日本の役割について


   F/1993-6-9

 今回は、日本の歴史を再度見直して日本の役割を考えてみたいと思います。

1.日本の歴史の特徴
 日本の歴史の軸は、文化の受け入れ期と文化の消化期の2つの時期が交互に 繰り返していることです。これにより、文化が発展してきたことは、すでに 書いたことですので、詳しいことは書かないことにします。

 取り入れた文化は、漢字・律令制・仏教・儒教、明治以降では工業化・ 議会制・QCや企業制度などです。
 この取り入れた文化は日本の文化になるとき、大きな変化が起こる。 この変化を詳細に見てみよう。

2.仏教伝来の歴史
 仏教は、インドから中国、そして日本と伝わってきた。この国々での 仏教のあり方を見て行くことにより、考え方の違いを考えてみたい。

 まず、インドである。インドの現状を見てもよくわかるが、インド人は、 論理的な議論が好きで仏教も多くの書物が書かれ、空論や色論、中論など 非常に論の組立が難しい。このいい例が『ミリンダ王の問い』である。 このため、インドでは仏教が議論倒れになり、広まらなかった。

 次に中国では、中国人は実際的な民族であるため、論理的な議論は なくなるが、規則面での整備と仏教の瞑想部分を分離して禅宗を起こした。 しかし、まだ難しいため、道教のように民衆に大きくは受け入れなかった。

 そして、日本では親鸞と日連により仏教を大衆化した。これは、簡単化・一般化 による。『南無阿観陀仏』と唱えれば、天国に行けると説いた。これにより、 大衆全てが理解できたため、仏教が日本の津々浦々まで普及できたのです。

 このように見ると日本はなにをやったのかがわかる。インドが特殊解として の仏教を作り、中国が一部解としての仏教を取り出し、そして日本で特殊解の 仏教を一般解の仏教にしている。

3.日米の違い
 アメリカのやっていることは、インドの仏教と同じで特殊解を作っている ことである。例えば、VTRの高級機を作ったのは、アメリカであり、 3000万円以上もしていた。非常に機器全体が複雑で特殊解的な考え方で できていた。このため この機器を使えたのは放送局など業務用のみでかつ 特殊な技術者が必要であった。
 これを一般解にして、大衆化したのが日本である。この過程は部品を 徹底的に少なくして、簡単化し必要な所だけを取り出す過程であった。 これは仏教の心髄を取り出して一般解にした日本仏教と同じ考え方である。
 この頃のアメリカは、より高いレベルの特殊解を繰り出してくるように 思う。このため、アメリカ国内の人間でも優秀な一部の人間にしかわからない ことになってしまっている。

 この例がソフトの世界で話題になっているオブジェクト指向という考え方で ある。そして、今回も日本は、アメリカのすべてのソフトハウスがオブジェクト 指向を行っているように宣伝して、今にもアメリカにソフトの世界は占有される ように言う。しかし、オブジェクト指向の調査をするとアメリカでも一部の 人しか利用していないのです。オブジェクト指向の技術の中心はいままで OSの中核部で利用していた制御割り込みの技術であり、OSの技術者でも よくわかっている人が少なかった技術であり、これをAPの世界に持ち込ん で来たのです。このためオブジェクト指向はOSや言語、DBなどの制御系 製品にまず取り入れられている。AP技術者に普及するのは当分先であろう。

 なぜ、アメリカはこのように考えるのであろうか?

4.アメリカの考え方
 この頃のアメリカを見ていると、今まで凡世界を目指していたアメリカが 自国の利益、言い替えれば自国のエゴを他国に押し付けるようになり、 自国中心主義になってしまった。このことはアメリカのエリートたちが ミーニズムという形で5・6年ぐらい前から自分のことしか考えなくなって いたことの発展系とも言える。

 エリートたちは、ある程度の能力のある人たちが、自分達エリートの提案した 理論を解って来るとより難しい理論、言い替えるとより高い特殊解を提案し、 自分達の権益を守ろうしているように思う。

 この理由は、日本がすぐにアメリカの提案する理論を高い金を出して 買おうをするためで、エリートの所得の保証ができるためである。よって、 どんどんむずかしい理論ができ、そして誰もわからないことになってきた。

 もう一つは、アメリカでは能力のばらつきが大きく、ソフトを作成するのは 一部の能力のある人たちの仕事であり、大衆のわかり易さを考えない傾向に ある。

5.日本の考え方
 日本では一般的な人のレベルがだいたい同じであり、そのレベルに物を 解り易く解説すれば、その理論自体の普及もできると思っている。 このため、凡化を最初から考える習慣がついている。このため、わからない ことは、その理論自体がまだ十分こなれていないと評価される。

この考え方が理論だけでなく、経営まで戦後定着し、日本的経営はすべての 従業員を同じに見て、会社の経営を知らせることや、経営に参加してもらう ことになったのである。このいい例が、TQC活動であろう。

 最近の日本はこの考え方を自然科学にまで応用して、いろいろ面白い発見 が出てきた。

6.今後の日本の役割
 いままでは、アメリカの役割はある事象を特殊解で説明すること。日本の 役割は、特殊解で解かれた理論や考え方を凡化・一般化する役割。
東南アジアは、一般化した製品の補給基地である。そして、世界がアジアの 製品を使うことになる。

 この流れは、アメリカ人は英語のみ、日本人は日本語と英語ができる。 アジア人は、日本語と英語の両方と自国語ができる。このため、このような 情報の流れになってきのでした。

 今後は、アメリカの研究レベルが低くなってきているため、新しい理論が でない可能性がある。このため、日本が最初から一般解で解り易い商品を 提案することとなるように考えられる。

(追記)
 日本が一般解になるのは、人類愛と2値論理(陰陽理論)である。式に すると、

    人類愛 + 2値論理 = 一般解

 この一般解は、分かりやすいので、信じるか信じないかや実行するかしないか というようにラジカル性を元々持っている。日連宗や浄土真宗の一向一揆など がいい例である。
アメリカが特殊解になるのは、エゴと多値論理である。式にすると、

    エゴ + 多値論理 = 特殊解

 この特殊解は、わかるかわからないかで、わかる奴が少ないほどいいと いう特徴を持つ。あまりわかり過ぎるとエリートの権益が守れない。
このため、態度はやさしい。わからなくてもいいですよ。誰もわからないの だからとエリート氏は言う。このため、日本人は、アメリカの論理はやさしい のに、日本の論理はラジカルであると言うが、これは一般解か特殊解の違いに よる。

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