街のイルミネーション 

いつものように走っていた。コースはニュータウン。東急の作った大規模な街だ。

クリスマスにあと一月。

そろそろニュータウンの夜が光り出す。去年もそうだった。通りがズラリと点滅するんだよね。きれいはきれいだけど、なんかね。

 

あれ、べつに話し合ってみんなでやろうというわけでやってるわけではない。誰かが何かで知って、それって私たちの家に似合ってる、とでも思って始める。大概小さな子供がいるから、お隣きれい!と言われて、じゃあうちも、となる。

これが小さな子供だとまあ別にいいだろうけど、小学校も高学年、中学高校となると色々あるんだろうなぁと思ってしまう。

 1軒1軒とイルミネーションが増えていく。両隣りがつけてしまった。真中だけ光っていないと不自然。周囲も光り出した。ついに光ってないのはうちだけだ。別にそういう趣味は無い。しかし夕方になるとうちだけが暗い。

まるで世間に刃向かっているような、ことさら自分を主張しているような、変に勘ぐられそうな気になってくる。

 別にいっか、そんな金のかかることでもないだろうし。うちもやろう。

その時、中学2年の女の子が

 

「なんでいまさらつけるの?父さんそんな趣味無いって言ってたじゃん。私だって別にやろうって思わないよ。」

 

とか言う。

 

この時、でも皆さんやってるしな。うちだけやらないのもなぁ。と言えば、なんだ、父さんいつも自分の意見をしっかり持って、みんながやってるから、っていう理由で物事決めるのは良くないって言ってるじゃない。おかしいよ。と娘に言われたらどうしよう。

 

来年は受験だし、みんなが行くから自分も高校行くじゃなく、目的を持って行って欲しいって言えなくなるしな。

 

何であんなことやるんだよ。他人の迷惑考えないのかな。日本だぜ。みんながやってる事はやらないと弾き出される国だ。面倒だよな。

 

そこで、

「まあ、そうだけど。夜帰るとうちで光が止まっているのもなんか淋しいし、やってあげても良いだろう。それにどっちでもいい事は、世間に合わせておけば良い。大事な事は、大事な時に自分を曲げないことだ。 父さんはそう思ってる。」

 

とか言って、大事な時っていつだろうなって思う。

 

 

さてそんな訳で、きっと色々あの点滅する光と闇は、家族の心の光と闇にも通じてるのだろうな、などと思いながらこれから25日まで走ることになるのだ。