日本はどうする。(9) しかし考えてみると,国ができることを,政治家や「えらい人」に任(まか)せておいていいはずがない. 政治家や「えらい人」がこれまで何か良い事をやってきたとは思えないからだ. やはりぼくたち一人一人が,考えていかなくてはならない。 その一つ一つの思いが最後には国を動かす. そう思いたい. では先ず何を考えるのか. 考えの基礎となるものは何だ? ●地球は丸く大きな生き物である. 想像(そうぞう)してほしい. 体全体は青く,丸い. 巨大(きょだい)な体の表面は,海という水の広がりと,陸という土の広がりにおおわれている. 海の中には,魚や貝や海草(かいそう)や,クジラやイルカを,ゆったりと泳がせている. 陸には動物,人間,木や草や花,鳥,石や岩を,自由に遊ばせている. 森や林や草原(そうげん)を生(は)やし,丘(おか)や山や山脈(さんみゃく)を空へ伸(の)ばしている。 空には雲と風を自由にどこまでも,飛ばせている. 丸い体の中では真っ赤にマグマを燃やしている. そしてその丸い生き物は,ゆっくりと自分自身回しながら,さらに太陽の周りを回っている. 地球上の生物たちはぐるぐると回っている. 草が生えている. その草を食べる動物がいる. 草食動物(そうしょくどうぶつ)だ. 牛や馬や,キリン,ウサギ,ヤギ,シカたち. その動物を食べる動物がいる. 肉食動物(にくしょくどうぶつ)だ. ライオンや,トラ,ハイエナ,豹やオオカミ. そしてその肉食動物の死体は土にかえり,それを養分(ようぶん)とし,草が育つ. 育った草をまた牛やウサギやヤギやシカが食べ,彼らをライオンやトラがまた食べる. 食べ,食べられる. 食べられ,食べる. 命は回っているのだ. 水を考えて見よう. 雨が降る. 山に降(ふ)り,木を土を育てる. 平野に降り,稲を野菜を育てる. 川に流れる. 魚を育てる. 海に帰る. 太陽の光に蒸発(じょうはつ)し,雲となる. 雲が育ち,雨を降らす. 雨が降る. 山に降り,木を土を育てる. 水は姿(すがた)を変え,姿を変え,くるくると回る. 命は回るのだ. くるくると回るのだ. もし回らない時. 地球ではどうなるか. 火山の噴火(ふんか),川の氾濫(はんらん),台風,地震,大雨,洪水(こうずい),寒波(かんぱ),熱波(ねっぱ),がそれだ. それはぼくたちが体に細菌(さいきん)が入った時,細菌と戦う結果として,熱を出したり下痢(げり)をしたりするのと同じだ. この地球は生きている. 生きて動いている. 生きているもの. 生きているものは,生きていくことを望む. 気持ち良く,楽しく,生きていくことを望む. 生き生きと生きていくことを望む. それが命の基本だ. 自然の姿だ. だが地球が普通に生きていくことを邪魔(じゃま)しているものがいる. 人間だ. 人間だけが回っていない. 人間は食べるだけだ. 草食動物を食べ,肉食動物を食べ,魚を食べ,植物を食べる. しかし人間は,食べられない. 奪(うば)うだけだ. 与(あた)えない. そこに問題がある. 大きな問題がある. とくに問題があるのは石油(せきゆ)の取りすぎだ. 20世紀は「石油の世紀」とまでいわれた. 石油とは大昔(おおむかし)の恐竜や植物(しょくぶつ)の死骸(しがい)が生んだもの. 今人間は大昔の肉食動物,草食動物,そして植物を食べている. だが人間は返さない.もどさない. 人間は石油を使う.なくなるまで使う. 生きている地球のバランスを崩(くず)している. 取るだけの結果が,二酸化炭素(にさんかたんそ)の急増(きゅうぞう),地球温暖化(ちきゅうおんだんか)を招(まね)いた. 地球という生き物は,必要以上(ひつよういじょう)の暑さに苦しみ始めている. わずか平均温度が2℃ほどでも上がると,気候全体が変わる. 大雨が降る,大洪水(だいこうずい)が起きる,逆に雨がまったく降らない,飲み水に困る. 稲(いね)や小麦(こむぎ),野菜が育たなくなる. 世界的に食糧(しょくりょう)が不足(ふそく)する. 北極(ほっきょく)南極(なんきょく)の氷がとけ海面が上がり,沈んでしまう国が出てくる. 多くの難民(なんみん)が出る. そしてそれが何十年と続く. 以前は地球という生き物は,でてきた二酸化炭素は森や林で吸い込んでいた. 森や林は二酸化炭素を吸って生きていく. ところがその森林を人間が農業,工業のために切ってしまった. 人間は森林を切り開く事を,新しく進んだ文明と考えたのだ. そして多すぎる二酸化炭素は海が溶(と)かしていた. しかしその海にも限度(げんど)ある. 地球という生き物は,植物に酸素(さんそ)を作らせ,動物に吸わせ,次に動物に二酸化炭素を出させ,それを植物に吸わせた. 地球という生き物が行っていた見事なバランス. 与え,与えられる.取り,取られる. その中に人類もいた. しかし今それを,人間が邪魔(じゃま)している. 人間は地球という生物の一部分に過ぎない. それがえらそうにし始めた. 次々と森林(森林)を破壊(はかい)していく. このままだと,水にぬれた犬がブルルっと体を振って,水を弾(はじ)き飛ばすように,地球の身震い(みぶるい)で人間が振り飛ばされる事になるかもしれない. 「地球に優(やさ)しく」ではない. 地球の身震い(みぶるい)1つで人類はふっ飛んでしまうのだ. もっともっと人類は謙虚(けんきょ)にならなければならない。 地球は大きな生物. そして人間はその地球を作る細胞(さいぼう)の1つ. 人類は地球の一部分(いちぶぶん)なのだ. 人間は地球のガン細胞(さいぼう)になってはならない。 地球とともに生きていかなくてはならない。 それが基本だ. これから何かを考えていく時の,考え方の基本. 生きている地球. そこで生きている人間. 自然. 動物や植物,鉱石(こうせき). それら全(すべ)てに共通(きょうつう)しているもの. 命だ. 命がある. その命が形を変える. 人間に. 木に.森に. 鳥に,牛に,ブタに. 犬に,猫に,セミやちょうやカブトムシに. 魚に,クジラに,イルカに,カメに. 海に山に,湖(みずうみ)に. ありやミミズやミジンコやゾウリムシに. みんな命の姿を変えたものだ. こう考えてみよう. 人間の右手と左手,右足と左足. 指や腕や耳や目や鼻や口. どれもみな形はちがう. だがみんなが集まって人間の体を作っている. 肺や心臓や腸(ちょう)や肝臓(かんぞう)とか考えていけば,もっと形が違う. だがそれらが人間の形を作る大事なものである事は,あたりまえのことだ. それぞれがそれぞれの役割(やくわり)を持ち,命を生かしている. みなつながっているのだ. どれか1つでもかけると病気になる. 地球という大きな生き物を作っているのが,海であり山であり森であり,草原,湖,キリンや象やバッファロー,マントヒヒ,杉やユーカリ,桜やヒノキ,コスモスやチューリップ,タコやイカ,サメやエイ,蜂(はち)やすずめ,ツバメやでんでんむし,モグラ,青大将(あおだいしょう),カエルにメダカそして,人間なのだ. みなつながっている. そのどれかの命が消える時,ほかの命が命としての痛みを覚(おぼ)える. 悲しみを感じる. 気がついていなくても,だ. 命はつながっている. 命は流れている. 命は回っている. 土が病むとき木が病(や)む. 木が病むとき鳥が病(や)む. 鳥が病むとき花が病み,花が病むとき虫が病む. 人間でもそうだ. 悲しみや不安や憎(にく)しみは人を病ませ,一人の人間が元気をなくすると,まわりの人間も心配し,元気をなくす. 生き生きと生きている人間はまわりも生き生きとする. 元気は移っていく. 元(もと)にある気は流れていく. 自然を大事にする事は自分を大事にする事. 自分を大事にする事で,木や森や海や空は美しさを取り戻していく. 悲しい心で木を守るのではなく,生き生きとした楽しい気持ちで,花や海を守るのだ. お互いの命を回す. 木の中に自分を感じる. 海の中に,チョウの中に,風の中に,草の中に,アオウミガメの中に,自分を感じる. そうやって命のパワーをもらい,渡していく.. 元気をもらい,ほかへと移していく. 地球は生き物. あなたが元気をなくすと,地球も元気をなくす. あなたが元気になれば,地球も元気になる. 取ったらもどす. 嬉(うれ)しいことがあったら,となりの人に分けてあげる. そのとなりの人にも分けてあげる. となりの人が悲しんでいたら,いっしょに悲しんであげる. そのとなりの人が悲しんでいたら,そのとなりの人とも悲しんであげる. できるなら声をかけてあげる. 自分だけOK,はなし. 強いものだけが勝ち残っていくのはまちがっている. みながつながっている以上,1人勝ちはない. 森が枯(か)れ,海が干上がり(ひあがり),動物が死に絶(た)えた中で,1人勝ち残って生き生きと喜べるだろうか. 産業革命(さんぎょうかくめい)の後,科学的合理主義(かがくてきごうりしゅぎ)の考え方でで世界は動いてきた. 人間はこの地球の中で最(もっと)も優(すぐ)れた生き物. 自然を征服していく事が,人間にとっての進歩(しんぽ)だと考えてきたのだ. そして20世紀は石油の世紀(せいき)と言われた. 中東の石油を奪(うば)い,一部の国々が1人勝ちした. つながっている事を,狂ったテロリストたちが,まったく逆の形で,世界に示した. 生き生きと生きているという姿ではなく,死という姿で. これまで味あった苦しみを,おまえたちも味合えと. 死と苦しみでつながれと. |