血管老化度を知るには?

血管老化スコア
高田晴子(鈴鹿医療科学大学医用工学部 臨床工学科)



加速度(かそくど)脈波と血管年齢

自分の動脈硬化の程度を知る方法としては、MRI検査、超音波検査、眼底検査などがありますが、現在のところ、信頼できて簡単な方法はまだありません。もし、自分の動脈の硬化度や老化度が簡単に測定できるようになり、判別もクリアにできるようになれば、健康管理や異常発見にずいぶん役立つことでしょう。私が現在手がけている加速度脈波研究の目的は、この動脈の硬化度や老化度の簡単測定です。

どうやってそんなことが可能なのか?

ところで、動脈の内圧変化によって生じる経時的な血管伝導波を脈波といいます。
(ひぇー、これじゃわからん)

心臓が一回収縮して、心臓から血液ひとかたまりが飛び出したと想像してみてください。心臓からは、大動脈がでているわけですが、この大動脈の根元の壁がひとかたまりの血液の流れによって、引き伸ばされてふくれます。このときこの部分の内圧は高まり、その隣りの部分よりも高い圧になります。この圧の差に助けられて血液のかたまりはスピードをあげながら、また次のお隣さんの部分に流れ込んでこの部分の壁をふくらませます。こうして次々と血管のふくらみは伝わっていきます。水道の蛇口にホースをつないで、水栓を開いた時の感じです。血液の流れによって内圧が上昇し、この圧の上昇と壁の伸展が波の動きとして指先などの末梢に伝わっていきます。

これが脈波です。

医学的には、「血管内圧の波動が圧脈波である」といいます。血管がふくらむことによって血管の内径は変化するわけですが、その波動を「容積脈波」といっています。このふたつ、すなわち圧脈波と容積脈波は、生理的には、ほとんど同じ意味をもっています。

容積脈波で、一拍ごとに観察できる波形の変化は、通過する血流の容積変化そのものです。しかも、この容積変化は内径の変化によって引き起こされたものであり、同時に内圧変化を起こしているはずです。

ですから、容積変化と内圧変化は互いに同じ変化だと考えてもよいのです。

「血管内径の波動が容積脈波」なのですから、それなら、個人の容積脈波の波形の特徴を把握できれば、その人の心臓の拍出のしかたや血管の性状、血管壁の状態、血液そのものの特性がわかることになります。もし、指とか耳とかの一部分で、容積脈波の伝搬を観察すれば、その、動脈系全体の血管の情報が総合して観察できることになります。

ここまではリクツダワイと納得されたと思います。何ワカラン?
申し訳ありません。
でも、分からなくても次にススムノダ。

血管の容積の変化を、時間を追いながら、どのようにして読みとるのでしょうか。

現在、血中のヘモグロビン(赤い色のこと)に特異的な吸光率をもつ光を指先にあてて、反射した光か透過した光の波形を読みとる方法があります。これが指尖容積脈波として知られている方法です。この方法なら、 波形の読み取りが簡単ですから、波形を評価する基準さえ定まれば、動脈の特性つまり硬さ、伸展性などを簡単に判定できるはずです。

しかし、波形の評価基準さえ定まればと簡単にいいましたが、それには波形が安定していることがまず必要になってきます。つまり一拍ごとに波形がひずんでいては困ります。波形が美しくて、判別が明確でないと困るのです。
悲しいことに、指尖容積脈波のこの波形は、測定上の問題も含めて、きわめて不安定で、観察することが難しく、そのために、これまでは臨床応用には問題があったのです。

そこで、最近、波形そのものを数学的に2回微分して、波の形をよりはっきりさせる方法が確立してきました。

つまり波形の各点における接線の傾きを順にプロット(点をつけること)して新しい波形を作ります。これを二回行うのです。
頭いたくなってきた? ま、とにかく、これが「かそくど脈波」なのです。

波形 がはっきり読みとれるようになったからといって、さあ、お立ち会い。この波形が何を表しているのか分からなかったら、何にも役にはたちません。たとえばAさんの波形とBさんの波形を比較したときに、どこがどう違うのか、きちんと定量する方法が必要です。そしてもっと大事なことは、動脈の物理的な変化や同時に起こる生理的な変化が、波形をどのように変化させるのかというはっきりした説明が必要だということです。

しかし、生体は常に変化しています。生体への神経や循環などの影響を、その都度ことごとくに明らかにすることは現在のところ不可能といえるでしょう。

ならば、どうしたら良いのか、
お立ち会い。
ここからが、私のオリジナルです。

長かった?

色々の生理検査や生体負荷検査を実施したりして、むなしくあがいた後、とうとう、これまで多くの人がやってきたような生理学的な方法で、波形の意味を説明することを、あっさりあきらめました。

そこで、この「かそくど脈波」の波形評価法の確定という一番大事な部分に、公衆衛生学の分野では必須アイテムといえる統計学の方法を持ち込んで、 日本人の各年齢の標準波形を統計学の方法で決定し、これをもとにして、各人の波形から動脈硬化度を判定することに発想を変えたのです。いわば、直接の因果関係を明らかにしないで状況証拠から真実に近づく疫学の考え方をとったわけです。

そして、血管の動脈硬化の度合いを生理学的年齢であらわす方法を工夫して、「血管年齢」 と名付けました。各年齢の標準波形よりも老化した波形だったら、その人の「血管年齢」は高く算定されますので、血管の老齢化がズバリ分かるという訳です。

高田は
「血管年齢を血管老化スコアで表現する」ことを提案します。


2001/11/14 11:03:29;57274;vk2h-tkd;RETR;ok;/homepage/age.html