塾日記 赤い惑星の月の年 電気の月 3月 10月1日〜31日. 赤い惑星の月の年 電気の月 3月19日。 10月8日。 今日はノシメコクガで盛り上がった。 朝飯を食おうと炊飯器を開けたら、なにやら白い筋が立っている。よく見るとあちこちに何本もある。更に良く見、引っ張り出して見ると、どうやら6,7oの細長い虫だ。 ゲェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜となり、大パニックの中、捨てた。 米びつから1合出して一粒一粒チェックを入れると、いるのだそいつが、うねっている、うねっている! 1匹ずつつまみ出し、捨てる。 5匹程いた。 残った米をしばらく見たが、別に問題なく食えるだろうと結論を出した。 しかしなんなんだこれは! それで教室で子供達にその事を言ったら、それは米ゾウムシだと言われた。 コメゾウムシ? 細くて小さな白い青虫みたいなものだぞ。それが米ゾウムシか? と聞くと、 う〜〜ん、わかんない。 ということになり、急きょ正体さがしにかかった。 ヤフーに、米、害虫、コメゾウムシを入れた。 30分ほどで、コメゾウムシではなく穀象虫、白く細長い虫はがの幼虫のノシメコクガだとわかった。 やってきた中学生に聞くと、さすがに知っていて、米びつに何とか言う薬や、唐辛子を入れている、買ってきたお米を1度ベランダに出して干しているという子もいた。 けっこう米の害虫というのは一般的な事がわかった。 先生ノメシコクガは食べても害は無いって書いてあったよ。 先生きっと気づく前に何匹も食べていたはずだけど、心配なくて良かったね。 ゲゲゲゲゲゲゲゲ〜〜〜〜〜。 なんてこと言う奴だ、こいつは。 こっちを見てにやにや笑っている。 しかしありえるのだ。 いつもテレビを見ながら、東スポを見ながら、手元は見ていない。 ほかの子が、先生明日の朝あくびしたら口から蛾が飛びだすよ。 ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ〜〜〜〜〜 腹の中で蛾が羽化しているのが見えた。 赤い惑星の月の年 電気の月 3月20日。 10月9日。 恐ろしい。 今日米びつからザ〜と出した米を見ると、コロコロと米が10粒ほど固まっている。 まるでミノムシだ。 ミノムシ? まさかこの中に例のノメシコクガが。 よく見ると出した1合の米の中に5,6個の米の塊がある。 こりゃダメだ。もうだめた。 米を全部出した。 まだ2キロほど残っていたが、全部で50近くのミノムシがあった。 完全に乗っ取られている。 俺の米をなんだと思っている。 さらに最後に出した部分だから、米びつ内の上部だろうか、ノシメコクガの死骸が何匹か見られた。 ここまでだろう。 もったいないし、金も無いので捨てたくはないが、こりゃダメだ。 これは食えん。 捨てた。 ミノムシから蛾が飛び出してくるのが恐ろしく、ごみ出しの日ではなかったが、真夜中捨てに出た。 しかし米びつ内で死亡した原因がわからない。 栄養満点の中でどうしてミノムシ状態まで行き着けなかったのか。 悔しかっただろうか。 色々生き残りの条件があるのだろう。 それにしても米の中にうねうねのたくる幼虫は一匹もいなかったのだから、この1,2日で全員がミノムシ状態へと向かったのだ。 見事な本能のなせる技だ。 ごみ捨て場から焼却場に向かい焼かれるまでどれぐらいの時間があるのか。 1ヶ月ほどで成虫に鳴ると書いてあった。 固く締められた袋の中で50匹の蛾がパサパサ飛び回るのだろうか。 赤い惑星の月の年 自己存在の月4月3日. 10月20日. 部屋の中を小さなガが飛んでいる. 気をつけて見ると壁や天井やカーテンの裏、押入れの中とあちこちにいる. この1週間、一日10匹近く捕まえている. ふっと目の前に飛んでくる時も何回かある。 まだ生まれたばかりだからか、フラフラ飛んでいて簡単に捕まえられる. せっかく生まれたのだが、しょうがない. しょうがないが、別に飛ばせていてもいいかとも思ってしまう。 それほどフラフラと無防備に、か細く頼りなく、はかない。 何しに来たのかなとも思う。 白く細く6,7ミリの幼虫が米びつの中、米粒をまとって蓑虫になり、羽化し飛んでいる。 そしてあっという間にティッシュの中、指で潰される。 はかな過ぎる命にすまないと思う。 と思わせるために来たのか。 そういえば小学生の時も虫の観察というのはした事がなかった。 嫌いなのだ。青虫も芋虫もカブト虫も蝶とトンボ以外の虫はダメだ。カマキリなどは形として異常すぎる。 だから虫を幼虫から成虫になるまで順番に見たのは今回が初めてなのだ。 なるほどこうやって命は生き、姿を変え育ち、そしてはかなく死んでいくのだ。 我々だっていつかどこかで、ぶちっと潰され死んでいく。 同じようなもんだ。 だからフラフラとでも頼りなげでも、か細く無防備に飛んでいくしかないのだろう。 しかし白くうねうねと米粒の中で蠢いていた時から3週間ほどでガとなり部屋の中を飛ぶ。 考えれば早い成長だ。 いや逆に人間の一生が長すぎるのだろう。 50年近く生きてきていてまだ何の為にここにきたのかが実感できていない。 何かを知る為の魂の成長が遅すぎるのだ。 修行が足りないのが原因だが、ガはきっと何かを短い一生の中で感じたに違いない。 少なくともうねうねと蠢く幼虫から空飛ぶ蛾となった経験だけでも大きな喜びがあったと思う。姿かたちを変え、ふわっと軽くなり空を飛んだのだ。 その喜びは絶対に大きなものだったはずだ。 それを思うとガがうらやましい。 人間にはそれがない。 できることは無防備にフラフラと頼りなく飛んでいくしかないのだろう。 |