日韓会談で韓国側が返還を想定した文化財


 日韓会談(1951〜61年)で、韓国側が返還を想定して日本側に提出した文化財目録が3冊ある。これらの目録は極秘扱いで、 年に外務省から公開された日韓会談文書のなかにふくまれていなかった。文書の存在および文書名はわかっていたものの、文書そのものが公表されなかったので、日韓会談で韓国側が返還を要求した文化財の内容を知ることができなかった。
 しかしながら、日韓会談文書公開裁判が進行するうちに、外務省が秘密指定を解除して、文書を公開した。これらの文書の公開によって、どのような文化財の返還を韓国側が考えていたのか、ようやく理解できるようになった。日韓会談で外務省アジア局の担当課が韓国代表から受理しているので、韓国側からの正式文書、つまり返還に関する公式見解と見てよかろう。
 3冊の目録の文書件名などは以下のとおりである。

 『韓国国宝古書籍目録 日本各文庫所蔵(但一部調査未了)』/(注)「昭和二十八年五月十四日広田アジア局第二課長が張基栄代表より受領したものの複製」/外務省アジア局北東アジア課

 『韓国国宝古書籍目録(第二次分)』/(注)「昭和二十八年十月十五日第三回請求権委員会の際韓国側より受領したものの複製」/外務省アジア局北東アジア課

 『日本所在韓国国宝美術工芸品目録(但一部調査未了、要追補)』/(注)「昭和二十八年五月十四日広田アジア局第二課長が張基栄代表より受領したものの複製」

 外務省から公開された文書は、Fuji Xerox社の文書ファイルソフトDocuWorksのファイルだったので、まずこれらのファイルを一般的なPDFファイルに変換してから、紙に印刷した。すると古書籍目録はそれぞれ113ページと158ページ、美術工芸品目録は54ページあり、いずれも手書きの縦書き一覧表であった。
 文化財返還問題を考える際に、韓国側の提出した文化財目録は重要な文書であり、今後の議論にも基礎的な資料となるだろうと判断して、文化財目録をデータベース化することにした。手書きの文化財目録をExcelのファイルに入力して、データベースにした。
データベース化に当たっては、韓昌祐・哲文化財団の助成とボランティアの協力を得た。

ダウンロード・コーナー

原本
『韓国国宝古書籍目録 日本各文庫所蔵』(PDFファイル、22.1MB)
『韓国国宝古書籍目録(第二次分)』(PDFファイル、22.0MB)
『日本所在韓国国宝美術工芸品目録』(PDFファイル、8.5MB)

データベース
古籍目録(CSVファイル、286KB)
美術品目録(CSVファイル、77.2KB)


 最初の古書籍目録には、内閣文庫韓国本193件、図書寮韓国本74件、静嘉堂文庫韓国本463件、蓬左文庫韓国本142件、尊経閣文庫韓国本173件、成簣堂文庫韓国本65件、彰考館文庫韓国本5件、水戸家所伝韓国本6件、計1,121件。第二次の古書籍目録には、東洋文庫韓国本852件、河合文庫(京都大学図書館保管)韓国本688件、米沢上杉家本邸所蔵韓国本5件、南葵文庫(東大図書館保管)韓国本8件、米沢図書館所蔵韓国本27件、計1,580件であった。2冊の古籍目録を合わせると、収録された古籍は総計2,701件であった。

所 蔵 機 関 分   類
内閣文庫韓国本  経部 29
史部 47
子部 62
字書・韻書・目録・類書・叢書部 5
集部 50
小計 193
圖書寮韓国本 経部 10
史部 6
子部 39
集部 19
小計 74
靜嘉堂文庫韓國本 韓國史関係 192
佛ヘ関係 27
醫學関係 2
別集など 242
小計 463
蓬左文庫韓國本 経部 16
史部 27
子部 31
集部 64
佛典 4
小計 142
尊経閣文庫韓国本 経部 12
雑部 32
史部 33
子部 31
集部 65
小計 173
成簣堂文庫韓國本 65
彰考館文庫韓國本 5
水戸家所傳韓國本 6
東洋文庫韓國本 経部 70
史部 262
子部 176
集部 340
叢書部 4
小計 852
河合文庫(京都大学図書館保管)韓国本 688
米澤上杉家本邸所藏韓国本 5
南葵文庫(東大図書館保管)韓国本 8
米澤圖書館所藏韓国本 27
総計 2,701


 美術工芸品目録には、東京国立博物館所蔵韓国所出品466件、奈良国立博物館所蔵韓国所出品3件、京都大学文学部陳列館所蔵韓国所出品50件、東京大学文学部陳列館所蔵韓国所出品3件、韓国所出古美術・工芸品個人所有調書117件、合計639件が収録されていた。

所 蔵 機 関 分   類
東京国立博物館所蔵韓国所出品 1、歴史部 265
2、美術部 17
3、美術工芸部 91
4、美術品部 93
小計 466
奈良国立博物館所蔵韓国所品 3
京都大学文学部陳列館所蔵韓国所出品 50
東京大学文学部陳列館所蔵韓国所出品 3
韓国所出古美術・工芸品個人所有調書 1、韓国古美術品個人占有者 21
2、百済時代美術品個人占有者 6
3、東京大倉集古館所蔵韓国美術品  1
4、日本各地所在韓国鐘  26
5、在東京戸田利兵衛所持韓国古美術・骨董品 52
6、韓国古美術品所蔵者 9
7、国宝鉄彩自絵唐草文瓶 1
8、国宝豊住敬手天寺十三層石塔 1
小計 117
総計 639


 なお東京国立博物館所蔵品のうち、歴史部はおもに遺跡出土品、美術部は絵画、美術工芸品部は陶磁器、美術品部はおそらく古墳出土品と思われる梁山郡梁山面新基里発見品と、昌寧郡昌寧面校洞里古墳発見品である。京都大学文学部陳列館のものは、楽浪、慶州、扶余などから出土した考古学資料である。個人所有調書には、小倉武之助、篠崎哲四郎、東條正一、内藤米一、一宮近蔵、軽部慈恩、戸田利兵衛などの名前が記されてあった。