2000.11.16〜2000.11.30 11月16日。 12月から新しい生徒が来る。近くの教室から来るのだ。 緊張する。今の子は人間関係のトレーニングが十分ではないので、ゆっくりゆっくり入っていかないとダメだ。 非常にナイーブなので、一言一言を気をつけなくてならない。強い言い方はダメた。 いい悪いは別にしてこの15年程で、精神年齢は3〜5年下がったと考えていい。中3は中1、中2は小6、中1は小5。これは大人にも言える。20歳は15歳。30歳で20歳。これは平和の中の過保護、ゲームやPCの普及による一人遊びの時間の増大、が考えられる。 また人との関係作りを教わることもない。その大切さを学ぶこともない。だから自分の考えや感じ方を人に伝えることの必要性も感じない。そこで人との関係作りが絶対の必要条件となる学校で孤立する子が増えてきた。感じやすく、その感じたことを表現できない。それがたまる。重い思いとなる。 その影響で成績が悪くなると悪循環が始まる。 成績の悪さで親から先生から怒られ、あるいはだめな人間と評価され、勉強以外で可能性を探る価値観も持たされてこなかったことから、ひたすら落ち込んでいき、気持ちが重くなり、さらに成績が悪くなり、重くなる。 やっぱこれはちょっとした地獄だ。そんな気持ちを早い子は小学校の2、3年生から持ち始める。 中学生にでもなると窒息の日々を5年以上重ねたことになる。 そんな子が多いのだ。 だからゆっくり入らないといけない。 そしてそんな子はえらく初対面の相手にはぶっきらぼうであったり、生意気であったりする。 よ〜くよ〜く相手を見て感じること。感じ取ること。 11月18日 土曜日 今日は生徒に誘われて学校の子供フェスティバルに行った。 各クラスがそれぞれ出し物をする。 1年から6年まで、教室の中にダンボールを積み重ねて迷路を作ったり、劇をしたり、お化け屋敷を作ったり、ボーリング場、町の歴史、学校の歴史、人間双六、合唱、射的場、何だか入らないとわからない秘密の部屋、と色々。 各教室は生徒たちが管理している。「面白いで〜〜ス。来てくださ〜〜い。」と廊下を走る。 いい感じだ。楽しそうな笑顔。ざわざわ、ざわざわ、周囲からの声、笑い声、喜ぶ声、その声の波に自分を預けると、とても心地良くなる。いいなぁと思う。 しかしここにもいじめはある。 いじめられている生徒が塾に来ている。 楽しそうな無邪気な笑顔。そしてシカトする残酷な心。 ここで言わなければならない。 人は残酷で優しく、優しくて残酷だ。両方を持つ。それが当たり前の姿だ。 今大人は何の規範も示さない。人間が残酷で優しい2つの矛盾した面を同時に持つことを誰も言わない。 良いことばかりをいう。 子供たちは自分たちの力で自分たちの汚い面、残酷で邪悪な面と、優しく天使の心を共に持とうとする。それが人間の当たり前の姿なのだが、誰も教えない。独力で、引き裂かれた心を自分の心としようと絶望的な努力をする。できるわけがない。崩れる。残酷な面が表に出た時、それが全てになる。全てになりどこまでも残酷になる。天使が出てきた時、それが全てになり、美しくかがやく。誰も疑わない。 人は醜く美しい。 人は美しく醜い。 美しさを育て、醜さを許す。 その事を教えたい。 子供たちは辛い状況にいる。 大人たちが思う以上に辛い状況にいる。 何とかしたい。 何もできないことをしっかり覚悟した時、何かができそうな気がする。 11月20日。 卒業生がきた。留学する先のホストへ出す英文の手紙を見てくれとのこと。 以前にも何回か来て、留学の相談を受けた。絶対に行けと言った。これからは日本はアメリカと韓国、中国との関係を強めなければならない。そのためにはアメリカなり韓国なり中国への留学は必要だといった。本人はアメリカに行くことに決めた。 次に言ったことは、日本の文化、歴史、現代日本の政治状況、文化状況をしっかり知っておく事。 彼らが聞くのは、 「で、日本はどうなんだ?」 だからだ。 今の子はアメリカの事を知っているかも知れないが、日本のことを知らない。日本人が日本を知らない。それは、知らなくてはならない。奈良時代、平安時代、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代、この五つの順番をきちっと言える子は少ない。昭和史、現代史となれば、なぁ〜〜〜〜〜〜〜〜にも知らな〜〜〜〜〜い、のだ。 留学の意味は日本を伝えることにある。 と思う。 頑張って欲しいよな。 11月23日 新しい子達と来週会う。 緊張する。しっかり気持ちを整理し、先入観を持たず、しかし準備はしっかりとし、会うときは相手の気を感じ取る。 まず受け入れる態勢を示す。 何でも受けるというメッセージを出す。 色々な事情を背負っている。自分でも知らない事情を背負っているのが今の子だ。 特に中3は気持ちが動いている。やる気は無いが、何とかできるのなら、何とかしてみたいと思ういい機会だから、何か動いてみようか、と思っている。 勉強のできる子は既に追い込みあたり前の時期だが、そうでない子は受験はいい機会になる。 しかしやり方がわからないから、動けず、苛立ち、不安になり、だったら、ということで、やめる。 あとは流れに任せ学校の先生に言われた高校で、決定。もともと2段階は落とされているから、合格はする。 然しそれではせっかくに機会を生かしたことにはならない。 だから10月からはペースを上げ、11月、12月と上げ、1月はちょっとだけ落とし、2月からは全力。 質など問わない。とにかく勉強の時間を増やす。 それまでに勉強に時間を費やしたことなど無いのだから。 しかし、それについてこれず、簡単にあきらめる子もいる。 がっかりする。 弱いのだ。 こちらが高望みしてはいけない。こちらが思っている以上に今の子が背負ってるものは複雑で大きいのだ。 11月29日 新しい子がどんどん来る。 絶対に第一印象を信じてはならない。 今の子は心が複雑に右に左に、上に下にと本人意識してないままに折れ曲がっているから、内側と外側が簡単には一致していない。 自分の気持ちがはっきりしていないから、感情とは別に単に腹が減ってるとか、さっきけつまづいたとか、昼間の友達の言葉をふと思い出しむかついたとか、今の状況とは別のことで今の状況が作られてしまうことがある。反抗的な態度をとっているからといって、それはこちらへの感情表現でないこともある。それにイチイチ付き合っていると、訳がわからなくなる。 まずは全部の先入観、ちょっとした目の動き、表情に囚われずに、時間をかけることが大事だ。 互いに張り合っているバリアーのレベルを下げること。 過剰に反応しないこと。互いに分かり合えないという事を前提にし過ぎない。し過ぎないというバランスがむずかしい。自然に相対す事がもうできなくなってしまった時代だ。 しかしにもかかわらず、まだ自然に近いのは子供だ。 だから子供の波長に合わせる。 第1印象はこちらが作っている。狂いかけている子供の中の正しい自然さに合わせ、大人は自分の中のマイナスを0に近づけ、次にそれを意志し、拡大し伸ばし、今度はそれを子供に返し子供の中で伸ばす。 その第一歩が出会い。 だが、もっといい加減に会っていいのだ。 よっ、元気? |