戦後50年戦略の転換期

TT/1998-10

1.現在日本の認識
 日本は、戦後50年にして、吉田茂首相の立てた「富国廃兵」戦略を見事 達成し、世界第2位の経済大国かつ世界最大の債権国になり、米国の世界最大 の経済大国であるが世界最大の債務国より経済上では上と言えるほどになった のです。この戦略をまず検証してみたいと思います。

2.戦前までの戦略
 日本の歴史を見ると、明治維新に「富国強兵」を目指し、八幡製鉄などの 工業を起こし、かつ英・独流の海・陸軍を作り、西洋先進国家に追いつこう と努力して、その結果、日清戦争でアジアの中では、日本が盟主であると アジア民族に知らしめ、そして、日露戦争で、世界にアジア地域の リージョナルパワーと認めさせたのでした。
しかし、明治後半・大正時代の日本のパワーは、アジアのリージョナルパワー と認められる程度で、世界的な脅威ではなかったのです。
この頃の日本の実力は「中国中兵」であったのでした。 (富国でもなく、強兵でもない程度の国)
  次の日本の戦略を昭和初期に「中国強兵」に無意識にしたようです。
なぜかというと、一層の経済発展をするためには、大正デモクラシーなど 日本の政体をより民主的にする必要があったのですが、世界大恐慌で国民層 が貧困化したことと、より一層の経済発達のためには生存圏の確保が必要と 叫ばれ、目を外に向けいくことになって民主化は不徹底になり、民間自由経済 より官僚統制経済という国家管理の軍事優先になっていくのです。
この傾向は日中戦争で加速し、太平洋戦争まで続き、戦後は「富国」達成 のための統制経済を最近まで続けてきたのでした。
 どちらにしても、「中国強兵」日本は、「富国中兵」米国に圧倒的な 経済力消耗戦で負け、昭和初期に無意識に立てた国家戦略が失敗であった ことを証明したのでした。

3.戦後の戦略と結果
 このため、戦後米国は、自国を強兵化するとともに、強兵国日本を弱兵化 するために、精神部分から駄目にする政策をとり、日本の武士道・神道の 教育禁止、国家権力は悪との教育をして、国民に愛国心を持たせないよう にしたのでした。
 その上、兵力保持を禁止した平和憲法までGHQは日本に押し付けた のです。
 このため、独立後も米国の監視下にある日本の吉田茂首相は、戦後の戦略 として「富国廃兵」を取るしか方法がなかったのです。
そして、日本はこの戦略を見事達成して、ODAや国連負担金等の 世界貢献度では、米国を抜いて、日本の存在は大きいのですが、世界、 特に欧米諸国では、日本の国家観・歴史観が世界の常識と大きく違い、 違和感を感じているようなのです。それは、日本の中核に位置する内閣の 大臣たちや大会社の幹部層が平気で「日本が悪い」と言うことです。
これの原因は、日本の教育が他の世界と違い、国の誇りや愛国心の教育が されていないためです。そして、この教育を受けた中高年層が大臣や社長に なってきたためです。

4.今後の戦略について
 今後の日本を考えると、この問題を抜きには考えられないのです。日本の 戦後戦略である「富国廃兵」を継続しようと考えても、日本人が信用されない と、世界との取引がうまくいかなくなり、「富国」を実現できなくなって くるのです。
このためにも、日本の小中高校の歴史教育を見直し、正常な国家観、歴史観 を教え、日本人が正常な感覚を取り戻して、世界的に尊敬される必要が あるのです。
 欧米諸国が、不況対策を望んでいると言っているが、本当の所、 日本に要求しているのは、日本人の国家運営や歴史観を世界の常識に合わせて ほしいと言っているのです。
 そう考えないと、米国が中国をアジアの盟主であるとは考えないはずなのです。 中国は日本の5分1以下の経済ですから。
 もう1つ大きな問題として、私は「富国廃兵」戦略の転換期であると思う のです。
これは、戦略の行きずまり感があるためと、2番目には、世界最大の債務国 である米国の没落が近いと感じるためです。
 現在「富国強兵」米国が世界の警察であって、この利益を日本は受けて きたのです。
しかし、この米国が世界の警察でなくなった時、誰が世界の調停をする のでしょうか?
 戦後50年日本の「廃兵」平和憲法の理念は、世界平和であり、この世界 平和を守る中心が国連であったはずです。この国連の維持管理には、 多額の費用と平和を創造する軍隊などの労力が必要なのです。
 この国連平和の負担を米国が放棄したとき、ドイツと日本しかこの費用 と労力を負担できないのです。「富国強兵」米国の替わりをしようとすると、 次の日本戦略は「富国弱兵」できれば「富国強兵」と明治維新に目指した 戦略の実現が必要になってくるのです。
 結論として、戦後50年は、戦後立てた「富国廃兵」戦略が大成功 であったが、今この戦略継続に問題があり、「富国強兵」戦略に変更が 必要になってきたのです。

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