灯玩 特集
01. 新発田の金魚台輪(新潟県)
02. 三条の鯛車(新潟県)
03. 柳井の金魚提灯(山口県)
04. 出雲の蒸気船(島根県)
05. 山鹿の紙灯篭(熊本県)
06.
八戸のイカ提灯(青森県)
07. 弘前の扇燈篭(青森県)

01.新発田の金魚台輪(新潟県)



夏祭りに彩りを添えるのが灯篭や提灯。これらを郷土玩具化した“灯火玩具(灯玩)”と呼ばれる類が各地にある。青森県の金魚ねぶたや扇ねぷたはその代表といえるだろう。写真は新潟県新発田市の金魚台輪で、栞には「むかし竹細工師が子供達の夏の夜遊び玩具として考え出したもので、中にロウソクを灯し、台に紐をつけて引きながら夕方の町々を三々五々歩き回った。現在も新発田まつりには高さ2m以上の超大型金魚台輪数十台を大勢の子供達が引き出す大パレードが催されている」とある。高さ39cm。(H17.8.9)


02. 三条の鯛車(新潟県)



同じく新潟県は三条市の鯛車。同県にはほかに村上市や巻町にも鯛を題材にした灯玩があって、いずれも夏祭りを盛り上げる山車がモデルになっている。高さ60cm。(H17.8.9)

03. 柳井の金魚提灯(山口県)



明治の初め、柳井の織物職人が紙と竹の手細工に織物の染料を用いて作り始めたもの。青森の金魚ねぶたをヒントに創られたとも言われている。現在は柳井の対岸にある屋代島(大島町)で上領芳宏氏が製作している。床に臥したままの老作者に金魚提灯作りの手ほどきを受けたのは、氏が公務員を辞めた40歳ごろ。その後、独自に工夫を重ねて立派に復活させた。長さ27cm。(H17.8.9)

04. 出雲の蒸気船(島根県)



出雲大社の門前町、大社町では古くから精霊(しょうりょう)送りの夜に屋形舟をかたどった灯篭に灯を入れ、子供達が町じゅうを引いて歩いた。蒸気船の呼び名は中海と宍道湖を往復する蒸気船が現れた明治以降のこと。ロウソクの灯で屋形船の中の人影が映るような仕掛けになっている。高さ43cm。(H17.8.9)

05. 山鹿の紙灯篭(熊本県)



山鹿温泉で作られる灯篭は“骨無し燈篭”と呼ばれ、一切骨組みを使わず手漉きの紙と糊だけで神社仏閣、舟などの形を作り、中に点灯もできる極めて巧妙な細工物である。景行天皇行幸の折、霧が深かったので篝火(かがりび)をたいてお迎えしたのが始まりとされる。816日の大宮神社の祭礼に踊り手たちが頭に載せている灯籠は 金(かな)灯籠と呼ばれ、重さは生卵3個分しかないという。左の灯篭は小型で高さ20cm。右は灯篭祭の風景(山鹿市HPより許可され転載)。H17.8.9)

06. 八戸のイカ提灯(青森県)



東北新幹線の北の終着駅・八戸市は、イカ水揚げ日本一の町である。当然、町興しのポイントはイカ。新幹線の駅舎の隣にはイカ加工実演場を作り、観光客にもPRを図っている。イカを使ったお土産もするめを始めとして、一夜干し、塩辛、イカせんべい(イカ自体がせんべいになっている!)、それにイカ飯の駅弁と、実に多彩。ご当地ソングも「イカの街はちのへ」であった。そんな八戸に、ご覧のようなイカ提灯がお目見えしたのは当然であろう。しかし、どこかで見たことがある色と柄である。実は弘前市の金魚ねぷた(青森県の玩具10)の作者が八戸向けに作っているということであった。長さ38cm。(H19.2.24)

07. 弘前の扇燈篭(青森県)



津軽の七夕祭りと言えば“ねぶた(ねぷた)”である(青森県の玩具0910)。青森は人形ねぶた(組みねぶた)、弘前は扇ねぷたと形の違いはあるものの、昨今の観光化を反映していずれも大型化している。最近復活した五所川原の立ちねぶたなどは、5階建てビルに相当する巨大さで評判である。ねぶたの観光化は時代の流れで止むを得ないにしても、祭り本来の素朴さが失われつつあるのは少し残念な気がする。私が子供のころは金魚提灯や扇燈篭を持ちながら、ねぶたの後をのんびり行列して歩いたものだが、都会では大勢の跳ね人(はねと)に圧倒されてだろうか、そんな光景もあまり見られなくなった。しかし、今でも津軽各地には住民本位のねぶた祭りがまだ残っている。私が慣れ親しんだ深浦のねぶた(表紙08)もそんな一つだが、素朴な星祭りの雰囲気をいつまでも失わないで欲しい。写真は最近の扇燈篭で、金魚ねぷた(金魚提灯)と同じく観光土産用に吊り下げ式となっている。高さ45cm。(H20.7.10

当ホームページ内の写真、図、文章を無断で転載する事はご遠慮下さい。
著作権は佐藤研氏に所属します。