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私が初めて第1作のビデオを見たのは「男はつらいよ」を観賞する様になって随分経ってからの事
である。以前の私は20作目あたりからの後半作品が自分のフィーリングに合っていると勝手に思い
込み、初期の作品をほとんど見る事がなかった。しかしある時期からこの映画を正しく知る為にはやはり
最初の作品から見た方が良いのではないかと思い、そこで初めて第1作を見る事となったのである。初めて
第1作を見た時は興奮のあまり日に何度も見た記憶がある。この作品は私に強烈な印象を与え、その瞬間から
私は「男はつらいよ」の完全な虜になってしまった。
見所としては、まず冒頭で流れる渥美清さんのナレーションである。「桜が、咲いております。懐かしい、葛飾の
桜が今年も咲いております」というセリフで始まるこのナレーションは、20年ぶりに帰ってきた故郷と家族への
思いがモノクロの柴又界隈の絵を背景に実にうまく表現されている。私はこのナレーションを聞く事により、
今まで見てきた「男はつらいよ」の記憶の点が一本の線に繋がり、同時に震える程の感激が全身を走った。
主題歌が流れている間のオープニングの場面では、チェックの背広とネクタイ姿にゴルフシューズの様な靴を履いた
寅次郎が江戸川土手に現れる。これも私にとっては見所の一つである。櫻との再会シーン、櫻を巡っての博とのぶつかり
合い、おいちゃんのゲンコツ、登の登場、そして博の両親が出席する博と櫻の結婚式。これらはどれを取っても印象に残る強烈な
シーンである。また、寅次郎の地元テキ屋衆へのアイツキ仁義の口上シーンでは一通りの口上が入って
おり、これもなかなかの名場面と言える。
笑える場面としては櫻のお見合いシーンである。このシーンでは酔った寅次郎がとてもお見合いの場
とは思えない様な話をしてしまい、結果的にお見合いをメチャクチャにしてしまう。このシーンは笑える
と同時に何故かハラハラしてしまうシーンでもある。マドンナ冬子に会いに行くシーンも結構笑える。この
シーンでは寅次郎が真っ黒なサングラスをかけ、とらやのみんなに言い訳をしながら冬子に会いに行こうとする。
しかしとらやを出る時に家族に言われる一言で下心を見破られたような気持ちになり、すぐに店に引き返しては
みんなに食って掛かり、それを何度も繰り返す場面が実におかしい。
「男はつらいよ」第1作は大変見応えのあるパワフルな作品である。様々なシーンに細かい配慮がなされており、
山田洋次監督の熱意がうかがえる。内容の凝縮されたストーリーが早いテンポで切り替わり、以後の作品のシナリオ
の原点となる演出が至るところに見られる。
第1作から最後の48作までの27年間に、時代や社会情勢、またはあらゆる価値観等が大きく変化しており、
各作品の観点がそれに合わせて少しずつ変わってくるのは仕方がない事だと思う。しかし「とらや」(後半「くるまや」)
を取巻く面々と、車寅次郎の生き様や物の考え方は全作品を通して基本的に変わっておらず、第1作を見る事により
その事があらためて認識できる。何度見ても飽きる事がなく、逆に見る度に何か新しい発見がある点も全作品を通して
の「男はつらいよ」の特徴である。
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