2001.2.1〜2001.2.28         塾日記。

 

2月1日。

 

いよいよ明後日。私立開始。

落ちるだろう奴。

まあ大丈夫だろう子。

余裕余裕の子。

色々色々。

 

全員に月曜日から心構え,体調,当日の注意について毎日メール送る。

当日は朝一のメール。

合格の達磨持ってる自分の写真送ってやる。笑えていいだろう。

みんな2年以上,6年見ている子もいる。

そんな事もできる。

 

来年はどうだろう。

2年はどれもやる気のない連中。気のいい奴もいるが,あまりしっくりこない子もいる。

まだ半年ほどだが,やる気ゼロ。どうおだてても,きつくでても,揺さぶってもなかなか動かない。

疲れる。いやになる。そんな子もいる。どうすればいい。どう話して行けばいい,見えない子もいる。

 

この子たちの受験。燃えるだろうか。

 

今年の中3が一番燃えたのかもしれない。合宿も騒いで叱ったり怒鳴ったりもあったが,それはそれでよかった。9時から3時までの勉強。最終日の6時からの10キロマラソン。

楽しかった。

 

来年はどうなるのだろう。

 

しかし,けっこう変わるのだ。

これまでもそうだった。子供は変わる。そういえば,去年の今ごろ,5年前のおまえぐちゃぐちゃだったよな。とよく話したものだ。

今がこうでもずっとこうであるわけではない。これまで同様,もっと気持ち変えて,やり方考えて,取り組む事だ。

 

さて,まずは明後日。

ここをきれいに通ってほしい。うまく行けば勢いに乗せ,ダメなら気持ちを切り替え,それをいい教訓とし,次へ間髪入れず進める。

 

2月2日。

 

今日は中3は前日でもあるし,早めに寝させようと通塾は自由にしたが,みんな来た。

不安でもあったのだろう。

 

明日の電車の時間を確認,面接の内容の確認,,3問,.4問,,6問できなくても動揺せず,攻める事。

見直しはせず,一回で決める事。そのための集中を言う。

 

6年通ってる女の子が,「先生,イッパイ,イッパイ。祈って。念送って」と言う。

1週間前は館山マラソンの前みんなに3時間切るパワーを送ってくれと言った。

 

やっぱ,しんどい所にいるのだろう。元気モノでいつも目をきらきらさせてる子だが,ちょっとこの3ヶ月伸び悩んでいる。やる事やってるのにだ!

 

「朝一のメール見ろよ。」と言う。でもダルマ持ってる自分の写真見てもたいした事はないだろう。

 

,今までした事はなかったが,明日は朝,駅でがんばれと声をかけることにした。

朝早い,6時から7時半まで。

それを考えるとちょっとうんざりだが,しかし,少しは気持ちの張りにもなるだろう。そこで握手して背中叩いてがんばれ!というのは照れるので,まあ,ちょっと目で合図するくらいでもいいから,行く事にしよう。

 

しかし本当にこれは初めてのことだ。

もう3時。5時に起きるから,あと2時間。

だいじょぶかよ。

 

2月3日。

 

けっこう神経使う。駅は中3だらけ。

朝は腹が悪く,特にこんな風に早起きの時は2度3度とトイレにいかなくてはならないが,いけない。

そのまに行ってしまわれたらかなわない。せっかく来たのだから,声はかけなければ。

トイレに行きたいのを我慢してさがす。寒いしこれだけでもけっこう地獄だ。

 

昨日コンビニで,「元気大爆発ガム」というのを買った。

ビタミンと蜂蜜が入っていてなんと200円もした。しかし笑えるので買った。

 

それを全員に渡した。

 

とことこと歩いてきて,

「何で先生ここにいるの?」

言いながらニコニコしてた。

がんばれと言って,改札を入り階段を下りる前にもう一度こっちを見るかと見送ったが,太陽の日が正面から差し込んでいて,振返った顔の視線を確かめる事ができなかった。少しそれが寂しい。

 

 

 

ほかの中3もびっくりしていた。

少なくとも迷惑ではなかったようだ。

あまりこういうのは得意ではない。照れるからね。

今ごろは真っ最中。

 

早とちりするな。

すぐ投げるな。

確認しろ。

丁寧に。

攻めろ。

全部出せ。

 

 

2月3日。

今日も授業はあったが,今日テスト,明日も受験が続く子もいる。だから今日は明日のため休んでもいいといいといったが,みんな来た。

 

面接なに聞かれた?

国語の説明文の内容は?小説文は誰のが出た?作文の形は?内容は?

 

頭真っ白で覚えてない。

なんだっけ,作文の書き方がどうのこうの,の説明文。みたいなの。わかんない。忘れた〜。

 

でもみんなそれなりにすっきりした表情。

問題用紙を持って帰った子もいたので見てみる。2年生,1年生に見せる。

例のやる気のない2年生に見せるが,やはり関心も興味もない。結局こいつをどうこうしたいがための振りだったが,何の変化もない。がっかりするし,腹も立つ。

 

まあ,いい。

明日もある子が4人。

 

がんばれがんばれと何回も肩を叩き,背中を押し,頭をピタピタ叩き,最後は両肩持って振り回す。

何の意味もないが,でもキャアキャア言わせ,男の子もぼこぼこ膝蹴りお尻に入れて,騒ぐ。

別になんに意味もないが,ちょっとしたばか騒ぎが必要(?)。

 

帰り,コンビニに卒業生。いらっしゃいませ,で顔を上げると去年の卒業生。

うれしい。

きちっとマニュアル守り,恥ずかしそうにでもまたど〜ぞ。

 

26日。

 

気になっていた中3男子。

合格のメール。赤字の大文字。本人のうれしさがわかる。

落ちると思ってた。

12月からは自分で週3日を2日にし,合宿にも出なかった。それで自分でできているかというとできていない。宿題もできてないし,言った事を覚えてもいない。いつもいらいらし,授業のたびに怒っていた。

お互いに気持ちよく授業ができた事はあまりなかった。

 

落ちると思っていた。

 

それが合格。

ほっとした。うれしかった。同時に,何だ自力で合格したのか,,不満にも思った。

こちらの考えたカリキュラム通りにはいかなかったまま受かったのだから,こちらとしては手放しでは喜べない。

 

2月から12月まで基礎力をつけたのはこちらで,だからこの合格もこちらの力があっての事,と思わず思ってみたりもする。

 

いやな性格だ。

合格したのだから手放しで喜ぶべき。

 

そお,喜ぶべき。

いや実際,喜んでいいことなのだ。

本人が喜んでいるのだから。

 

212日。月曜日。

 

レノマのタオル持ってきた。

ありがとう,お世話になりました。

本人もうれしそう。感謝の言葉にもうそはない。そりゃそうだ。うそを言うわけはない。

 

うれしそう。

しかしこのあと親の挨拶欲しいよな。

と思う。

 

一番労力使ったぜ。

商品券で2万。

これが普通。

昔なら5万。金がどうではない。気持ちとして,いつもそうだった。

 

私立,全員合格。厳しい子もあったがうまくいった。ホッとした。あとは本番の公立。

中三8名のうち4名は私立一般,公立の推薦で決まった。あとは4名。

あと2週間。しかしここからさらに上げて欲しい。

が〜〜と気持ちも,集中力も上げる。

 

今の子供達に自分の全精力をかける場所というものはない。

むかしからそうだ。僕のころからそうだった。戦後は誰もがそうだった。自分の力を試す場というものが今の世の中にはない。

それを越えて自分が一段上に行ったと実感できる場がない。

 

3での受験とはその場となる可能性のある唯一の場だ。

だから子供達にはここでやるべきすべてをやる,できる事の全てをやるようにと強く言う。

そこで自分がわかる。

自分の強さ,弱さがわかる。

自分が何者なのかがわかる。

 

そしてそういう場を数多く経験することで,人は幸せになれる。

自分に幻想を持つこともなく,自分の人生を素直に受け入れることができる。

自分の人生をそのまま受け入れることができること。それを幸せという。

 

彼らには全力を尽くし,良いも悪いも自分という人間に直面して欲しい。

これからはその4名が対象となる。

強くあたっていく。

 

 

同時に今は進級だ。

今いる中3以下の生徒をきちっと進級させ,来年度も教室に来させる。

塾であれば当然のことだ。

新しく持った子たちの面談は終わった。

 

一人だけ,退会が出た。小4.中学受験を考えている。それも県内トップ校。

本人は真面目でおとなしく,こちらが言った事はしっかりと行う。控え目で,謙虚で,繊細で細やかだ。

 

だが自分で進める,自分の意見を言う,自分の感じ方,考え方を主張する,ということはない。

 

中学受験ではそれがなくてはならない。精神的にタフでなければやっていけない。言われたままを進めて行く従順さはトップ校では通じない。

 

母親に中学受験の意味はない。

東京から来て,東京にいた時の雰囲気をそのまま引き摺っている。

偏差値のトップ校を狙う。それだけだ。しかもそれが子供の将来に必要なことと素直に信じている。

親もこの子供の親らしく,真面目で,真摯だ。親子で,不幸を作っている。

 

それをあえて言う。しかしもはや通じない。

 

中学受験には意味はある。

力のある子に抽象度の高い文章を読ませる,複雑な人間の心理を追わせる,多くの言葉を覚えさせる,素早い計算,定理を用いての柔軟性豊かに,論理性に富む問題を考えさせる。これは楽しい。本人達も,こちらもワクワクする。

丁々発止の時間。至福の時間だ。

 

 

だがそういう子供は限られている。

今回のこの子はそういう子ではない。

まずは自分の意見や考えを,自分の意志で行って良いことを言う。

そしてそのあと,自分の意見考えを言わせる。次に,その意見考えを尊重しつつ,互いに話し合う。

 

それを当たり前にする。

当たり前に話し合う。その中で論理的に考える癖をつけさせる。自分の感受性の特徴に気付かせる。

自分の考え方の特徴に,個性に気付かせる。

その個性に自信を持たせる。

と同時に,自分の個性に閉じ込められないよう気をつける。

 

 

 

順序があるのだ。

この子はその順序を最初から踏んで行かなければならない。

 

気が弱く,自立心が無く,指示待ち。

 

母親はあせり,他塾,進学塾に子供を入れる。

子供はこれから意味のない2年を過ごす。そして破裂する。

しかし親はわからない。悲しいことだ。ほんとに悲しい。

 

自分を客観視できない。

この親にしてこの子。

子離れ親離れできずに中学高校大学,さらにはその後までもと続いていく二人が見える。

 

 

2月15日。木曜日。

バレンタインデー。

結構くれる。うれしい。手作りの子もいる。

 

例年は1週間前から,「そろそろ準備しろよ,待ってるぞ,3倍返し,先生甘いもの大好きだからな。

だれもくれなかったら先生,「チョコレート待ってたのに……。」って遺書書いて,隅におまえの名前書いて,透かして見るとわかるくらいに,鉛筆で消して,死んでやるからな」とか,言って遊ぶのだけど,今回は風邪で調子が悪く,バレンタインデーを忘れていた。

だから結構新鮮に喜べた。

 

大人からはない。

 

寂しいね。

 

12月から持った茶髪でピアス,スカートにジャージマスカラの子,2月に入ってようやく勉強を始めた。

受験まで1ヶ月もない。

 

「おまえタバコ臭いから教えない。

次の週匂いはなかった。

禁煙たいへんだろ。

勉強の後の一服はうまいぞ。

んなこと言っちゃまずいか。

 

あたま悪いのわかってるからムチャ言わないぞ。これだけ覚えてさっさと帰れ。」

 

 

見てて辛いのがわかる。

考えたり,覚えたりの経験が極端に少ない。慣れが頭のなかに無い。

集中のしようが無いのだ。

頭の中を渦が巻いている。

 

馬鹿にされることを恐れている。

自分にはできないと決めている。

人から見放されることを恐れている。

 

だからこちらがちゃんと相手にすることを感じさせる。

ちゃんと視線を合わす。

最初のうちは私語に走ったり,マンガを書き出したり,立ち上がったりすることにとやかく言わない。

耐えられないのだから。

5分ごとに声をかけて,確認する。

集中力も5分が限度だ。ほとんど1年の知識しかなければ,受験勉強など訳のわからん世界だ。

 

12月1月はほとんど半分しか出席しなかった。2月になってやる気が出た。

もう遅いが,教えられることは全部教える。エネルギーもいるしストレスもあるが,黙って問題を解いている姿を見てて,不思議でもあるし,もちろんうれしくもある。

 

2月25日。日曜日。

工専の子。

去年も一人いたがダメだった。もっとも去年の奴はいいかげんだったのであきらめもついたが,今年の子は真剣だった。なんせ,「僕の10年後」という作文で,すでに工専に合格した事を前提にその後の夢を描いた。

強気だなと思った。落ちたらどうなるかと心配した。

英語が弱かった。集中した。12月,普通にやや欠けていた。1月普通になった。2月,上乗せが効くようになった。

この子は動じない子だ。いつも同じように,冷静だ。突然停電になって,面白がってフラッシュたいて写真とったら,その子だけニコニコ座っていた。他はみんなばたばたと抱き合っていたり,ギャグかましてたり,うろうろしていたのに。

試験当日は例の如く駅に元気大爆発ガム持っていったが,会えなかった。車で行ったとの事だった。がっくりだった。

 

進級面談。ほぼ進級。つまり来年度も塾に来ると言う事だ。

しかし100%ではない。やめる子もいる。

 

中2,この子には力尽くした。

部活や毎日の話を聞き,おだて,誉め,時にぶん殴り,夢を語らせ,僕もまた人生を語った。

勉強が嫌いで,やる気はない。しかし今回問題だったのは母親だ。

心配性,何事もマイナスに考える。

3ヶ月先のことを考えるときも,今がこうだから,もっと悪くなる。としか思えない。

だから自分の子の先も見えていると考える。

3ヶ月先を考えて,半年先を考えて,1年先を考えて,何をやってもダメだと決め付ける。決め付けたところから子供に対する。

子供ががんばると言うと,「本当?いつもそうでしょ?前もそうだったでしょ。いつも最初だけなんだから。最後までやれるの?ここでちゃんと言える?約束できる?」

 

できないと決めてかかる。

だから子供はできなくていいと思う。母親ができないと思っているのだからできなくても問題はない。母親の言う通りになるだけのことだから。母親が言い訳を既に作ってくれている。できなくてもいいのだ。

 

子供の意欲が母親の言葉で切り捨てられていく。

母親は見るからに,心配ばかりをし,そのことで人生を失敗した顔をしている。

その失敗を今度は自分の子供に渡す。

きっとそこには自分の人生の失敗を自分の子供の失敗で補おうとする母親の恐ろしいエゴイズムがあるのだろう。そして失敗した子供を守ることで自分の人生に意味を与えるのだろう。

そして子供はそんな母親に反抗する。全面的に反発する。母親,子供,ともにこれから5年,10年,いい時間を過ごすことはないだろう。それが予感される。暗いのだ。二人とも。そしてもしかしたらそんな二人は暗い部屋の中でそれなりの人生を過ごしていくのだろうか。

 

まあ,切れてしまったのだから,もうしょうがない。しょうがないのさ。

 

2月28日。

 

終わった。今回の試験はやさしかった。100点取った子もいたし,過去問で70点しか取れなかった子も95点も取れてしまった。面接も終わった。

 

昨日面接で聞かれそうなことの確認もした。

気持ちは中2だ。

しかし今回の中2は今年の中三と比べると,ちょっと大人しい。うるさくビービー言って来た方が面白い。

3月でいなくなると思うと寂しい。

みんな4年5年とやってきた子たちなので寂しい。

 

 

なんかがっくりくる。