小川vs佐竹   2000.10.26

1031日。プライドのリングで二人が戦う。

突然ではあったが、柔道王vs空手王、と言うことであれば、十分に興味はある。

 

空手と柔道どちらが強い?

ここにポイントを置きたい。

 

しかし時代は「総合」へと移っている。「総合格闘技。」

 

そもそも格闘技は当たり前のことだが、総合格闘技だった。

現在格闘技は、分化している。

パンチはボクシング、空手。キックはムエタイ、空手、カンフー、テコンド、投げ技は相撲、レスリング、寝技、締め技、極め技は、レスリング、柔道、サンボ。(他にも色々ある)

二人の人間が戦う時、距離があれば、キックから入る。距離がつまればパンチ。さらに組んで、投げて、寝技、締め技、極め技で、止めを刺す。

つまり、ムエタイ、空手ができボクシングができ、レスリング、柔道、サンボ、相撲ができなければ戦うことはできないのだ。

それが今全てが分かれてしまっている。

もちろん蹴りのプロフェショナル、パンチのプロフェッショナル、関節のプロを見る楽しみはある。

しかし、なぜボクシングでは手の長さの距離に入るまではああまで隙だらけなのか、組んだあと何故レフリーに引き離してもらうのか、組んだのに投げないのか。

柔道での相手の道着をつかもうと前進する時、一発蹴りが入ったらどうなるのか。道着を気にしている時パンチが入ったらどうするのか。正拳を打ち合う空手家に組んで投げるという意識はないのか。転がってしまったら戦いは終わるのか。タックルに行く前にキック、パンチが来たらどうすればいいのかと、レスラーは考えたことがあるのか。

 

いつもそれが気になった。

隙だらけの格闘技。

 

ここで小川だ。

小川は世界の柔道を制した男。

まちがい無く実力者。しかも猪木の元、徹底した体質改善を実行し、体を変えた。ボーとした顔と体は見事に引き締まった。そして蹴りとパンチを学び、自分のものとした。橋本との戦いでは、プロとしての戦いの意味をしっかりと把握している自分自身を世間に見せた。

観客の無意識の欲望に応え、しかも形としてもきちっと勝った。彼は本当のプロなのだ。

観客の意識化された欲望に応えることも難しいことだ。ここでホームランを打って欲しい、ここで三振にとって欲しい、ここで逆転KOして欲しい、という所でその通りにすることは凄い。だが観客がまだ自分では気がついてはいない欲望に先手を打って応えることができるが、真のプロだ。小川が橋本に勝った時、「目を覚ましてください」と言ったのはその事だ。

小川は総合格闘技の確立を目指している。

 

佐竹は空手からK1へと移ったがK1で勝てず、武蔵に追いつかれ、居場所が無くなった。そこで寝技のあるプライドへ移った。大変な勇気が必要だったはずで、その点は立派だとは思うが、やはり時間が無かった。小川の敵ではない。

前半玉砕覚悟の蹴りの連打(正拳の届く範囲では小川の投げにやられる。)で盛り上げ、後は掴まれ投げられ、意地で立ち上がるが、攻め手は無く、STOで失神KO負け。

負けっぷりの良さをどこまで観客に見せられるか。どこまで壮絶な負けを観客に見せられるかが佐竹の今回のテーマだ.橋本を越えられるか.

 

佐竹に一発必殺の蹴りがあれば興味は増す.

しかし全盛期の蹴りの威力はもう無い.

K1創生期の佐竹には蹴りに力があった.思い切りのいい、全力を込めた切れと凄みがあった.

そしてその頃、確かにK1を世に知らしめるという目的はあるにしても、テレビ、マスコミへの露出を増やし、佐竹はトレーニングをさぼった.当時バラエティー、深夜放送で彼の姿を見るたびに、悲しい気持ちになったのを今思い出す.

 

空手と柔道どちらが強い.

 

それが見れないのが残念だ.

 

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