日本語教師のへの道 2010.5

 

 スペクトラムの月

5月1日。

 

 3ヶ月が経った。実技にも少しずつ慣れてきた。手順も何とか分かってきた。

いよいよ後半戦だ。

 

慣れされすれば問題ない。結構実技の時も笑いが取れる。

この前は女性の言葉を女性らしく、やや誇張してやった時は大うけで、場が一気に和んで、その後の流れがスムースに行った。

 

大丈夫なのだ。24年やってきたなのだから、その蓄積はあるはずだ。

前へ出さえすれば、やれる。みんなの視線を感じれば、何をどうすればいいのかが分かる。あとは自動的に頭も体も口も動いてくれる。

実際そうやってきたのだ。

 

6月はハングル検定。中国語検定。7月は英検2次。

色んな学生がいる。だからできれば色んな言葉を知っておきたい。それが教える際にも役には立つ。できればフランス語もスペイン語もドイツ語もイタリア語もロシア語もアラビア語も、分かりたいが、とりあえずはハングルと中国語と英語は日常会話までは身につけたい。

 

そうすればこちらから彼らの中に入っていける。言葉が分からなければ入っていけない。入っていこうという気になれない。入っていこうという勇気がわかない。

 

だからこの3国語だけはマスターしたいのだ。

 

 だが頭が回らない。眠い。

集中力が続かない。

いつも頭がボーとしている。

こいつを何とかしたい。そんな頭の状態がもう5年以上続いている。

何とかならないものか。

例の奴をするしかないのか。

10万以内で済むのなのだから、これからの一生を考えれば、可能性はある。

やってもいい。

それよりも今眠い。寝る。

 

スペクトラムの月

5月5日

 

 あかん、欝入ってきよった。欝入って来たと気付い時は、もう、息があそうなっとる。

息が胸の上でとまっとる。

みぞおちの上でとまっとる。

 

それで気がおもうなる。息がこもり、外に出ず、新しい息も入らず、こもり、

にごってく。濁ってくんや。濁っておもうなる。。

 

胸が重うなる。重うなる。

気が重うなる。重さで腰が落ちる。やっぱ駄目だなとおもう。くずや。くずにもならん。やっぱあかんのや。ここまでや。これ以上はあかん、だいち足が動かん。動くけど、思うほど動いてくれへん。さっぱりや。何で。

 

前にはいけん。

ここまでや。ここでうずくまる。

うずくまるのが一番や。一番楽でええ。楽でええのんや。ほっとする。うつむいて穴掘って、穴の中に首を入れる。穴に首を埋める。

息せんと、ボーとなるままに、して、

 

何も聞かんと、何も見んと、何も食べんと、そのままや。そのままでじっとする。じっとする。

 

重い重い。重い。重い。息が重い。胸が重い。

 

息をするのがしんどい。

一つ一つ、確かめんと息できへん。

そやからもうええやろと思う。息すんのこないにしんどいんなら、ほっといて、死んでしもうた方が、ええ。

楽や。

 

しょせん、ここまでや。ここまで。

だーれも助けてくれへん。冷たいもんや。ご先祖さん何やってんのや。助けんかボケ。

 

去年今年、3月4月は有りえへん事ばかり起こって、どん底や。

試練てか。

あほか。

そんなんいるか。

試練ゆうたら試練に耐えられる立派な人に与えるもんや。

いらんいらん。ボケ。

 

普通でええねん。

いやいや、普通以下で十分。十分や。

そやから試練いらん。

もう悪いこと嫌なこと起こさんといてくれ。なんか悪いことわししたか。しとらんど。

 

何を勘違いしとんのや。

普通に人生送らしてくれ。重い;。重い。気が重い。気が塞がれる。気が滅入って、気で中毒や。気の中毒死。

 

なんがいかんねん。

おかしいわ。絶対おかしい。絶対おかしいで。

 

ぜったい、おかしい。

 

 

 

スペクトラムの月21日

5月22日

 

時間が迫っている。

6月一杯で学校は終わり。

 

ホワイトボードを買った。

実技のトレーニング。

学校が終われば無職の55歳。毎日が当ての無い就職活動。

いまはまだ色々と先生も他の学生も気を使ってくれるが、学校は終了すれば、一人。

 

勉強会でも開ければまたみんなとも会えるのだろうが、どうなるか。

せっかくの良い連中。このまま縁はつなげていたい。

 

そして日本語教師。

外に出る。

必要とされる、教師に。

なる。

なりたい。

 

 

 

 

 

 

午後飲み会があった。

日比谷公園でビール祭りだ。

みんな集まった。

 

もともと人と会うのは苦手だ。話すのは苦手だ。人とは会いたくない。

テーマが決まっていればガンガン行くが、そうでなければ何も話せない。

飲み会での話は苦手だ。何を話して良いのか分からない。緊張する。

一秒一秒が重い。

拷問だ。

 

 

でも、今日のみんなは、自分の話に熱中し、どんどん盛り上がりながらも、しかし、その話に乗ってこない人への気配りもでき、結果、その場のみんなが楽しくなれる場を作れる人ばかりだったので、緊張せず参加することができた。

ありがたかった。

 

 

偉いとおもう。

みんな30前の女の子だ。

自分の恋話に夢中なり話しながらも、そこに乗れない人へのフォローもしっかりしながら話す。

 

偉いとおもう。

これは、コミュニケーションの新しい進化の形だとおもう。

偉いとおもう。立派だとおもう。

 

 

 

 

足の悪いのを気遣ってもくれた。

嬉しかった。

 

驚いた。

気遣ってくれるが初めてだったので、驚いた。

 

 

ふと気付くと、男は自分だけで、周りはみんな女の子ばかり。

それもみんな魅力的は若い子ばかり。

思わず、細い腕や、長い髪や、伸びた足首、閉じたり突き出したりする唇、丸く見開く瞳、笑いに花開く瞳、風に揺れるうなじ、弾ける笑い、

 

美しい。

みんな美しい。

元気だ。

明るい。

賢明だ。

 

良いなとおもう。

 

こんな娘と一緒にすごせたらと思う。

 

 

うっとりとみんなを見てた。

 

見てるだけで、元気になる。

たいしたもんだと思う。

 

みんな立派だ。

 

でも、みんな、俺とは無縁。無縁なんだよな。見ていて良いなと思うだけ。

 

でもそれで良い。嬉しいのだ。ありがたいのだ。

 

みんなみんなみんな、幸せになってくれ。

 

そう思う。そう思うのだ。