イスラエルの場合

イスラエルでは、首相公選制を1996年から始める前は、日本と同じく議院内閣制であった。国会(定数120名)は、一院制で全国一区の完全比例代表選のみと日本とはかなり違った選挙制度である。小党が乱立し常に連立内閣を余儀なくされ、小党の要求に振り回される事態が続いて政局が不安定だったので、その打開のため首相公選制を導入することになった。他にも多くの理由はあるだろう。

 

そして、1996年(法案成立が1992年)から2001年まで首相公選制を導入していたが、公選で選ばれた最初の首相がネタニヤフである。その後、バラク、シャロンと続いた。こうして首相公選制が開始されたが、当初の導入目的とは異なり、国民は1人で2票を持ち、首相としては国益を尊重して投票し、国会議員としては地元への利益誘導を第一に選択するようになり、より小党が群雄割拠して政権運営が停滞した。本来二大政党制を目指し、小党を無くしていくのが目的であった。国会に内閣不信任決議の権限を与えたこともあって、政局が不安定になり、首相公選制は短期間で廃止された。

 

こうしてイスラエルで実施された首相公選制は失敗したが、だからといって首相公選制に大きな欠陥があるとも言えない。なぜならば、6年間でたった3回の公選制選挙を経験しただけであるし、さらに言うと、失敗の理由には制度上の問題や政局がらみの問題もある。日本で制度を工夫すれば、巧くいくかもしれない。どちらにしても、今よりは良い。ここが大事である。訳も分からずに決まってしまう今よりはいいはずだ。

しかし現在、首相公選制を世界中で採用している国がないのも事実だ。