パサージュ−81    2008.1.25

目の前の小川は幅30センチほどでそこも浅く、だが流れはちょうどいい速さで流れている。

ちょうどいい速さ。

目が流れを追うのにちょうどいいのだ。

枯葉がくるくると回って流れている。

くるくると回る回転の速さと川の流れとが合っている。ちょうどいい速さ。

 

一生を終えた枯葉を、その一生を柔らかく包み、軽やかに新しい世界へと運んでいく。その回り方には喜びが感じられる。

 

きらきらと日の光が流れていく。

光は水面に溶け込み、川の流れの中を流れとともに体を上下させ、左右に振り、やがてまた水面から跳びで、反射の光となって川と空の間をきらきらと移動し続ける。

 

大きな影が川を覆う。

見上げるとモクモクとした雲が空をおおい始める。白い入道雲だ。

その中に小さな点が現れ、それがどんどん大きくなってくる。

鳥だ。

鷲のような鋭い小さな黒い目が二つこちらをにらんでいる。

そこには憎しみのような威嚇する輝きがある。

 

鷲は急降下し、川のきらきらとした輝きを掬い取ると瞬く間に空へと帰っていった。

 

入道雲はモクモクと巨大化しながら突然ちぎれ、真っ白な巨大気球となって太陽へと向かって飛んでいく。

 

小川は同じ速度で流れている。

枯葉がクルクルと舞っている。

新しい枯葉だ。

薄い茶色。

黒い点々がある。

うっとりと流れていく。

 

ぼくは小川の流れの先に目を向ける。

流れはゆったりと右にカーブし左に戻り、やがて細く、細く光の帯となり、小さな輝きの点となる。

 

ぼくは小川に足をつける。

流れは冷たく、暖かく、くすぐったく、心地いい。

流れを掬う.

 

手のひらの中で、小さな流れが、とまることなく流れていく。