上海・洋山コンテナー港


  2006年3月5日
 洋山港という名前を聞いてもどんな港なのか分る日本人はほとんどいないだろう。中国人でもその名前を知っている人は多くはない。上海人なら名前くらいは聞いたことがあっても、どこにあるのか正確な位置を知っている人はきわめて少ない。上海市の地図にその名前が載ったのはごく最近のことだ。

 そんなところへ私が興味を持ったのは、2001年ごろから中国の交通関係のニュースのウォッチを始め、上海とその周辺にたくさんの大橋が建設され、かつてのサンフランシスコのような「大橋経済」が出現するのではないかという記事を見たからだ。

 杭州湾横断大橋、南通大橋、崇明連絡道路、それに洋山港と上海を結ぶ東海大橋。これらは全て着工しているが、一番先に完成したのが東海大橋である。上海は港町であるが、長江の河口にあり、どの港も水深が浅いのが悩みであった。このため上海の東南海上にある崎嶇列島にある小洋山に目をつけ、ここに巨大なコンテナー港を建設することにしたのである。この建設を巡っては浙江省との駆引きもあったが、ここでは省略する。

 この港の工事には2002年に着工、2005年12月10日に正式に開港した。開港を記念して4日間に渡り、模範労働者や選ばれた人たち1万人が見学に招待されたというニュースがあった。橋を渡る一般のバスがあるのかどうか分らなかったが、せめて上海側から大橋を見たいものだと思っていた。

 新聞記事に、地下鉄2号線の龍陽路駅(ここは磁気浮上列車の駅でもある)から、臨港新区までバスがあると出ていたので、そこまで行けば橋が見えるだろうと思い、3月5日に、龍陽路駅まで出かけた。ちょうど近くの上海博覧中心で「華交会」と呼ばれる商品輸出入見本市が開かれていて、大勢の人出であった。以前は見なかったが、今回は左の写真のように、会場までの白バイクがたくさんいた。大して遠くないのに、5元だというから暴利である。

 バス乗り場にはたくさんバスがいたが、どこが乗り場か分らないのである運転手に聞くと、あっちだと指で教えてくれた。その辺りへ行くと数人の人がいて、ここでいいという。バスはいつ出発かと聞くと、30分後だというので待っていた。どこにも時刻表がないのに、どうして分るのか不思議であるが、彼らの言うこともあまり当てにはならない。彼らに聞くと、大橋を渡って島まで実際に行けるらしい。ラッキー!と思った。

 その内に白タクがやってきて、バスはまだまだ来ないから乗らないかと誘い始めた。私は人々の後ろの方にいた。値段が聞き取れなかったので、聞こうかと思ったが、ここで前へ出て行って聞くと、きっと目をつけられてうるさく誘われると思ったので止めた。1時間経ってもバスは来なかったが、待つしかない。

 その内、マイクロバスがやってきて、「洋山深水港」とどなった。何人かの人がそちらへ走り、何人かはそのまま動かない。とにかく早いほうがいいだろうと思ってマイクロバスへ行き、切符売りの女に聞くと、洋山深水港へ行くと言うので、17元払って乗った。これだと直接島まで渡るのかと思ったが実はそうではなかった。

 バスは間もなく走り出した。浦東の道路は上の地図でも分るようにずいぶんよくなっている。博覧会場を過ぎて、浦東空港の方向へ走った。しばらくするとA2道路に乗り、一路南から南東へ向う。料金所を出てしばらくすると、新しい建物がいくつかあり、そこでバスが停まった。やはりここは「洋山深水港」というよりも「臨港新区」という名前の方が適切だ。みんな下車するので、続いて降りた。

 人々についていくと、みんな別のバス乗り場に並んだ。今度は本当の「洋山深水港」行きだろう。並んでいるのは港へ働きに行く労働者らしい人たちや、この日は日曜日なので見物に行く人たちらしかった。まもなくバスが来て、今度は12元とられた。出発してもすぐには橋に出ないので、ここからだと相当高い所まで昇らないと橋は見えない。

 やがて橋に出た。全長は32キロといわれ、ほとんどの部分は海底から橋脚が出ている。だから工事はおそらくそれほどの難工事ではなく、明石海峡大橋や瀬戸大橋を見慣れた目には、簡単な橋のように見える。片側3車線の立派な橋であるが、通行量はまだ多くはなく、時折トラックが通り過ぎてゆくだけである。空が曇っていて眺めはよくない。30分も走ると島影が見えてきて、橋が斜張橋になった。




 バスは間もなく幹線から離れて、島の右側の部分へ出た。かなり離れたところに数台のコンテナークレーンが見えてきた。この辺りが駅かと思ったが、バスは再び幹線に乗り、小さなトンネルを越えたところで停まった。一つだけ大きな建物があったが、他には何もない殺風景な所である。

 バスが最終的に停まったのは左の写真のように何もない殺風景な所だった。ちょうどこの写真の反対側に堤防があり、人々が大勢登っているので、行ってみたが、単に海が見えるだけだった。元々、コンテナー港を作っただけだからこんなものとは思っていたが、まさに何もなかった。しかし、商売熱心な中国人のことだから、夏くらいまでにはこのあたりには、いっぱい露店や食堂ができるのではなかろうか。

 島までは来られないかもしれないと思っていたので、来られただけで満足だ。帰りは逆の道を走るだけ。例のバスの乗り継ぎ場所では、次のバスまで長い時間待たされた。しかし、待っている人は少なかったので、多分別のところにマイクロバスなど、正規でない乗り物の乗り場があるのだろうと思う。
(記:2006年3月19日)

上のような文章を書いたら、すぐに次のような新聞記事が出た。流石に上海の商売人は動きが速い。とは言っても、もう少し観光施設ができないと、余り客は多くは来ないのではなかろうか。

洋山港水上遊覧路線
新聞晨報 2006-03-21
 上海寰宇輪船有限公司が高速客船の運行認可を申請中。順調に進むと最初の洋山水上遊覧路線は26日に試運転され、その結果により正式に切符を売り出す期日が決められる。
 計画では、個人客に対しては、長距離遊覧が128元、短距離遊覧が80元、団体客には一定の割引がある。長距離遊覧は、芦潮港から出発し、東海大橋に沿って進み、小洋山を回って帰ってくる路線で、遊覧時間は約2時間半。大橋の主橋脚、港の一期工事部分で写真撮影のために15分停船する。短距離遊覧は約1時間半で、主に東海大橋を見て、大橋の主橋脚をくぐって、帰ってくる。
 すでに高速船は到着、定員は235人だが、多くの人が甲板で見物するので、安全を考え、乗船数を150人以内に抑える。月曜日から金曜日までは毎日、それぞれ1便、週末は4便を運行する考え。すでに多くの予約申込みが来ているという。