想定外Part1
東日本大震災が原因による津波被害、想定外と簡単に済ませていいものか?
福島第一原発の津波の想定は、何と5.7メートルであった。
実際には、その3倍の15メートルの津波が襲った。
筆者も犯人探しは好きではないが、やはり今後同様の問題が起こらないように、なぜ、こうした想定外が起きてしまったかを検証する必要は絶対にある。
まずは、東電は当然だし、政府や官僚も範疇に入る。
あと、原子力安全委員会と原子力安全・保安院はどうなのか、という問題がある。
原子力安全委員会は内閣府に所属し、保安院や文科省がきちんと役割を果たしているかを点検・確認している。元東京大学教授の斑目委員長ら5人の委員は、原子炉や放射線の専門家で、核燃料・廃棄物などの取り扱いや運転時の安全確保などに必要な規則の元となる方針を示す。今回の福島第一原発での事故では当初、「姿が見えない」と批判された。
もう一つの原子力安全・保安院は経済産業省に所属していて、西山審議官が毎日テレビで説明しているのが印象的だ。当初は名前が分からなかったが、途中から堂々と表示され始めた。原発が法令通りに安全を守っているかを点検し、指導するのが役目だ。原子力安全・保安院のホームページには、原子力安全委員会との役割分担として「ダブルチェック」をしているとの記述があったが、下手をするとどちらも相手をチェックできない状況におちいり、責任の所在がはっきりしないのではないか。
こう見ると、どちらに責任があるのか分かりづらいのだが、原発設計時の安全確保に責任があるのが、原子力安全委員会の方かと判断される。立地の安全性、原子炉・建屋の安全性、非常時の電源バックアップなどシステム設計全般に対する責任の所在は、この原子力安全委員会が担ってきたものと思われる。
この原子力安全委員会の元委員長がテレビや新聞のインタビューに出ていたのが印象的だ。なかなか出づらいだろうと思われる。2000〜2006年に委員長のポストについていたのが京大卒の松浦祥次郎氏だ。津波に対する基準が甘すぎたことを本人も認めていたのは正直で好感が持てたのだが、今回の津波に匹敵する津波が過去に起きていたことを警告する研究者がいることを最近になって知った、と答えていたのには正直驚いた。
絶対安全だという神話が、この程度の認識で委員長をしていた人が関わっていたことに筆舌に尽くせない憤りを感じる。ただ、この人一人に責任を背負ってもらおうなどとは思わない。東電の歴代社長にしたって、津波の想定を見直すチャンスを見逃していた。経済的な理由からなのだろうか?そして取り返しの付かない事態に陥ってしまった。
そして、原発を推進した政治家や官僚も、またその政治家を選び原発なしにはいられないほど電気を消費する我々一般人もすべてに責任があるのではないか。一体、東京を始め、関東で消費する電力を東北電力管内の福島で発電しているのはどうなのだろうか?
東日本大震災で巨大津波が発生したが、津波研究者が過去に起きた最大の津波を想定したシミュレーションを行い、その結果が出たときにあまりにも悲惨な結果だったので、そのままでは公表できなかったと述べていた。
平和に暮らしているときに、悲惨なシミュレーションを見せられても怒り出す人さえいる。当該研究者は結果をそのまま発表するべきであっただろうか。
難しい判断である。