2002/08/末日/夏休みの宿題T

〜 Y家とNATUKA 〜

 「ねぇ、誰か持ってない?」

 2児の母であるYさんは切羽詰まった声で訊ねてきた。
実は中二と中三の息子さん2人が揃って、宿題に使う道具を学校に忘れてきたとの事。
聞けば〇田小の事件以来、長期休みになると校舎への立ち入りが禁止され
忘れ物を取りに行けずに困っているそうで、昨今の世情に頷く。
始業式まで残り僅か、友人達もどうやらこの宿題に取り掛かっているようで、借用は不可能らしい。
 その宿題は『郷土を描く』
たったこれだけのためにある道具を買うというのは、確かに大変馬鹿らしい話である。



 「家に息子が使ってたのがあると思う。
筆とパレットは大丈夫だと思うけど、絵の具は固まっててダメだと思うんだ」



 同じく2児の母であるJさんが即座に申し出る。
子供の年齢が違うため、現在は使用されていないとの事。



 「絵の具なら、私のがあるよ」


 実はこの時裏作業中だったのだが、別に〆切りがあるわけでもなく
いつもお世話になっているYさんが困っているのだ。
貸すのは当然だと思い、すぐにNATUKAも申し出た。



 「ありがとう!!本当助かる」


 と言う訳でひょんな事から夏休みの宿題に関わる事になり、無事画材はYさんに手渡された。

 数日後
 お礼にと野菜ジュースをいただき、無事宿題も間に合ったと聞きながら絵の具が返却された。


 「もー、本当にありがとうね。お陰様で間に合ったよー」
 「ううん、無事終わって良かったねー」
 「うん。でもうちの息子達に渡したら『NATUKAさんて何してる人っ?!』て言ってた」
 「………」


 NATUKAの手には言われて当然の、特別ケースに入った透明水彩絵の具40本があった。
しかしそれは
『なるべく普通の!』というYさんのご要望に答えた代物だった。
(他はカラーインクやリキテックスだった)

 「あんまり使わないように『大事に使いなさい!』って何回も息子達に言ったら、絵の具の先から
ちょーっとしか出さないようにして、そこから筆で取ってたからあんまり減ってないと思う。
本当にありがとうねvv」

  「(爆笑)別に普通に使ってよかったのに。どーせ使わなかったら固まる物だもん」


 と笑いながら答えたものの内心、Yさんが息子さん達に何と答えたか気になって仕方なかったです。
 (でも怖くて聞けなかった…)


 
※蛇足
Yさん(因みにパンピー)にリクエストされて、絵を描いて差し上げた事はありますが、前ジャンルのキャラでした(冷汗)

2002/12/31/白雪大佐危機一髪


 この夜、大掃除を終えた白雪大佐は某ケーキ屋さんに居た。(※2001/某日
/Happy Birthday参照

この時、大佐は風邪をひいていた。
初秋にキンと冷えた電車にやられて以来、実はずっと各種ウィルスを渡り歩いていたのだった。
治る頃に又体の具合が悪くなり、その都度馴染みの内科の先生にかかっていた。

 「え?また風邪ですか?」 と聞けば
 「症状が違うでしょ?」 とニッコリされる。

 内服薬と注射と点滴と、薬漬けになりながらも仕事はこなさなければならない。
当然うまくいかない。周囲のフォローで大きなミスにはならずに済んだものの、
大佐は精神的にも肉体的にもボロ雑巾状態だった。
 そんなこんなで年末である。年が明ければ毎年恒例、友人宅にて小人達との新年会がある。
この中々会えない友人のため、誕生月は違うがB.Dプレゼントとしてケーキをあげようと思いつく。

 そんな訳で這々の体で大掃除をこなしたボロ雑巾は、ケーキ屋に居たのだった。


 「すみません、このケーキをお願いします」


 子供も居ることを考慮して、スタンダードな苺のホールのケーキを注文すると
 大晦日でもにこやかな店員さんが尋ねてくる。



 「名前をお入れしますか?」


 ボロ雑巾はちょっと考えた。
(新年会なのだから、どーせ皆で食べるんだよな)


 「あ、じゃあ“NewYear”でお願いします」


 するとすかさず店員さんが重ねて尋ねてきた。

 “Happy”はお入れしますか?」



 「!!」


 なんとあまりのボロボロ振りに幸せを忘れていた事に気付かされた元大佐。
驚愕と狼狽で目を見開いたまま顔を上げれば、そこには眩しい笑顔の店員さんが……


 「…お、お願いします!!」


 こうしてよからぬ2002年の締めくくりに、ケーキ屋さんから幸せを貰ったボロ雑巾は
新しい年に向けて復活の狼煙をあげるべく大佐に戻れたのだった。
 


 いつもありがとう!幸せまでくれるブラボーな某ケーキ屋さん!!


つづく