駄洒落一番勝負


 昔々あるところにお爺さんとお婆さんとがありました。

 そいでもって、お婆さんが川へ洗濯にいくと大きな桃と小さな桃とが、どんぶらこっこ、すっこっこと流れてきました。(因みに「どんぶらこっこ」が大きな桃の音で、「すっこっこ」が小さな桃の音。ウソだけど。)

 すると蛇が出てきて、
「大きな桃と小さな桃のどちらがいいですか」
と聞くので、お婆さんが洗濯をしながら
「両方」
と答えたところ、蛇は怒って、
「洗濯せずに選択せよ」
と言いました。

ダジャレの直撃を受けたお婆さんは、その場で絶命してしまいました。(注。この世界ではダジャレで怪我をすることになってます。)

今際の一言は
「ダジャレはやめなシャレ」
だったそうですが、聞こえなかったので、蛇にダメージを与えることはできませんでした。

 首尾良くお婆さんをしとめた蛇は、今度はお爺さんの所へ行きました。お爺さんはちょうど芝刈りから帰ってきたところでした。そこで蛇は、
「大きな桃と小さな桃のどちらがいいですか」
と聞きました。しかし、お爺さんは、
「後にしてくれんか。今、疲れとるんじゃ」
と答えました。
「なにしろ、芝刈りをしたばかりでのう。うわっはっはっはっ。」
蛇は困ってしまいました。
「シバカリをシたバカリ。あっはっはっ。」
お爺さんはまだ言っています。
「なんですかそれ」と蛇が仕方なしに聞くと、お爺さんは、
「ダジャレじゃ。ダジャレ。」
と言って笑っています。
「ダメだ。こいつ。」
蛇は思いました。

 蛇は呆れて帰ろうとしましたが、お爺さんに呼び止められました。
「ちょっと待て。これを見なさい。」
「時計ですか。」
「アナログじゃろう。なぜデジタルにせんのか分かるか。」
蛇はもう、いい加減うんざりしています。
「さあね。」
「デジタルは及ばざるがごとし。うわっはっは。」

蛇はしまったと思いましたが、時既に遅く、肩から背中にかけて大きなダジャレ傷がぱっくりと口を開けています。

「計ったな。」(説明しよう。刀でやられると刀傷ができるように、ダジャレでやられるとダジャレ傷ができるのだ。)

そんな蛇をお爺さんはニヤニヤしながら見おろしていました。
「油断したじゃろ。」
蛇は声を出すことすらできません。
「苦しいか。今とどめをさしてやるからな。」
蛇はなんとか逃れようともがきましたが、血がどんどん流れるばかりで、意識も遠くなって行くようでした。

「蛇から血が出て、ヘ〜ビ〜チ〜デ〜!!!!」

お爺さんが叫ぶと蛇は「ぐふっ」と言ったきり、動かなくなってしまいました。

 こうしてお爺さんは見事にお婆さんの敵を討ったのでした。以来、「ダジャレの敵をダジャレで討つ」と言われるようになったそうです。(嘘)


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