奈良公園ツーリング記 〜 Since 97/10/11 〜


 その日の朝、現れた毛手氏の姿はやる気満々であった。上は黒のダウンジャケット、下はGパンという完全防寒装備に身を包み、登山にでも行くような大型のリュックサックを背負っている。対する私はと言うと、Tシャツにカッターシャツといういたって軽装である。装備は常備している雨ガッパの他に上着を一着 をタンクバッグに入れたくらいである。タンクバッグはこれで一杯なので貨物積載能力ゼロである。(ぉぃぉぃ) さすがにこれではやばい(経験的から言うと帰りは行きより荷物が増える)ので、この前計画的購入をしたLeeのリュックを持っていくことにする。正しく「コンビニ行ってきます」状態である。どちらが正しかったかは、後に証明されることになったが。

 バイクの方はというと、私はHONDAの旧型4サイクル250cc ネイキッドJADEである。今でこそ新型の「ホーネット」が出て、モノバックボーンフレームのかっこいい奴になっているが、当時のHONDAの250ccはいささか垢抜けないデザインであり、「Zeal」「バンディッド」に比べると明らかに見劣りしている。故に「JADE」は当時から不人気車であったのだが、性能的には全く問題ないし、乗っていて楽なバイクなので個人的には気に入っているのだ。対する毛手氏の方は「セロー」から乗り換えたYAMAHAの250ccオフローダー「TTR」である。オフローダーのくせに何故かデジタルインパネを採用しているYAMAHAの最新鋭機である。しかし、なかなかかっこいいのは事実である。

「おう、この小さい数字はなんだ」「トリップメーターやね。AとBで切り替え可能やね」

 手毛手気、自慢げである。

「……しかし、回転計は?」「そんなものはないやね」

「……水温計はどうした」「……うるさいやね」

 きゅるるるぶぉんぶぉん。

「ぉぃ、キックスタートじゃないのか」「セルモーターやね、現代の常識やね」

「なんか、オフローダーのくせに電装ばりばりぢゃないか、それ」「……うるさいやね」

 ……いや、確かにかっこいいのだが……んー。

 これ以上突っ込むと後が恐いので出発することにする。(笑) まず、伊賀のSAで休憩して伊賀そばを食う。翻訳すると肉入りそばである。ちなみに、他に桔梗そばと芭蕉そばなるものがあり、それぞれ天そばとキツネそばに当たるのであった。奥が深い。(笑)

 で、とりあえず第一目標に向かうため、名阪国道を一旦下りる。第一目標……すなわち私の先祖代々の墓である。(笑) 私の記念すべき初ツーリングは彼が同行しての墓参りだったのだ。(笑) 今回は、そのルートを正確に後追いしていたりするのである。前回と違うのは、前回はポップコーンだったのが、今回はそれに加えてフランクフルトと餅になっていたことであろう。(爆)

 そんなわけで、途中のスーパーで食料を買い込んだ我々は、一路お墓に向かった。すすきが美しい。日本伝統の段々畑や、ヤンボーとマンボーの無人精米所を横目で眺めつつ、無事にお墓に到着する。道に迷わなかったのは幸いであった。(笑えない) 私がお線香を供えている間に、手毛手気がバーナーをとりだす。彼自慢の秘密兵器である。

「おっしなにからいこうか」「待て、その前に選択するやね」

「何をだ」「ガスがないやね、10分くらいしか保たないやね」「なにぃぃぃぃ!

「二者択一やね」「いや、三者択二だ!」「そのくらいならなんとかなるやね」

 ……結局、ポップコーンは諦めることになる。(泣) しかし、彼こだわりのグラニュー糖醤油による餅と、フランクフルトのマスタード抜きは最高の味であった。(笑)

 墓前で空腹を癒した我々は、今度は第二目標の奈良公園に向かった。何故か彼がシカにこだわったため、今回のツーリングは決行されたのである。(違うぞ) しかし、現場に到着しても鹿はいないのであった。なぜだ!?

「大仏殿に向かうぞ、あそこなら鹿がいるはずだ」「おう、しかし、この道どうやって渡るだ」

「おっ、あそこに地下道があるぞ」「……奈良の趣ってやつがないやね」

「いや、ちゃんと『登大路』とあるぞ」「……」

 金の鯱を目印に我々は大仏殿に向かった。

 いるいる、いっぱいいる。私は鹿せんべいをゲットして鹿を釣ることにした。

「おう、せんべいだぞぉ」「……寄ってこないやね」「なぜだぁ、ほれ食え」むしゃむしゃむしゃ。

 もっと、くれ。

「だーっ!」

 最近の鹿は怠惰らしい。(笑)

 しかし、先の方に行くと、今度は飢えた鹿に遭遇する。鹿せんべいを見せるとどたどたと寄ってくる。しかも、増殖する。(爆)

 もっともっとぉだーっ、最近の鹿はお礼もしないのかぁ! 奈良公園の鹿と言えば、御辞儀をすることで有名なのだ。だったはずである。最近の若い者は……。うぅ。

 で、大仏殿を攻略する。さすが、世界一の木造建造物、やはりでかい。……って始めて来たわけじゃないのだが、くる度にこのでかさには圧倒される。あまりにもでかくて私のQuickTak100Plusでは納まらないのであった。(泣) しかし、私がそう言うと毛手氏は自慢げに笑うのであった。そう、なんか彼、新しいデジカメを買ったのである。オリンパスの1400である。(初めて聞いたときはPowerBook 1400cかと思った) 

 まぁ、写真は機械の性能ではない、センスで決まるものである。フッ。Appleの技術は世界一ィなのだ。(当時) もっとも、彼の自慢のスマートメディアは途中で容量不足で撮れなくなってしまったので、この勝負は次回にお預けになってしまったのであった。と、いうことにしておこう……決して、私のQuickTak100Plusがメモリを使い切る前に電池切れをおこしたせいではない。(泣)

 五重塔も見学しようという計画は毛手氏に敢え無く却下され、我々は再び騎乗の人となることになった……いや、なる前に親切な毛手氏の道案内のおかげで春日大社に参ることになる。春日大社のあたりで、毛手氏、既にダウンしている。(爆) 誰が我々のバイクはこっちだと言ったんだ、おい。(笑)

 しかし、夕暮れ時の奈良公園を散策した(ということにしておこう)我々は、その後、なんとか愛車にたどりつくことができたのであった。(爆笑)

 そんなわけで、我々は既に暗闇と化した名阪国道を疾駆したのであった。今回は守りの走りを見せる。いや、横風もきつかったし、ねずみ取りも恐かったが、なによりも……寒かったのだ。もう、手の震えが止まらないくらい寒かったのである。家に辿り着いたときは既にずたぼろ状態であった。うー今回のツーリングは大成功だったのだが、反省点はやはりケチャップだけでなくマスタードも買うべきだったこと……もあるが、やはり秋は完全装備で望まないといけないことであろう。さ、さむかったぁ。

 ついでに、バイク乗りにはハイウェイカードが必須だということも一つの発見であった。少し考えてみればわかるのだが、バイク乗りにとって高速道路最大の難物はあの料金ゲートなのだ。手袋してる上に車のようにおつりも通行券も助手席に転がしとくわけにはいかないのである。思わず強行突破したくなってしまうのも無理はない。(『RUNABOUT』のやりすぎだ!) 次回はハイウェイカードを用意しておくことにしよう。 まぁ、とりあえず、そんなわけで我々は無事に家についたのであった。次回は彼にビニール製の鹿人形をゲットしてもらわねばなるまい。なに、鹿はもういいって?(爆笑)


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