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「親切な女将(おかみ)の一人もいて、俺が仕事から疲れて帰ってくる。『お帰りなさい、疲れたでしょ?』。
そんな事を言ってくれりゃぁそれで十分よ。あっ、風呂はなくってもいいよ。俺銭湯大好きだからね。
『一っ風呂浴びてらっしゃいな。帰ってくるまでに晩御飯作っとくからね』。タオル、洗面器、
シャボン。『どうせあんた細かいお金持ってないんだろ?』。四十円ポンと貰って、『じゃあ行って
くるか』。『いってらっしゃい』。やがて俺は風呂へ行く。帰ってくる、晩メシになる。俺はね、
おかずなんか何だっていいな。どうせ家賃はたいした事ないんだからさ。そうねぇ、おつまみに
刺身一皿、煮しめにお吸い物、玉子焼きなんかちょっと付いてもいいし、おひたしなんかもあった
らいいなぁ。お銚子を三本ぐらいすっと飲む。昼間の疲れでついウトウトする。女将(おかみ)が
スッとそれを見て、『櫻、枕を持ってっておやり。ついでにお腰も揉んでやったらいいんじゃ
ないかい?』、ってね。あ、"櫻"ってのは下宿の娘よ。ん? どうしたんだ、その面は」
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