸に接触するリップ部に爪をかけようとすると滑ってしまう。カッターナイフでリップ部を切り取ってしまえば引っ掛かりやすくなるので作業はかなり楽だ。
 取り外した部品は灯油でていねいに洗い、逃がし穴洗浄した部品圧縮エアやパーツクリーナーを使ってゴミを飛ばしておく。
 オイルや水が漏れたときに例のエンジン下前方の穴に導くための細い穴が水側とオイル側の中間に開いている。この穴をきれいにしておくのを忘れないこと。
 本日はここまで。
 
2005.6.18 (O/H 4日目)
50516km
 4日めはポンプの組み立てから。オイルシールメカニカルシール組み付け前に新品のシールと取り外したシールを比べてみた。オイルシールのほうは同じサイズのようだが(グチャグチャになっていてよくわからない)、水側のメカニカルシールはかなり形状が違う。最も違うのはシールの内輪(シャフトと一緒に回る側)。旧タイプはゴムだが新タイプは金属で、圧入するような形になっている。(このときには気づかなかったのだが、高さも違う。これは後述。)Oリング交換
 まずは簡単なところから、ドライブ側ポンプシャフトのOリングを交換する。これはオイルで湿らせてからはめ込むだけである。なお、このポンプシャフトはエンジンのアウトプットシャフトからキーを介して回転させられている。
 次はオイルシールの打ち込みであるが、オイルシールシールには向きがあるので注意すること(写真参照)。このタイプのオイルシールは、封入しようとする液体の圧力でシールのリップ部がシャフトに押し付けられるようにするのが正しい。この場合、スプリングの見えている側が奥になる。打ち込みにはソケットレンチのコマを使った。シール外周にエンジンオイルたっぷりと塗りつけ、斜めにならないように気をつけて硬質に音が変わるまで打ち込む。メカニカルシール打ち込みメカニカルシール打ち込み
 オイルシールの打ち込みが完了したら水用のメカニカルシールを打ち込む。マニュアルには外輪にぴったりはまる塩ビパイプを使うとよいと書かれていたが、ソケットレンチのコマでちょうど径が合うものがあったので今回はそれを使った。圧入用ボルト・ワッシャ外輪が浮き上がらないようにシールの外面をていねいにたたくこと。
 次はポンプギアの取り付けなのだが、シャフト先端部分が雄ネジか雌ネジかで手順が違う。これは雌ネジになっているタイプのシャフトの例である。
・8mmのボルトとワッシャを数枚準備する。
・オイルシールとギアシャフトにオイルを塗り、ゆっくりとシャフトを差し込んでいく。
メカニカルシールへのシャフト圧入 ・シャフトの先端がメカニカルシールの内輪の直前にきたところで止め、ボルトとワッシャをセットする。ネジの入り込み具合はワッシャの枚数で調整する。
・ボルトをゆっくりと締め込み、シャフトをメカニカルシールに圧入する。少し締めこんだらワッシャを足す
・ワッシャの枚数が増えてきたら、ワッシャをカラーに替えてさらに圧入する
圧入用ボルト・ワッシャ  ここで注意しなければならないのは「どこまで圧入するか」ということである。ポンプギアがポンプハウジングより低くなるまで圧入するのだが、新規に購入したカラーを使うと最後まで圧入できなかった。元々取り付けられていたカラーと新しく購入したカラーとでは厚さが違う。新しいカラーのほうが薄く、このカラーだと最後まで圧入できないのだ。構造図を見てもらうとわかるのだが、メカニカルシールとカラーの間には隙間がある。つまり、この隙間分はワッシャか何かを使わないと軸を引けないことになる。今回は少し厚い元のカラーを使用した。
 なお、圧入のし過ぎには十分注意すること。今回はポンプギアがポンプハウジングより低くなったところから0.5mmほど圧入した時点で止めた(圧入し続けると、メカニカルシールのスプリングを完全に圧縮するところまで入ってしまう)。万一圧入し過ぎてしまった場合だが、軸を叩いて抜こうとしてもメカニカルシールのスプリングが邪魔をしてうまく叩けない。叩きすぎるとメカニカルシールのセラミックディスクが割れてしまう。プレスか何かがあれば良いのだが、ない場合はメカニカルシールのスプリングを完全に圧縮させた状態から、シャフトに柔らかい木片を当てて重いハンマーでゆっくりと叩くと抜ける。
 メカニカルシールへのシャフトの圧入が完了したら、カラーを入れてインペラをボルトで締め付け、駆動側のポンプギアも取り付けておく。エンジン側の穴液体ガスケットの塗り方
 ポンプが組みあがったらエンジン側に取り付ける。接合面を脱脂し、液体ガスケットを塗ってから取り付けるのだが、注意する点がいくつかある。
・液体ガスケットの塗り過ぎには注意すること。特に、エンジン側に開いている穴(右図、緑矢印)をふさがないようにすること。ポンプ取り付け
・駆動ギアのキーの位置をエンジン側と合わせておくこと。キーは軸の中心より微妙にずれているので注意。
・ボルト締め付け時は対角で少しづつ締め付けること。締め付けトルクは6〜8N・m。意外と弱い。
ポンプカバー取り付け  ポンプ本体を取り付けたらポンプのカバーも同じように取り付けておく。ここまででポンプのOH作業そのものは完了である。
オイル補給中  抜いたエンジンオイルと冷却水を忘れずに補給する。エンジンオイルは少し走ったらすぐに交換するので余ったオイルをかき集めて適当に入れておいた。冷却水はLLCを30%に薄めて補給。補給にはガソリンタンクをずらさなくてはならないためちょっと面倒だ。エア抜き中エア抜きのためキャップを開けたままエンジンをかけなくてはならないのだが、コネクタがぎりぎり届く距離だった。ファンが回るくらいまで暖気し、ホースをもみながらエアを抜いていく(やけどに注意!)。液面が下がったら冷却水を足しながら気泡が出てこなくなるまで行う。
 タンクを元に戻し、オーバーホール作業は完了である。
 
2005.6.25 (O/H 5日目)
50576km
オイル&フィルター交換  OH完了後、近所を60kmほど走ったが、オイルや冷却水は漏れていない。作業に問題はなかったことが確認できたので、エンジンオイルとオイルフィルターを交換した。これで全ての作業が完了。安心して乗れるようになった。
2006.10.22 ・・・その後。
*****km
 OH完了後、18000キロほど走っているが、水漏れ・オイル漏れともに発生していないため修理には問題がなかったといってよいだろう。
 ところで、上で書いている、ポンプ組み付け時に半月状の穴を液体ガスケットでふさがないようにすること、と言う注意点についてなぜそうなのか?ということを調べてみた。以下、推測の域を出ないので要注意である。
 この半月状の穴について、各種マニュアル類やポンプOH時に撮影した写真などからわかったことは以下の通り。溝が当たる部分U字型の溝(矢印部分)
 この穴はクランクケースの下半分、アウトプットシャフトのベアリング横に彫られたU字型の溝の端が見えているもので、溝はオイルポンプが取り付けられる面からクランクケース内まで伸びている。クライマー社のマニュアルでは「oil return channel」と書き表され、「This channel must be open to provide a flow path for excess oil from the oil pump. This allow the oil to flow back into the crankcase.」となっている。つまり、オイルポンプからのオイルをクランクケース内に戻すための溝ということになる。
 ところが、オイルポンプ側を見ると、不思議なことにこの半月穴の当たる部分はオイルポンプ側に直接つながっていないようにみえる。2V型のポンプ上のOH中の写真をみるとわかるようにポンプ(4V)はこの部分にU字溝が彫られているが、溝はどこにもつながっていない。2Vのポンプに至っては全く何もない。
 可能性として考えられるのは、ポンプとクランクケースの接合面のわずかな隙間から染み出たオイルが通ることくらいである。マニュアルに指定されている通りに液体ガスケットを塗ると、ポンプの高圧側からのオイルは液体ガスケットより先にこのU字穴に届くのでポンプの圧力によってU字溝に流れ込む、と想像できる。
 とすると、2V型のポンプで液体ガスケットを図の指示よりも少しでも内側に塗ってしまっりたっぷり塗ってしまうとこの穴をふさいでしまうことになる。4V型は溝があるので少々塗ったくらいでは大丈夫なはずなのだが。
 この穴をふさいでしまうとどうなるのか?気になる記述がやはりクライマー社のマニュアルにある。
「If oil has been leaking from the oil/water pump sealing surface at the 2:00 position (looking straight on at the pump assembly) the oil return channel in the lower crankcase is probably clogged either with oil sludge or old gasket sealant. This channel provides an oil return path so that excess oil can be channeled back into the crankcase.」 ・・・ポンプを正面から見て2時の方向の部分からオイルが漏れているなら、おそらくオイルの戻り通路がオイルスラッジか古いガスケットで詰まっている、この通路は余剰オイルをクランクケースに戻す、という意味である。が、余剰オイルとは何かがよくわからない。オイルポンプ高圧側からのメインの出口はオイルフィルターにつながっており、プレッシャーレギュレータはポンプの低圧側につながっている。カムシャフトやクランクシャフトのメタルに供給するオイル量よりも余った分、という意味なのだろうか?

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