首人形 特集
01. からくり人形(各地)
02. 芝居人形(各地)
03. 着せ替え人形(愛媛県・宮城県)
04. 風俗人形(その1)(各地)
05. 風俗人形(その2)(各地)
06. 風俗人形(その3)(香川県)
07. 干支の首人形(千葉県)
08. つまみ人形(新潟県)
09. 民話とお伽話(岩手県・香川県)
10. いちろんさん(静岡県)
01. からくり人形 (各地)



全国には楽しいからくり仕掛けの首人形がある。左から鳥取の要蔵でこ、熊本のおばけの金太(目繰り人形)、香川県琴平の金毘羅でこ(びっくりでこ)で、いずれも張子製。後ろの紐を引くと、うなずいたり舌を出したり目がひっくり返ったりする“ハイテク”玩具である。おばけの金太の高さ15cm(H16.5.22)

02. 芝居人形 (各地)



人形芝居の盛んだった土地には今も首人形が残っている。阿波浄瑠璃は徳島県内各地で興行されていたが、現在では一座しかない。忘れ去られようとしている伝統の文楽人形の頭(かしら)を郷土玩具として残そうとしたのが阿波木偶(でこ)人形である。粘土と竹べらから表情豊かな首人形が作り出される。写真左が鳴門市、右が徳島市製。また、佐渡(新潟県)にも金平人形、文弥人形などの民俗芸能があるが、のろま人形はおどけた内容に特徴がある芝居で、これを模した首人形が佐渡のろま(写真中)である。佐渡のろまの高さ11cm。(H16. 6.25)

03. 着せ替え人形(愛媛県・宮城県)



姉様遊び(着せ替え人形)用に作られた首人形の変り種として、松山の「鎧人形」と仙台の「おぼこ」を紹介する。左の鎧人形(道後でこ、武者人形とも呼ぶ)は、布と紙とで作られた華やかな衣装に土製の首を差し替えて遊ぶ。両手には竹串も付いており、操り人形のような動作もできる。一方、おぼことは仙台地方の方言で幼児の意。頭部は張子製で柄は木製だが、昔は柄が竹笛になっていたそうだ。おぼこの高さ19cm。(H16. 6.28)

04. 風俗人形(その1)(各地)



首人形を大別すると、@姉様遊び用の首人形、A芝居人形を玩具化した首人形、Bからくり仕掛けの首人形、C風俗を題材とした首人形に分けられるが、このうち最も多いのがCである。写真は左より高松(香川県)、別府温泉(大分県)、鞍馬(京都府)で、いずれも口碑、縁起、俗信祈願等に基づいて作られている。鞍馬首人形の顔2.5cm(H16. 7.25)

05. 風俗人形(その2)(各地)



左が春日部(埼玉県)、右手前が浜の市の一文人形(大分県)、後ろの獅子頭が薩摩首人形(鹿児島県)。首人形のほとんどは土製であり、手捻りで作られるが、薩摩首人形だけは紙塑(紙粘土)で出来ている。一文人形の顔5cm(H16. 7.25)

06. 風俗人形(その3)(香川県)



高松市郊外の屋島は源平の決戦が行われた舞台である。この首人形は、幾多ある源平合戦にまつわる物語から題材をとったもので、教経、義経、玉虫御前、那須与一、菊王丸、弁慶の6本。さて皆さん、どの人形が誰か分りますか?首人形の高さ16cm。(H16. 8.8)

07. 干支の首人形 (千葉県)



柏で作られる手捻りの「下総首人形」で、十二支が愛敬たっぷりに描かれている(高さ20cm)。ところで、十二支には郷土玩具の題材として人気のある動物とそうでもないものとがある。馬、牛、猿、犬、鶏などは前者で、蛇、竜、羊は後者であろう。蛇が好まれない理由は分かる。竜は空想上の動物、羊は元々わが国にはいない動物だから馴染みがない。しかし、同じく身近にいない動物でも虎は例外である。張子の虎は各地で見かけるし、国性爺(こくせんや)合戦の和藤内や虎退治の加藤清正と組にした節句人形など、虎玩具は全国的に多い。その理由を考証した本も出版されるほどである(1)(H16. 8.16)

08. つまみ人形 (新潟県)



佐渡は人形芝居の盛んな土地である。ここの首人形も始めは子供たち自身がこしらえる手作り玩具であった。見物した芝居の記憶に従い、粘土を丸めた頭に目鼻をつけて竹串にさし、新聞紙の着物を着せて出来上がる(2)。河原田(佐和田町)の首人形は作者の名をとり「佐与吉人形」、あるいは 「つまみ人形」(手捻り人形の意)と呼ばれ全国に迎えられたが、作者の死により戦前に廃絶した。左は二十数年前に地元の有志が復活したもの(馬の頭6cm)。右は最近羽茂町で作られている「つまみ人形」。(H16. 10.3

09. 民話とお伽話 (岩手県・香川県)



民話やおとぎ話を題材とした首人形。岩手県遠野の民話では鬼や妖怪、河童(かっぱ)や座敷わらし(座敷ぼっこ)が生き生きと語られる。座敷わらしは昔から旧家に住み着く精霊で、男の子か女の子か区別がつかないおかっぱ頭の童子の姿をしているという。座敷わらしが宿る家は富貴自在だが、一たびこの守り神に去られるとタチマチにして家は傾くのだ(遠野物語、第1720話)(3)。左が遠野の首人形で、張子製は珍しい(高さ10cm)。右はご存知「桃太郎」の登場人物(動物?)を表わした高松の首人形(高さ16cm)。桃をかたどった台座にさしてある。なぜ高松で桃太郎かというと、鬼が島(女木島)が高松市に編入したからである。(H16. 10.4)

10. いちろんさん (静岡県)



鎮西八郎為朝が伊豆大島に流されるにあたって清水港に逗留していたことから、土地の人々は強弓無双の為朝にあやかり子供が逞しく育つようにと、為朝に似せた首人形を神社に奉納するようになった。とりわけ市郎右衛門の作る首人形は為朝に良く似ていたので、「市郎右衛門のデクの坊(いちろんさんのでっころぼう)」と呼ばれて評判になった。現在もその末裔が首人形を作り続けているという。種類はすこぶる多く、武者ものをはじめ、奴、鬼、天狗、烏天狗、お多福、狐、猫、だるま、河童など50種以上もある。首の大きさ2〜3cm。(H16. 10.12)

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