駅伝。伝えるという事。 1月3日。 駅伝は良い。伝えるものがあるのは良い。 今も走っているが,ゴールには誰もいない。 いつも一人で走りだし,一人で頑張り,一人でゴールに倒れこむ。 そして一人で家路につくのだ。 淋しいぜ! (+_+) 選手の胸に揺れるたすきには,アナウンサーではないが,思いがこもっている。 夏の日の地獄の合宿,仲間との励まし合った思い出がある。 共に見た夕日の思いがけない美しさがある。 最後まで聞いた互いの荒い息づかいがある。 たすきには様々な思いがある。重いが,それが思いだ。 中学の時だ。野球部でレフトを守っていた。 7回の裏,最終回,3対1.ツーアウトランナー2塁。勝っていた。 5番のドデカイ奴が,センターへ低いライナー。 ライナーは打った瞬間体が前に出る。そして玉は伸び頭上を越えていく。一番恥ずかしく腹立たしい場面だ。 センターがそれをやった。一気にボールは転がっていく。 センターはチビで肩が弱い。しかし実は不良でケンカ早く,パンチは弱いのだが,先手必勝,一気にたたみ掛け,勝ってしまう。不良仲間のリーダーだ。 そいつが真っ青になってボールを追いかけていく。 僕もすぐにそいつを追った。その球場のセンターは深く,ボールは転々と転がっていく。僕は彼が肩が弱いことを知っていたので,どんどんと追った。振り返るとショートがセカンドベースを20mほど後ろにし,カットに入っている。その向こうにセカンド,その向こうにホームベースが見え,さらにその後ろにピッチャーがカバーへと走っている。 見事な一直線だ。 日の光にグランドは白く輝いている。 音が消えていた。 その直線にボールを乗せる。 セカンドランナ−は既にホームイン。打ったランナーはセカンドベースを蹴っていた。 センターが追いつき振り向きざま僕に投げた。 力んでいてボールは地面にすぐに叩きつけられたが,いい具合に跳ね僕に届いた。 僕は肩が強かった。ショートは前に出たいのをこらえ両手を上げた。僕は体を前に投げ出しながら,ノーバンでショートをめがけた。中指が良い具合に引っ掛かり,まっすぐショートのグラブに入る。 ショートはくるりと振り返り小さく手を振った。 セカンドがマウンドの前でカットに入っている。 セカンドは受ける姿勢を瞬間半回転させ,ボールを通した。 低い弾道で小さな白い点が移動し,同じように小さな茶色い点に吸い込まれ,砂埃が上がった。 審判の右手が上がっている。 ショートはキャプテンで何かと僕をかばってくれた。 セカンドはひょうきん者でいつも僕を笑わせた。 キャッチャーは無口でどっしりしていた。 遠い夏の日,遠いグランドの果てから遥かなホームベースへ白いボールを伝えた。 伝えるものがあるのは良い。 |