「男はつらいよ」独尊論/第1作「男はつらいよ」
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作品データ
監督/助監督山田洋次/大嶺俊順
脚本山田洋次、森崎東
ロケ地京都、奈良
公開日1969年(昭和44年)8月27日
上映時間91分
動員数54万3000人
配収1億1000万円
主な世相・アポロ11号が月面着陸成功
・東大安田講堂が落城
キャスト
マドンナ光本幸子(御前様の娘/坪内冬子)
主な出演・志村 喬(博の父/諏訪飃一郎)
・津坂匡章(寅次郎の舎弟/登)


寅次郎を巡る主な出来事

・ 寅次郎が20年ぶりに生まれ故郷の葛飾柴又に舞い戻る。
・ 妹のさくらが博と結婚。長男を出産して満男と命名。(顔が寅次郎に似ている)
・ 御前様の娘(冬子)への恋愛に失敗し、また旅に出る。

◇ ◇ ◇

ストーリー

渡世人となった寅次郎が20年ぶりに生まれ故郷の葛飾柴又に帰ってきた。ビックリしながらも 寅次郎を暖かく迎えるおいちゃん、おばちゃん、妹のさくら。まさに衝撃的な再会である。 帰ってきて早々、二日酔いのおいちゃんの代わりに妹さくらのお見合いに出席する事になった寅次郎だが、 酒が入ると普段の性格を隠せずお見合いをメチャクチャな結果にしてしまった。 さらに寅次郎は舎弟の登をとらやに居候させるなどの身勝手な事をし、挙句の果てには文句を言うさくらの顔を張り 倒すなどしてヤクザな兄貴ぶりを発揮した。これにはおいちゃんも我慢ならずに大激怒してしまい、寅次郎と大喧嘩 する事となった。さすがに悪いと感じた寅次郎は、翌朝さくらに置き手紙 を残して家を出たのであった。

その後寅次郎は、旅先の奈良で旅行に来ていた柴又帝釈天の住職(通称「御前様」)と娘の冬子(光本幸子)に偶然 ばったり会い、三人で柴又までいっしょに帰って来る事となった。冬子に惚れてしまった寅次郎は、その日からほとんど 毎日のように冬子に会いに行く事になる。 そんな時、とらやの裏の印刷会社の職工達が妹さくらを狙っていると感じた寅次郎は、 「妹は大学出の男に嫁にやるからお前達は近づくな」と乱暴に言って聞かせた。職工の中で頭的な 存在である博は、職工を代表して「どうして大学出の男にしかさくらはやれないのか」と寅次郎に 食って掛かった。

博がさくらに惚れてるとわかった寅次郎は、それなら間を取り持ってやると いう流れに展開した。 しかしいい加減な寅次郎は、さくらに博の気持ちをきちんと伝えもせず、 全然ダメだったから諦めるように、などと博に説明してしまった。それを聞いた博は完全に落ち 込んでしまい、工場を辞めて出て行く決心をした。その気持ちを涙ながらにさくらに話して工場を出て行く博で あったが、博に好意を寄せていたさくらは博の後を追い、結果的に二人は結婚する事となった。 まさに雨降って地固まるとはこの事である。

寅次郎は相変わらず冬子のところへ通っているが、ある日魚釣りにいっしょに行く約束をした冬子の ところに男の客が来ているのを見てしまった。御前様から「これから親戚になる男」と説明され、 がっかり落ち込んでしまう寅次郎。冬子への想いはあっさり片想いとなり、旅に出て行く結末となるのであった。

◇ ◇ ◇

見所と独尊的論評

私が初めて第1作のビデオを見たのは「男はつらいよ」を観賞する様になって随分経ってからの事 である。以前の私は20作目あたりからの後半作品が自分のフィーリングに合っていると勝手に思い 込み、初期の作品をほとんど見る事がなかった。しかしある時期からこの映画を正しく知る為にはやはり 最初の作品から見た方が良いのではないかと思い、そこで初めて第1作を見る事となったのである。初めて 第1作を見た時は興奮のあまり日に何度も見た記憶がある。この作品は私に強烈な印象を与え、その瞬間から 私は「男はつらいよ」の完全な虜になってしまった。

見所としては、まず冒頭で流れる渥美清さんのナレーションである。「桜が、咲いております。懐かしい、葛飾の 桜が今年も咲いております」というセリフで始まるこのナレーションは、20年ぶりに帰ってきた故郷と家族への 思いがモノクロの柴又界隈の絵を背景に実にうまく表現されている。私はこのナレーションを聞く事により、 今まで見てきた「男はつらいよ」の記憶の点が一本の線に繋がり、同時に震える程の感激が全身を走った。

主題歌が流れている間のオープニングの場面では、チェックの背広とネクタイ姿にゴルフシューズの様な靴を履いた 寅次郎が江戸川土手に現れる。これも私にとっては見所の一つである。櫻との再会シーン、櫻を巡っての博とのぶつかり 合い、おいちゃんのゲンコツ、登の登場、そして博の両親が出席する博と櫻の結婚式。これらはどれを取っても印象に残る強烈な シーンである。また、寅次郎の地元テキ屋衆へのアイツキ仁義の口上シーンでは一通りの口上が入って おり、これもなかなかの名場面と言える。

笑える場面としては櫻のお見合いシーンである。このシーンでは酔った寅次郎がとてもお見合いの場 とは思えない様な話をしてしまい、結果的にお見合いをメチャクチャにしてしまう。このシーンは笑える と同時に何故かハラハラしてしまうシーンでもある。マドンナ冬子に会いに行くシーンも結構笑える。この シーンでは寅次郎が真っ黒なサングラスをかけ、とらやのみんなに言い訳をしながら冬子に会いに行こうとする。 しかしとらやを出る時に家族に言われる一言で下心を見破られたような気持ちになり、すぐに店に引き返しては みんなに食って掛かり、それを何度も繰り返す場面が実におかしい。

「男はつらいよ」第1作は大変見応えのあるパワフルな作品である。様々なシーンに細かい配慮がなされており、 山田洋次監督の熱意がうかがえる。内容の凝縮されたストーリーが早いテンポで切り替わり、以後の作品のシナリオ の原点となる演出が至るところに見られる。 第1作から最後の48作までの27年間に、時代や社会情勢、またはあらゆる価値観等が大きく変化しており、 各作品の観点がそれに合わせて少しずつ変わってくるのは仕方がない事だと思う。しかし「とらや」(後半「くるまや」) を取巻く面々と、車寅次郎の生き様や物の考え方は全作品を通して基本的に変わっておらず、第1作を見る事により その事があらためて認識できる。何度見ても飽きる事がなく、逆に見る度に何か新しい発見がある点も全作品を通して の「男はつらいよ」の特徴である。



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