塾日記2007.9.1−31     

白い月の魔法使いの年

96

 

6年の男子に学校から完全に見放されている子がいる。

わからないので、算数でも国語でも理科でも何でも、1015分で我慢ができなく成り立ちあがる。そうすると教室を出て行ってもいいのだ。騒ぐよりいいというわけだ。さすがに学校の外へは出さない。保健室か、空いている先生がとりあえず相手をしてくれているようだ。

 

確かに6年生だができるのは九九と、足し算引き算。

とはいえ足し算も引き算も33桁はできる。22桁の掛け算はできないが、九九ができるので、時間をかければできる。ただ覚えられない。耐えられない。

 

教室ではできる九九と足し算引き算をやっていた。

まずは頭を動かさないとまずい。

できる感じを味合わさないといけない。

だがもともと勉強の頭ができていないし、その回路もない。だから勉強は苦行でしかない。

 

スポーツはすきなのだ。

野球はチームに入っていて、キャッチャー。

春の大会ではピッチャーもやった。

話題を野球に振るとうれしそうに話す。

写真も持ってくる。

その写真もなかなかいいのだ。ピッチングの写真だが、足が良く跳ね上がり、しかもバランスも崩れていない。目はしっかりと捕手を見つめている。

 

こういうのをみると、何とかしなくてはと思う。

集中力も、こんなフォームで投げられる練習を続けてきた持続力もある。

 

勉強だけで、一気に彼の全部がマイナスになってしまうのだ。

彼の学校での勉強は放棄されているのだ。

 

だが彼はアトピーで、喘息。

実につらい。

 

今はまだいい。

小学校で6年通っているので見放されているとはいえ、先生たちもふらふらしている彼に声もかけるだろう。

だが中学になったらただの勉強のできない体の弱い子で終わる。

先生たちで彼を知っている人はほとんどいないはずだ。

完全に見放される。

 

最近は塾に来ない。

遠いのだ。

体の調子が悪いと自転車で来るのもつらいという。

休みが続いた。

それにできるとはいえ計算するのもつらいのだろう。

頭の力がすぐに底をついてしまうのだ。

わざわざ塾に行く気にもなれないのだ。

だが本人もこのままではまずいとはわかっている。

身動きが取れないのだ。

 

で、8月から家庭教師に行くことにした。

彼の家で教えるのだ。

教室はもう一人先生がいるので何とかなる。

 

そこで8月から週に1回行っているが、いつも逃げられている。

遊びに行ってしまうのだ。

家までこられて計算の勉強などいやだ。

ということだろう。

 

行くたんびにいない。

逃げる。

8月最終週は3回行った。2回は逃げられないようアポ無しで行ったが、運悪く、

用事ですれ違った。

昨日も行く予定だったが、ぼくの体調が悪く教室を休み行けなかった。電話で聞くと彼はまたまた学校から帰ってこず、実際行っても会えなかったのだが、しかし諦めない。

何も1時間勉強する気はないのだ。野球の話でもしていればいいと思っている。

するとしてもこっちがやっている計算をそばで見させる。ゆっくり繰り返しやる計算を見させる。それでこうするのかという部分があればすこしでもあり、自分もやってみようかなという気になってくれれば、それで十分だと思っている。

 

そして自分を気にしている大人がいるとわかってくれればいいのではないかと思っている。

会えるまで何回でも行く。

 

しかしただウザったいだけなのかもしれない。

単なる迷惑なのかもしれない。

単なるこっちの自己満足なのかもしれない。

でもまあ、続けてみるのだ。

とりあえず、続けてみるのだ。