液体をばら積み輸送する貨車です。 積み荷はガソリン、軽油、重油、LPG、硫酸、アンモニア、アルコール、塩酸…などいろいろ。 また、液体じゃないですが、セメントが積み荷なタンク車もあります。

圧倒的に多いのがガソリンタンク車。 原油は常圧分留され、沸点が低い(=分子量が小さい、軽い)順に石油ガス、ナフサ、灯油、軽油とその残りに分かれます。 ちなみにおなじみガソリンは、このナフサ、灯油、軽油を燃料として使いやすい分子量になるように混合したもので、 石油精製で直接できるものではなかったりします。
残りカスは炭素や炭素を多く含む高分子量の油からなり、更に重油アスファルトとなります。
最近はこれらの残りカスを更に水素と反応させて分子量の小さいナフサや灯油、軽油などを搾り取る技術も発達して ガソリンがたくさん作れるようになりました。

以前はこれらの石油製品、特に重油は硫黄を含んでいて大気汚染を引き起こしていましたが 硫黄を取り除く方法も開発され(脱硫)、石油精製の過程で硫黄(硫酸)がたくさんできるようになりました。
これで国内の硫黄鉱山が壊滅的な打撃を受けることになるわけですが…それはまた別のお話。

旧くは国内にたくさん存在した石油元売り各社がそれぞれ私有貨車として保有しており さまざまな会社のロゴが入ったタンク車がありました。 石油元売り各社は合併により集約され、また輸送もターミナル形式に変化するとともに 一部路線を除くと鉄道によるガソリン輸送そのものもなくなりつつあります。

Nゲージで製品化されてるのもほとんどがこれです。
タキ3000、タキ43000だけの時代が永らく続きましたが、 タキ35000、タキ9900なども発売されて主要な形式は揃うようになりました。

タキ3000

1947年より製造されている30t積みのガソリンタンク車。
全長14.3m。大枠の上に円柱形のタンクが載った典型的な形です。製造量数は1594両だそうです。

Nゲージ黎明期から販売されているKATOの単品。 当初は社名板がシールで付属していました。この車両も30年以上前に購入したものです。。。

ジオマトリックスの「昭和石油」のインレタを貼り付けました。 昭和石油は1985年にシェル石油と合併して昭和シェル石油となり、その昭和シェル石油も社名としては 2020年に消えてしましました。 現在は出光興産になっています。

カプラーはかもめナックルを後ろにオフセットして取り付け。 センターピン式の台車はパイプ + ビス止めにしてガタをなくしてあります。

三菱石油。 三菱石油は合併を経てENEOSになってます。 油槽所は根岸線沿線、前橋、宇都宮など関東一円にあったようですので西日本では見なかったのかもしれません。

模型はもとがのっぺらぼう(シールは付属してますが…)ですので、 こちらもジオマトリックスのインレタを貼り付けています。

模型はもとがのっぺらぼう(シールは付属してますが…)ですので、 こちらもジオマトリックスのインレタを貼り付けています。

カプラーをかもめナックルにして、連結面間隔を詰めています。 ほかの貨車と共通の加工ですが、車間短縮ナックルだとばねで連結面間隔が不安定というか、 推進や下り坂で接触しそうなのでこちらになってます。

この手すりと連結面が組み合わさったごちゃごちゃ感が貨車っぽくて好きなのです。

タキ9900

1962年~の製造された35t積みのガソリンタンク車で、 製造両数は546両です。
全長13.3mと積載量を増やしながらタキ3000よりも短くなりました。 所有者が車庫を作る必要がある私有貨車では、長さが短いことが超重要です。 積載量を増やすためフレームレス構造とし異径胴をとなっており、 中心がオフセットした円柱が斜円錐でつながった形状。展開図を想像すると楽しい感じですね。

タキ9900がガソリン専用なのに対し、同じ設計で石油類(除ガソリン)用のタンク車としてタキ9800があります。 石油類(除ガソリン)ですが、要するに重油を運びます。 比重が重いため車体は短くなり12.0m。温度が下がると粘性が高くなるC重油の荷役用に蒸気を通すための 加熱管とその点検蓋を装備します。

この対応関係と同じようにタキ3000形に対してタキ2100、タキ35000に対してタキ45000と ガソリンタンク車に対応する石油類(除ガソリン)用のタンク車があります。 なお、タキ9900のほうはガソリン専用になってますが灯油や軽油も運べるので、 これら透明な石油はガソリン専用のほうで運ぶのが一般的なんだそうな。

タキ9800の製造両数は496両とです。当時は重油運搬の需要は結構多かったのですね。 石油類(除ガソリン)タンク車のほうはNゲージではかなり不遇でまったく模型化されません。 タキ9800はタキ9900の車体を短縮すれば作れるので(フレームレスなので楽です)、そのうちチャレンジしたいなぁ。 トミックスの16番のキットは、車体を切り詰めることでタキ9800が作れるようになっていました。

NゲージではKATOから発売されています。 当初は日本石油輸送でしたが、のちに日本石油のものも発売されました。

無塗装になってるドーム周りとはしご・デッキ周辺・台車を塗装し、ブレーキ関連に白をさしました。 あと、カプラー交換はやってます。

タキ9900の太ったおなか、が目立つアングルで撮ってみました。 タキ35000との混結もいい感じになるかと思います。

タキ35000

タキ9900に続き、1966年より製造された35t積みのタンク車。 製造量数は1108両。 フレームが傷むとタンク体ごと交換になってしまったり、 そもそも製造が難しいフレームレス構造をやめて葉巻型のタンクをフレームに載せるスタイルになりました。

全長は12.6mとタキ9900よりも更に短くなりました。 全長を短くするため、ブレーキは車端部のハンドル式をやめて側ブレーキ式に。 車端部の張り出しはなんとそれぞれ150㎜と、まさに猫の額に。 側ブレーキは、その後のタキ43000とかではまたハンドル式に戻ってますから現場からはよっぽど評判が悪かったのでしょう。 無蓋車ならまだしも、バンプを駆け下りてくるガソリンを満載した50tのタンク車に飛び乗って 側ブレーキで制御するのはかなりやりにくかったのではと…。

35t積みだから35000, 30t積みだから3000, 43t積みだから43000と、タンク車の形式ってかなり安直な気がするんですが そんなもんなんですかね。

こちらもKATOから発売されているものです。 KATOに限らずタキ35000はぎりぎりまで実物が短縮されてるせいか模型も寸法がかなり厳しいようで デフォルメが行われています。 KATOのタキ35000もカプラーポケットの寸法の都合からか車端部の張り出しが長くデフォルメされており、 本物のぎりぎり感がありません。

デッキ手すりの取り付け部を切り離し、その手前のデッキの寸法を詰めています。 わずかに接着跡が残りますが、まぁ気になりません。

側面から。 詰まった連結面間隔がいい感じ、です。

台車。 デッキを短縮するとカプラーが派手に飛び出てしまうため、かもめナックルを使用して連結面間隔を詰めます。 タキ9900やホキ2500などはカプラースプリングを活かした状態で詰められるのですがタキ35000はそれでも飛び出してしまうため、 車輪ぎりぎりまでカプラーを下げたうえでt0.2プラ板でカプラースプリングの代わりにしてあります。 ナックルカプラー自体も根元で溶着してしまいました。これでも押し当てで連結はできます。

射出成型でタンクにくっついて表現されてる側ブレーキ用の手すりは、φ2.5のリン青銅線で。 カワイのやつとかはがんばって表現してくれてるやつですね。 調子にのって車端部のタンク手すりも別パーツ化しています。

手すりを付けるとタンクは分割できなくなるため、接着してしまいました。 オモリは封じこめになってますが、いまんとこ困ってません。

手すりを削り取ったので再塗装が必要となります。 標記類をマスキングしたうえで再塗装しました。 いつもはここで調色に苦労するところですが今回は黒で半光沢なので、さすがにガイアノーツのセミグロスブラックでドンピシャ。 気が楽です。 1両を残してナンバーも塗りつぶし、インレタで番号を変えておきました。

タキ25000

LPG(液化プロパンガス)輸送用の高圧タンク車です。 カセットコンロのボンベのでかいやつ、みたいな感じでしょうか。 1966年から製造され、製造量数は310両。

プロパンは加圧すると比較的容易に液化し、その圧力は温度にもよりますが7気圧~8気圧程度。 地方のターミナルからボンベに小分けにされて各家庭に配られるわけです。 液化プロパンガスの容器はねずみ色に塗らなければならなかったようで、貨車もねずみ色に塗られています。 お祭りの屋台にあるボンベと同じですね。

KATOの飯田線シリーズでED62とともに発売され、追って単品が出ています。 これは単品の日本石油輸送のロゴが入ったタイプ。 東北本線の有蓋車が連なる貨物列車で、ED71の後ろに2両ほどくっついてる写真をよく見かけます。 貨物列車に混ぜると存在感ばつぐん。

タム500

なんと1931年から1961年までの長きにわたり製造されたガソリン用2軸タンク車。 製造両数は621両。

KATOからC12やワ12000と同時に発売されました。 「燃32」の化成品分類番号の標記がついたのは1979年以降ですから、C12と組み合わせるならこの標記はないほうが… と思うのですが、DD16あたりと組み合わせるとよいのかもしれません。

ほぼどノーマルですが、カプラーポケットを後ろに下げて連結面間隔を短縮することだけやってます。 そのうち下まわりの塗装と側ブレーキの色入れは実施予定。