ブレーキ関係の作業ミスは重大事故に直結します。自信がない場合は行わないでください。このページを参考にする場合でも、すべて自己責任でお願いします。

ブレーキ液も3年半以上無交換。これを済ませたとしても、まだまだやらないことは残っている。楽しみながらやっているので全く苦にならないが、中古車の個人売買はこのあたりの見極めが大事である。
2003.5.25 23022km |
ブレーキ液交換の重要性はいまさら言うまでもないのだが、今まで後回しになっていた。 出かけたいのをぐっとこらえて交換作業をやることにした。まずは道具、資材の入手。K100のブレーキ液交換に必要なものは、「DOT4ブレーキ液」「内径4〜6mm程度のビニールチューブ」「空ペットボトル」「11mmのメガネレンチ」「トルクレンチ」「ぼろきれ」・・・こんなものだろうか。 どこから取り掛かるかしばらく考えたのだが、簡単そうなリアABSから始めることにした(*注1)。まず、ABSユニット上部のブリードスクリューについているキャップを取り外し、ビニールチューブを差し込む。メガネレンチを掛け、チューブの反対側はペットボトルへ。次いでリザーブタンクをブラケットから外し、フレームの外側の適当な場所にしばりつける。タンクのまわりはぼろきれで養生する。これは腐食性の強いブレーキ液がフレームまわりにこぼれるのを防ぐためだ。これで準備は完了。実際の作業方法としては、 1、ブレーキペダルを軽く手で押す。 2、ペダルを押したままブリードスクリューを緩める。→ペダルが下がり、チューブに液が出てくる。(この液は変色していた。) 3、ペダルを押したままブリードスクリューを軽く締める。 4、ペダルをゆっくり数回ポンピングする。(抵抗が出てくるまで) 5、ブレーキ液が完全に入れ替わるまで「1、」〜「4、」を繰り返す。 ここまででの注意点としては「4、」でリザーブタンクのブレーキ液がマスターシリンダーに吸い込まれて液面が下がるので、「空になる前に補給する」ということだ。 空にしてしまうとブレーキラインにエアが混入してしまう。また、「3、」でブリードスクリューを締める前にブレーキペダルを戻さないこと。戻すと、液が逆流してしまう。 6、ABS側で5〜6回ほど抜いたらブリーダーバルブからチューブを取り外し、プラグを規定トルク(6〜8N・m)で締めつける。 7、ブリーダープラグの穴の中に残ったブレーキ液をコヨリなどで吸い取り、キャップをかぶせる。 これでリアABS側は完了である。同様の作業をリアブレーキキャリパーでも繰り返す。液を完全に入れ替えるため、ブレーキ液を1/3缶(200ml弱)使うくらいのつもりで景気よくやるとよい(*注2)。キャリパー側が完了したら、リザーブタンクのMAX−MIN間のレベルまでブレーキ液を入れ(*注3)、ダイアフラムを取り付けてキャップを閉めればリア側の作業は終わりである。 リアが終わったら同様の作業をフロントでも繰り返す。こちらも、ABSおよび左右のキャリパーから液を抜く。注意点としては、「リザーブタンクが水平になるよう、ハンドルを左に切る」こと、「リザーブタンクのまわりを厳重に養生する」ことなどである。なお、くれぐれもリザーブタンク内にゴミを入れないように注意すること。このために、リザーブタンクのふたを取り外す前に周囲をよく清掃しておく。屋外で作業する場合は風に乗って飛んでくる砂ぼこりなどにも注意が必要だ。
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ところで、今回は前後ともダイアフラム(リザーブタンク内上部のゴム部品)を交換しなかったが、このダイアフラムはブレーキを緩めたときにピストンを引き戻す大切な役割を持っている。しばらく交換していないなら、交換をお勧めする。 全ての作業が完了したら、一息入れて作業内容をチェックする。次に、エンジンをかけずに車体引き回し、ブレーキの効きを確認する。何度もブレーキをかけ、液の漏れがないかどうかも確認する。しつこいくらいにチェックし、やっと作業完了である。
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*注1 : 今回はABSユニットとブレーキキャリパーの両側から抜きましたが、マスターシリンダー〜ABSユニット〜ブレーキキャリーパーまでがつながっているこの旧タイプのABSではキャリパーから抜くだけでも十分です。ただ、構造上、ABSの上部にエアがたまる可能性があるため、今回はABSユニットの上部からも抜きました。 *注2 : 今回は実施しませんでしたが、キャリパーピストン部の古いブレーキ液を完全に抜くためには(キャリパーを取り外して専用ツールでピストンを押し戻すなどの方法で)、ピストンが完全に戻った状態で作業をする必要があります。 *注3 : タンクに入れるブレーキ液の量はパッドの減り具合で違ってきます。新品のパッドがついた状態がMAXレベルです。 エア抜き作業 : 今回はエア抜きツールを使用せずマスターシリンダーの力でブレーキ液を「押し出す」方法を採用しましたが、エア抜きツールを使用してキャリパー側から「吸い出す」方法もあります。マスターシリンダーを分解したときなど、ラインにエアが混入している場合はこの方式のほうが優れているようです。なお、サービスマニュアルには「ABS装着車はエア抜きが困難なので手工具によるエア抜きは推奨しない」旨記載されていますが、元々エアが混入していいないことが前提のブレーキ液交換だけならこの方法で十分です。 ブレーキ液の種類 : 一般的には「グリコール系」が使用されます。K100に使用されているのもこのタイプです。他に、「シリコン系」がありますが使用厳禁です。その他、DOT4、DOT5など、主に沸点の違いによって分類されています。 DOT4?DOT5? : DOT5のほうが沸点が高くハードな走行でもベーパーロックしにくいのですが、これは全く吸湿していないときの「ドライ沸点」の話です。ブレーキフルードは徐々に水を吸って沸点が下がってきます。一定の(確か3%?)水分を吸ったときの沸点が「ウエット沸点」ですが、DOT5のほうが吸湿による性能劣化が早いようです。一般的な使用方法ならDOT4で十分でしょう。K100にはDOT4が指定されています。 銘柄は? : 先に述べたような全く異種(グリコール系/シリコン系)の混用は問題外ですが、一般的には「違う銘柄も混ぜてはならない」といわれています。これは、メーカーによって添加物等の組成が違うことからそう言われているようですが、素性のわからない中古車ではそれも無理な話です。エア抜き作業をしつこくやり、古いブレーキ液を完全に入れ替えてしまえば問題ないと思われます。 ブレーキフルードの扱い? : ブレーキフルードは塗装面を犯します。かかった場合は即座に水で洗い流してください。また、ブレーキフルードは吸湿により劣化します。余ったブレーキフルードを保管しておいても次の交換時期まで性能が維持できているとは限らないため、使い切ることをお勧めします。 |

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