〜コンボを考えてデックを創ろう〜

なんでそんなにいっぱい「シヴ山のドラゴン」がいるんだよ :
 はじめのうちはみなデックを組むといってもとりあえず持っているカードをかき集めて作るのが精いっぱいで、攻撃呪文オンリーデックだの、ウィニーデックだの、といっても夢のまた夢の世界で戦ってきたに違いありません。しかし、ある程度カードが貯まってくると、テーマを決めてデックを作れるようになってきます。それはゴブリンのみで組んでみようとかの気分的なテーマかも知れませんし、黒単色とかの作戦的なものかもしれません。これからはそういった、ルールはある程度わかったし、ある程度実戦も経験した。カードも貯まってきた。じゃあ、どうやったら勝てるんだろう、という初心者は脱却したけど中級者というにはちょっと自信がないという初級者から中級者の方を相手に話を進めていくことにします。かくいう私も初級者の端くれではあるんですが。

……おいおい、なんだよそのスーツケースは。まさか…… :
 マジックで「カードをたくさん持っている方が勝てるわけじゃない」、というのは定説となっています。しかし、ある程度カードがなければ、限界があるのも事実です。では、カードは何枚くらい必要なのでしょうか。一般には、カードの差を腕の差でカバーするためには最低3000枚は必要、と言われています。つまり、3000枚位のカードがあれば、たとえ相手が何万枚ものカードを持っている「ミスタースーツケース」であろうと、腕の差で押さえ込むのは不可能ではない、と言うことです。逆に、カード保有数が3000枚以下のレベルだと、腕の差をカードの差でカバーする(される)こともある、という言い方もできます。
 ただ、相手が相当なやり手ならともかく、お互いまだマジックの世界に足を踏み入れたばかり、というレベルなら、カード1000枚もあれば十分戦うことができます。それに1000枚もあればある程度は自分の思うようなデックを組めるようになります。腕と保有枚数の交点は実際には1000枚当たりだと私は思うのですが、どうでしょうか。ちなみに、私の保有枚数は5000枚くらいです。ほとんど99%が日本語版、というのが、初級者の証です。(苦笑)
 誤解してもらっては困るのですが、カードの枚数がこの程度いる、というのは、そうでないと強力なカードが手にはいらないからだ、ということだけではありません。いや、それよりも、もっと重要なことがあります。それは、同じカードを何枚集めたか、ということです。言い換えると、確率操作が可能か否です。これが保有枚数によってある程度決まってしまうのです。そして、これは、デック構築における最重要ポイントなのです。1000枚程度の枚数がなければ、同じ呪文が4枚揃わないのです。なぜ同じ呪文が4枚いるのか。ここで、デックの中のカードの割合について少し分析してみましょう。
 一般に、デックは60枚で組まれることが基本となっています。トーナメントルールのデック最低枚数が60枚だからです。本来デックの組み方には最低が40枚という以外にルールはありません。しかし、各地で開かれている大会にはデックの組み方についてルールが決められており、それを一般でも採用しているケースが多いので、ここでついでに簡単に大会でのデック構築ルールを述べておきます。
 基本地形、「平地」「沼」「山」「島」「森」以外のカードは4枚までしか同じデックには入れてはいけない。デックの枚数は60枚以上でなければいけない。他に使用禁止カードや、1枚制限カードなどのルールがありますが、トーナメントのデック構築ルールの基本はこれだけです。
 さて、最低60枚ということは、別に100枚だろうが、1000枚だろうが別に構わない、わけですが、普通はデックは最低枚数の60枚で組まれます。なぜでしょうか? これは確率の問題なのです。デックの中には基本地形以外は同じカードは4枚までしか入れられません。60枚のうちの多くは土地で占められてしまいますから、デックに入れられるカードの種類は自ずと限られてきます。デックの性質にもよりますが、一般的にはデックの中の土地の率は33から40%、即ち、デックが60枚なら20から24枚は土地ということになります。残るは36枚。これが全て4枚づづだとたった9種類しかデックに入らないのです。まあ、全部が全部4枚づつ入れる必要はないのですが、それでもカードの選択は厳選する必要があります。


……まさかと思うけど、その背丈ほどある山がデックなの? :
 じゃあ、トータル枚数を増やせばいいじゃないか? という話になるのですが、そうすると欲しい呪文を欲しいときに手に入れられる確率が減っていきます。例をあげましょう。白に「解呪」という呪文があります。エンチャントもアーティファクトも除去できる優秀な呪文です。しかし、これは必要なときに手札に無ければほとんど意味がない呪文です。貴方が超強力なクリーチャーを召喚したとたんに相手が「支配魔法」を唱えたら? 手札に「解呪」があればいとも簡単に解決する問題も、なければ致命傷となってしまいます。「対抗呪文」などの呪文になると、その傾向は更に顕著になります。いつか手札にくればいい、というたぐいの呪文ならともかく、そのとき、その場で使えることが必要な呪文は、ライブラリの中に入っている、というだけでは意味を持ちません。手札に持って、初めて意味があるのです。そのカードを引けなかった、ということは普通のカードゲームなら、「運が悪かった」という話になります。しかし、これは「マジック」です。確率をも自在に自分で動かすことができる「マジック」において、 「運が悪かった」というのは単なる言い訳にしかなりません。確かに運という要素は皆無ではありませんが、貴方が1000枚で組んだデックで土地が出ずに敗北し、 「運が悪かった」などといったら、馬鹿にされるだけです。従ってその呪文を有効に使いたいなら、より多くの枚数をデックに入れることが必要となってきます。最大4枚、ということは4枚入れるのがベスト、ということです。ここでは詳しく説明しませんが、呪文にも手に入りやすい呪文と滅多に手に入らない呪文があります。はじめのうちは2枚以上持っている呪文は、呪文自体の能力もさることながら、2枚以上デックに入れられる、というだけでデックに入れる呪文の重要な候補とすべきです。そして、その呪文をより効果的に生かせるようなデックを組むべきなのです。これがコンボという後に述べるテクニックになるのですが、ただ1枚しか持っていない呪文をデックに入れるなら、その呪文が中盤戦以降でなければ出てこないことを前提にした戦略をたてなければ、負けても当然です。それは、「運が悪かった」のではなく、「腕が悪かった」のです。そう、デックを組む段階で、戦いは既に始まっているのです。

「とりあえず、その「大喰らいのワーム」に「ガス化」」「なにぃっ!」 :
 「枚数が多い呪文はそれだけで価値がある? でもこんな呪文使えないよ」。そう思われた方はいませんか? ちょっと、その呪文を見せて下さい。「ガス化」、これは自分の弱いクリーチャーにつけてやると敵のクリーチャーを一体確実に止める無敵の盾になります。敵の強力なクリーチャーにつけてやっても効果抜群ですし。「死者再生」? 敵の強力なクリーチャーをやっとの思いで殺したときに使ってあげなさい。自分で超強力クリーチャーを捨ててから使ってもいいですし。「濃霧」? 敵の一斉攻撃の時に使えば効果絶大です。
 使えない呪文で、なおかつ、数が大量にある……というのは「マジック」では実のところそんなにはありません。多くの場合、数が多いということは手に入りやすい呪文なのですが、手に入りやすい呪文ほど基本的で優秀な呪文が多いのです。あなたが余らせている呪文は、本当に「使えない」呪文ですか? かくいう私も、「ぐるぐる」や「解呪」を全く使えない呪文として腐るほど余らせていたことがあります。今では「解呪」は白デックには必ず2枚以上は入っている貴重品です。

では、ダメージ6点だ、むろん私は「赤の防御円」を使うがね…… :
 枚数が多い呪文はそれだけで価値がある、ということはわかりました。しかし、限られた数しか手に入れられなかった呪文に限って、強力でデックに入れたい呪文だった、というケースはよくあります。だいたい1000枚くらいもカードが貯まってくると、これは!というようなカードに一度は巡り会うことがあったと思います。例えば「サルディアの巨像」(9、9/9、トランプル)などの圧倒的な力を持つ超重量級クリーチャーや、何もかも焼き尽くす広域破壊呪文……「インフェルノ」。しかし、多くの場合こういった強力なカードは、その反動が自分に返ってきます。「サルディアの巨像」は一度攻撃するとアンタップするのに9マナが必要です。広域破壊呪文は自分もダメージを受けてしまいます。そこで、この欠点をほかのカードと組み合わせてカバーし、長所のみを活用しようというのがいわゆるコンボの典型的な例のひとつなのです。
  「サルディアの巨像」のようなアンタップコストの激しいクリーチャーには「賦活」や「永遠の戦士」を、 「インフェルノ」には「赤の防御円」を、といった具合です。
 弱点を補強するのではなく、長所を更に伸ばすコンボもあります。例えば「ツンドラ狼」(白、1/1、先制攻撃)は軽量級としては有能なクリーチャーで、単独で使っても役にたちますが、インスタントの「血の渇き」を使うとそのターンに限り、タフネスが5までのクリーチャーを一撃で葬り去ることができます。インスタントなので奇襲効果も期待できます。他にも有名なクリーチャー一掃コンボ「茂みのバジリスク」と「寄せ餌」などが長所をより伸ばすコンボの例といえるでしょう。
 そして、このようないくつかのコンボを組み合わせてデックを組んでいくというのも一つの方法です。このカードを使ってみたい、あるいは、このコンボを使ってみたい、というのはデックのコンセプトとなるのに十分なものです。なぜならその時点でデックの重要な要素である「色」が決まってしまうからです。

「赤、青、黄、緑、桃……全部で五色だよな」「違う!」 :
 色……それは、デック構築の上で重要な意味を持ちます。同じ色にあるカードは限られています。白単色のデックで「対抗呪文」を唱えることはできません。青単色のデックで「火の玉」を放つことはできません。赤単色のデックで「解呪」を唱えることはできません。やりたいことが多くなればなるほど、色はどんどん増えていきます。しかし、色が増えれぱ増えるほど、土地の種類は増え、そのデックは機能しなくなっていきます。なぜか? 
 必要なときに必要な呪文がない、という自体が致命的であり、なおかつ、それは自ら招いた災難であることは前に述べました。しかし、それよりも致命的な事態が「マジック」においては存在します。必要なときに必要なマナ・ソースがない。多くの場合、土地がない、と言い代えることのできるこの事態は、一般的に「ランド事故」と呼ばれます。はじめに一般的にデックの中の土地の率は33から40%必要だ、と書きました。これは、それだけ入れておけばはじめの3ターンくらいまでは土地が出し続けられるだろう、という確率論的数字なのですが、色の要素が入ってくると話は更にややこしくなります。必要なときに必要なマナがない、そう、「島」がずらりと並んでいても「火の玉」を放つことはできません。ましてや、「シヴ山のドラゴン」など召喚できるはずもありません。そう、どの土地をどれだけ入れるか、ということも考える必要が出てくるのです。特に同色のマナが2つ以上いるような呪文の場合、3色デック何ぞで有効に使うのはかなり厳しい話と言わざるをえません。そして、この必要な色のマナが必要なだけある、という状況を作り出すのはそのデックに含まれる色が多ければ多いほど絶望的になっていきます。これはマナ・ソースになりうる呪文である程度はフォローできるのですが限界はあります。じゃあ単色なら? マナの回転は良くなるでしょう。しかし、呪文は制限されます。むろん、他の色の真似事、例えば青単色でエンチャントを除去することも、可能ではあります。しかし、必要な呪文を必要なだけ揃えるのは、それが得意な色で同じことをするよりはるかに困難となります。ですから、デックの色の数は一般的には多くても三色、普通は二色、というのがデックの基本といわれています。ただ、個人的にはデックは二色か、あるいは単色がベストだと思っています。
 土地の割合は、私は呪文の数で単純に決めていますが、本当なら重い呪文の割合も検討して慎重に考えるべきでしょう。

……一体何匹ゴブリンがいるんだよ! :
 使いたいコンボが決まれば色が決まり、色が決まれば自ずと使える呪文も決まってきます。その色の中から更に使えるコンボをいくつか選んでいけば、36枚の呪文枠などあっと言う間に埋まってしまいます。そのようにしてコンボを有機的に組み合わせてデックを作るのも一つの手です。それ以外にデックそのもののテーマを決め、それに基づいてデックを組むという手段もあります。例えば、ゴブリンと、それにゴブリンに関わるカードのみでデックを作るというのは、この手のデックの典型的例です。
 同じテーマを決めてデックを組むにしても、ある戦略を決め、それに基づいてデックを組むやり方もあります。このタイプは大会などでの勝ち狙いデックに多く見られ、ウィニー、ネクロ、土地破壊、ゴブリンバーンなどがあります。順に簡単に解説すると、ウィニーは軽量級のクリーチャーを大量に入れ、次々に召喚したクリーチャーの大群で敵を叩きのめそうとするデックです。ネクロは「動く死体」を主力呪文とするデックで、敵や自分の墓場からクリーチャーを引きずり出してきて配下にするデックです。土地破壊は、「石の雨」などで敵の土地を次から次に破壊していき、敵のマナを封じるデックです。ゴブリンバーンはゴブリンと攻撃呪文だけで作ったデックです。具体的にどんなデックなのかは雑誌などに豊富に載っている例を見るのが一番ですが、これらのアイデアをヒントに自分なりに組んでみる方がより楽しいと思います。

 では最後に、私の乏しい経験からいえる、デックの組み方の鉄則をいくつか述べてシメとしたいと思います。参考になれば幸いです。

・エンチャントは強敵である、必ず対抗手段を用意せよ!
 敵が自分の陣営を強化するためにエンチャントを使った場合、逆に、敵が自分の陣営にエンチャントを使ってきた場合、どちらの場合でもエンチャントは非常にイヤなモノです。一見地味なようで致命傷となりうるのがマジックでの「エンチャント」です。初心者はクリーチャーに比べて敵のエンチャントを軽視する傾向がありますが、対抗手段は常に用意すべきです。
・いつまでも、いると思うな強力クリーチャー!
 パーマネントと呼ばれる場に居座るカードの中で最も寿命が短いのがクリーチャーです。ほぼ例外無く敵が対抗手段を持っているので、運が悪いと一度も攻撃できぬまま抹殺されてしまいます。従って強力なクリーチャーに全てをゆだねるのはやめた方が無難です。同様の理由で初心者好みのクリーチャー強化型エンチャントも大量に入れるのは避けるべきです。
・序盤を耐え抜け!
 初心者は強さのみに目を奪われ、超重量級クリーチャーのみをデックにいれがちです。しかし、そう言ったデックでは序盤は無抵抗のまま殴られる一方で、手札に 超重量級をため込んだまま倒れていくことになります。少ないマナでも使える序盤用のカードもデックに入れておくことが必要です。

 次回予告。
 そして、ついに決着を付けるときが来た。荒野に立つ、二人の魔導士。その呪文は大地を焼き付くし、その配下の魔獣は生ける者全てを喰い尽くす。
 風が、荒野を流れた。そして、風が凪いだその瞬間、二人は同時に動いた!
 次回、マジックリプレイ、「風の動く刻」。ご期待下さい。……できるといいなぁ。

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Presented By Dark Knight.