交流分析とエゴグラム...


Last Update: 12/19/97


交流分析
交流分析は、エリック・バーン(アメリカ、精神科医、1957)によって開発された
心理療法です。他の人との交流や対話を通じて、自分自身や相手の心の状態を分析
する方法です。

基本的な考え方として、以下の3つがあります。:         
1.人は誰でも3つの“私”(自我状態)を持っている。      
2.対人関係の鍵は、他人を変えるよりも、自分を変えるほうが、はるかに簡単
  であり、生産的である。自分の過去と他人を変えることはできないから。
3.自分こそが、自分自身の行動、感情、思考をコントロールし、管理する責任者・
  指揮者である。               

交流分析の目的には、:                     
(1) 自己理解を深める                      
(2) 自律的な生き方をする                    
(3) 真の交流を深める                      
が、挙げられます。                       

では、自我状態とは何か・・・:   

自我状態とは「感情および思考、さらにはそれらに関連した一連の行動様式を総合
した1つのシステムである」と、バーンにより定義されています。
その自我状態をまとめると下記の表の通りとなります。
分 類P・親の心A・大人の心C・子供の心
自我状態の成り立ち 幼児期に親などがよく言ったことややったことを、いつのまにか親と同じように、そのまま自分の中に取り込んだ部分 思考力が発達するにつれ事実に基づいて物事を判断し対処しようとする過程の中で作り上げられた部分 幼児期に親などの養育者に対応しようとする過程の中で、感覚的・感情的な反応の仕方を身につけてできあがった部分
自我状態の区分
CP
批判的P
NP
保護的P

大人
FC
自由なC
AC
順応のC
自我状態の特徴 価値観・信条・良心・道徳観など理想とする考え方を身につけた部分

父性的
親身になって世話をしたり、優しさや愛情を示す部分

母性的
問題処理にあたり合理的に情報を収集し、整理統合し、今ここで何がもっとも適切な解決法かを判断する部分

理性的・知性的
親などの養育者の影響をほとんど受けずに人間が本来持っている自然な感情を自由にあらわす部分 他人の顔色をうかがい本来の自然な感情を抑え周囲の期待に沿おうとして妥協したり従順になったり時として反抗的になったりする二つの部分
厳しい私
優しい私
冷静な私
あけっぴろげな私
人に合わせる私
以上、P,A,C3つの自我状態の特徴、働きを良く理解した上で、このバランスを促す
ようなセルフコントロールが必要になってきます。
このための、自己分析に、次に述べる自我構造分析が有効となります。

自我構造分析
自我構造分析は、PACによって私たちの感情・思想・行動を自己分析していくことです。
自我構造分析によって、自分自身を客観的に見つめ、自分の性格のアンバランスを見つけ
ることに、その目的があります。
つまり、自分のバランスがどのような状態にあるかを正しく自己認識することから、セル
フコントロールができるようになり、人との交流をよりよいものにすることができるよう
になるのです。

 自分の自我状態について、以下のポイントから分析を行います。
 1.P,A,Cの3つの自我状態のうち、どれが主導権を握っているか。
 2.年齢や自分がおかれている生活環境、社会条件などによって、P,A,Cの
   主導権はどう入れ替わるか。
 3.自分の対人行動の仕方に片寄りはないか? 自分特有の行動パターンはないか?
   (例えば、相手に気を遣い本音が出せないAC過剰型か、すぐ相手を批難・叱責
    するCP過剰型か・・・)
 4.本来自分はこうありたいという理想の性格タイプとはどのようなものか。
   それに対して現実の自分の性格と行動様式にはどのような違い・ズレがあるか。


エゴグラム
エゴグラム(機能分析)は、エリックバーンの弟子であるデュセイ(Dusay,1977)が
考えたもので、それぞれの自我状態が放出していると想定される心的エネルギー量を
グラフ化して分析するものです。
エゴグラムは、1)個人の性格の内に潜む力、2)性格のいろいろな状態を移動する
エネルギー、という2面から性格を描写し、行動を修正していく“機能分析”の方法
です。

では、エゴグラムチェックリストで、自我構造分析をやってみましょう!

 エゴグラムを見る場合のポイントを以下に掲げます:
 1.現実のエゴグラムで、いちばん高いのはどれか。いちばん低いのはどこか
   を見る。
 2.理想のエゴグラムについて同様に、いちばん高い部分、いちばん低い部分
   を見る。
 3.現実と理想のエゴグラムのギャップ・ズレはどうかを見る。
   なにが最も差が大きいか。どの部分を上げ、どの部分を下げたいと望んで
   いるかを見る。
 4.総エネルギー量に対し、最も高い部分は何パーセントのエネルギーを投入
   しているか、P,A,Cのエネルギーバランスはどうかを見る。

 ここで、エゴグラムの中でいちばん高い部分は、何か問題が生じた場合、
あるいはストレス下で自分が直ちに最も反応する自我状態です。
 いちばん低いところは、心のエネルギーの投入が最も弱い部分であり、
性格のなかで不活発な部分であるといえます。

 理想的なエゴグラムパターンは「ベル型」といわれ、次が「平ら型」とされて
います。
 が、日本において社会的に適応状態の良い健康な成人の場合、「ベル型」とも
「平ら型」ともやや違い、NPピークの左上がり右下がりパターンとなっている
ようです。
 ただ、本質的には各人がそれぞれどんな人になりたいかということが最も大切
であり、本人の主体性が重要であると、デュセイは強調しているようです。