リターン オブ 自己開発セミナー


 時節柄、こういった洗脳セミナーがリバイバルするというのはそれなりに納得のいくものではあります。あ、やっぱりってかんじ。
 私自身は洗脳セミナーそのものを否定しようとは思っておりません。こういったものは言わばその辺の薬屋で売ってる売り薬のようなものであります。本来、薬は有資格の医師の処方箋をもって、個々の患者の症状にあわせて処方されるべきものでありますが、それじゃ面倒臭いので、軽いカゼ程度の病人はその辺でルルゴールドかなんかを買って飲んで直してしまいます。これで風邪ひきさんはカゼが直ってよかったね、なんとか製薬もお金が儲かってよかったね、ということで八方丸く治まる訳ですが、なんとか製薬が欲を出してカゼでもない人間にルルゴールドを押し売りし始めると話は違ってくる。

欲ボケと化したなんとか製薬はお金を儲けることしか考えないですから、一瓶980円のところを10万円とかそーゆー値段をつけたり、一回3錠飲めばいいところを1日一瓶飲めとかそーゆームチャを言ったりします。しかも元患者を騙してバイニンにしたてて無給で押し売りさせたりするので、元患者さんたちは友達なくしたりするのだ。

 こういうなんとか製薬が社会的に許されないのは自明でありましょう。

 言いたいことはだいたい以上ですが、補足します。

 洗脳セミナーの手法は交流分析、ゲシュタルト心理学等、精神医療で開発されたもので、心因性の障害を矯正することを目的としたものです。もともとは195〜60年代のアメリカでベトナム帰りの精神的にヤラれちゃた人を直すために開発されて、その後人格を(よりよい方向に)再構成する技術として流行りだしたものなのです。だからちゃんとした人にちゃんとやってもらう分にはそれなりに意義のあるものではあります。しかし矯正というのは要するにネジマゲることですから、上手く行けばいいけど、下手するとヘンな方によりネジマガってしまったなんてなことにもなりかねない。また、意図的に特定方向にネジマゲることもテクニック的には可能なので危ない。

 洗脳セミナーの善し悪しを見分けるポイントその1はここにあります。

☆ポイントその1:ちゃんとした人がちゃんとやっているか。

 しかし洗脳セミナーは具体的な内容を絶対教えてくれないので事前にチエックするのは難しいでしょう。実際に行ってみて、一人のトレーナーが一度に150人の相手をしているようなとこは危ない。あと、セミナー経験者がヘンな風にネジマガってる感じ(必要以上に元気だったり前向きだったりして、ムダにエネルギーをまき散らしてる感じ。あと、目つきもフツーじゃなくなってる。中には精神的にダメージを受ける人もいる。)がしたら止めといた方がいいです。

☆ポイントその2:(内容に比してに)参加費が妥当か。

 事前に内容が分からないため何ともいえない部分はありますが、昔の相場はこんなもんだった。

 ・3日間の通いコース:12万円

 ・合宿コース    :35万円

  私は通いコースに行ってみたけれども、参加者百数十人に対して、有給スタッフ数人+その他無給ボランティアのセミナー経験者数十人動員という、実に低コストの運営体制でありました。こういう暴利体質のセミナーは信用できない。

☆ポイントその3:勧誘。

 セミナー経験者が闇雲に勧誘をするようなセミナーはヤバいです。(以下、ヤバいセミナーについての話。)

 (ヤバい)セミナー経験者が勧誘をするのは次のようなことを吹き込まれるからです。

「あなたは昨日までのあなたではありません。今まで引っ込み思案だったあなたでも、今は他人を動かすことができるようになったはずです。これを確かめるために、まずはお友達をこのセミナーに誘ってみましょう。」

 別に勧誘なんかしなくても他人への影響力を確認する方法はいくらでもあると思うのに、決まってこういうことを言うのは、要するに、タダで営業活動をさせようということです。また、セミナーでは「自分で立てた目標は必ず実現しましょう」みたいなことを言って、さらに、「自分で立てた目標も実現できないようじゃ、もとのダメなあなたに逆戻りだ」というぐあいに(暗に)追いつめていくので、セミナー経験者は「セミナーへの勧誘と」いう「自分で立てた目標」(違うって!)をどうしても実現しないといけないもんだと思いこんでいます(数値目標を立ててたりする)。セミナー経験者の全員が全員ここまでハマる訳ではありませんが、何人かは確実にハマってタダ働きの営業マンと化してしまうのであります。ハマるのは大抵、素直ないい奴である場合が多いのですが、そういう人たちがこうして友達を何人も失っていくことになるのであった。さらに、勧誘者自身、参加費を立て替えたりして金銭的な負担がある場合もあって、セミナーだけが濡れ手に粟という仕組みになっているのでありました。

 こういったセミナーのやり方はキタナい。

 勧誘された何人かはセミナーに参加してしまい、そのうちの何人かが勧誘する側にまわってしまうと、勧誘ゾンビ増殖サイクルがここに始動します。そもそも悪意あるセミナーの場合、プログラム自体が「お友達をセミナーに誘ってみましょう」に収斂するよう組み立てられているので、素直ないい奴は必ず勧誘ゾンビ化するようになっています。本当は勧誘ゾンビさん自身が一番の被害者なのですが、本人に自覚がないので被害を拡大してしまうのでした。勧誘ゾンビが増殖するセミナーは良くないセミナーだということを覚えておきましょう。

 セミナーに起因するすべてのメーワクはこの勧誘ゾンビ増殖サイクルより生じます。

 つまり、ハマりこんでるセミナー経験者がなりふりかまわず勧誘活動を展開するので、職場、友人間等の人間関係が気まずくなる。また、安くはない(つーか、バカ高な)お金の問題がからんで話がドロドロになる。挙げ句の果てに、ハマったグループ(勧誘ゾンビさんたち)とこれを警戒するグループとが深刻に対立するようになる(いつか見たあの光景だ)。

 こういう、人間関係を悪化させるセミナーはなくなった方がいい。

[結論]

 私はヒトを不幸にするものは良くないと単純に信じております。かつてヒトを不幸にするセミナーが流行った時の経験に基づいた、ヤバいセミナーの見分け方、及び、ヤバいセミナーによってもたらされる不幸のあり様は上述のようなものであります。

 ご照会のセミナーがどんなものかはよくわかりませんが、それがもしヒトを不幸にするものであれば、気を付けといた方がよいのではなかろうかと思います。ポイントは勧誘ゾンビ化現象が見られるかどうかですね。(勧誘ゾンビ化しないセミナーならそんなにあくどくはないのではないかとも言える。)

 セミナーに行くと実際、積極的になる等精神的な高エネルギー状態になることができます(一時的だけれども)。ここまでは良い。悪いセミナーの場合、さらにヒネリを加えて、精神エネルギーを勧誘方面に誘導しようとします。ここからが良くない。お金と時間が余っていて使い道に困ってるようなら、行くだけ行ってみていいところだけ取ってくるのもよいかもしれない。しかし、やり方が杜撰なところだと精神的にダメージを受ける人もいるの注意が必要。


[おまけ:勧誘ゾンビの勧誘手法]

 最初は「情報として聞いて欲しい」みたいなことを言う。その「情報を」どう使おうがあんたの自由だと言う割に、「いままであなたの人生では、せっかくのチャンスをみすみす逃して損をしてきたのではないか」などと嫌なことを言う。挙げ句に、「あんたは優柔不断で積極性が足りず、人生、損して来た」と決めつけておいて、今の「情報」はチャンスだと言い張る。そして、「ここでそのチャンスを活かさないと、これまでの人生の繰り返しだ。それでいいんですか。」と余計な心配をする。しまいに、「このチャンスを活かすも殺すもあなた自身で判断して欲しい」と言うから(チャンスを)活かさない判断をすると、「自分の人生をもっと真剣に考えろ」とか言って、人生がどうの積極性がどうのと話がループ状態となる。

 こういう嫌な勧誘をする人は勧誘ゾンビです。そして、勧誘ゾンビが勧めるセミナーは危ないセミナーです。気を付けましょう。

 結局、断ったら断ったで自分の人生を否定されたようなイヤーな気分になるし、と言ってセミナーに行くと、最低でもお金と時間がムダになり、最悪の場合自分も勧誘ゾンビ化する。

 以上。

この文書は転載自由です。誰に見せてもかまいません。勧誘ゾンビ化してる人(がいたら)に見せても良い。

 


[ページが中途半端に余ったのでおまけのおまけ・用語集]

洗脳

朝鮮戦争で中共の捕虜になった米兵がいつのまにかバリバリの共産主義者になっていたという現象から発見された人格改造テクニック。プロセスとしては@既存人格の破壊→A新規人格の注入という過程を経る。テクニック的には、外界から隔絶された場所に閉じこめて、眠らせない食わせないといった生理的限界に追いつめると、人間、意識のレベルが落ちてくるのでそこに新しい世界観(イデオロギーとか宗教の教義とか)を徹底的に叩き込む。カルト宗教や危ないセミナーや軍隊の訓練や企業の研修などに広く応用されている。

エンカウンターグループ

セミナーのもとネタとなった一種の集団療法。ゲームを通じて参加者の人格の歪みを自覚させ、改善していこうというもの。指導者とグループとで行う。

☆セミナーは、「内容の研究開発にお金がかかってるから参加費が高くなる」とか言うけどウソ。こういうゲームのやりかたは本屋の心理学コーナーにいくらでもある。

ゾンビ

 ブードゥー教の歩く死者。その実体は次のようなものと考えられている。
フグ毒を中心とした天然の神経毒を調合したもの(ゾンビパウダー)を使うと、人は一旦仮死状態となる。一定時間で仮死から醒めるが(そのため死者が蘇ったように見える)、この時は意識が破壊されており、自分では考えることができない状態となっている。この状態では他人に言われたことをそのまま実行するようになる。これがゾンビである。ブードゥー教の呪い師は敵をゾンビ化して、奴隷としてこき使うのだそうだ。あと、暗殺などのヤバい仕事に使ったりもするらしい。
 又、ジョージ・A・ロメロの映画に出てくるゾンビは、謎の宇宙線によって蘇った死者で、ゾンビにかみつかれた人間もゾンビになる。脳を破壊されない限り生き続ける。
 というような物知り知識を踏まえて、本文では「勧誘ゾンビ」という言い方をしているので分かってくれるように。








紙面が尽きたので終わり

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