群馬県の玩具
01. 豊岡のだるま(高崎市)
02. 豊岡の座禅だるま(高崎市)
03. 豊岡の招き猫(高崎市)
04. 山名八幡宮の虫切り獅子頭(高崎市)
05. 迦葉山の天狗面(沼田市)
06. 山精と山椒天狗(沼田市)
01. 豊岡のだるま(高崎市)



正月の6〜7日、高崎市郊外にある少林山達磨寺では関東名物・だるま市がひらかれ、境内は大勢の参拝客でごったがえす。ここでは、だるまは大いに値切って、言われた値段より安く買うのがコツである。豊岡でだるまが作られるようになったのは江戸中期、達磨寺の住職が自ら描いただるま絵を農民に与え、農閑期の副業にだるま作りを奨励してからといわれる。今や全国のだるまの8割がここで作られている。関東だるまの常で、豊岡だるまも目無しである。上州は有名な養蚕地だが、養蚕農家が七転び八起きにあやかり、蚕の起きが良くなるよう願っては片目(向かって右)に墨を入れ、蚕が良い繭を作ったときにもう一方にも墨を入れてお祝いをしたのが縁起だるまの始まりという。目を入れただるまの高さ12cm。(H18.9.4)

02. 豊岡の座禅だるま(高崎市)



達磨寺の住職が農民に与えただるま絵は達磨大師の坐像だったので、当初それを手本に作られただるまは“座禅だるま”だったといわれる。その後、縦長の“繭型だるま”を経て、次第に形が丸く起き上がりやすい現在のだるまの形になった。達磨寺境内にある「達磨堂」では縁起だるまの変遷を知ることが出来るほか、全国各地のだるまが集められていて興味深い。高さ22cm。(H18.9.4)

03. 豊岡の招き猫(高崎市)



どこかとぼけた味の招き猫。これもだるま市で売られ、農家では蚕室の鼠よけのまじないにする。商売繁盛のマスコットでもあるが、このように左手で福を招いている猫は水商売用だそうだ(1)。高さ17cm。H18.9.12)

04.山名八幡宮の虫切り獅子頭(高崎市)



帽子型をした張子製の獅子頭で、冠獅子とも呼ばれる。子供の頭に被ると腫れ物のまじないや虫切り(虫封じ)になるといわれている。虫とは“疳の虫、泣き虫、腹の虫”など医学でも分からない神経や気性の患いの原因とされるもの。特に生後半年から2歳くらいの子供に虫の患いが多いとされ、幼児の夜泣きに悩まされる若い親たちが求めて帰る。一緒に授与される虫切り太鼓(振り太鼓)とともに、泣く子をあやすおもちゃとしても実用的な縁起物である。高さ14cm。(H18.9.20)

05.迦葉山の天狗面(沼田市)




沼田市街の北方16kmにそびえる迦葉山(かしょうざん)は、密教の修験場として知られた霊峰である。山中の弥勒寺は室町時代中期に禅寺として中興された。その中興の祖、天巽(てんそん)に仕えた中峰(一説ではこちらを中興の祖とする)は修験に優れた尊者で、「我は迦葉、釈迦以前の仏陀の化身である。任務を終えた今後は昇天して大衆を苦しみから救うことにする」といって亡くなったが、そのあとには天狗の面が残ったという,。というわけで、中峰堂内には多くの天狗面が飾られているが、昭和14年と昭和46年にそれぞれ戦勝と交通安全を祈願して奉納された二体の大天狗面(顔の丈56m、鼻の高さ2.6m)は他を圧倒している。迦葉山参りでは、願をかける時に中峰堂から天狗面一つを借りて帰って家の神棚に祀り、願がかなったあかつきには、お礼参りのためにこれに新しい面を添えて寺に奉納する慣わしがある。なお、祈願成就の返納を倍返しにする風習は各地に残っている。お供えものも天狗のほか、狐(東京都)、牛(和歌山県、岡山県)、猿(和歌山県)、馬(岡山県)などさまざまである。面の丈20cm

06.山精と山椒天狗(沼田市)




上州の山間部落には、いたるところに“十二様”が祀られている。十二様は熊野の三山十二所権現に由来し、猟師や木こりら山で働くものたちの守護神として篤く信仰されていた。写真右は山精。しおりには、「山精とは十二様の御つかい番であるさまざまな動物を一つに表現したお守りで、猿にも見えれば、熊や狸にも見え、また河童やみみずくにも見えるところに面白味がある」とある。そもそも、山に入る人々が各自思い思いに彫り上げたお守りなので、山精に決まった姿があるわけではないが、今ではこの木彫人形が登山者のマスコットになっているという。写真左は山椒天狗(高さ14cm)。迦葉山弥勒寺の中峯尊者が天狗になった姿を、同じ作者が山椒に彫ったもの。鋭いノミの跡が見事である。(H18.10.15)

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