台北事情


   YT/1999-7-18
  今中国と台湾の両岸関係が悪化しようとしている台北の事情を
報告します。

1.日本・中国・韓国・台湾の4国比較
 GNPは、日本500兆円、中国90兆円、韓国50兆円、台湾
25兆円で台湾は日本の20分の1の経済規模。しかし、人口は、
日本1.2億人、中国12億人、韓国0.4億人、台湾0.2億人
である。台湾は日本の6分の1の人口。よって、台湾の1人当たり
のGNPでは、日本の3分の1程度、韓国と同程度、中国は50分
の1でダントツに低い。

 台北は、260万人と台湾の人口の10%、東京は1100万人
と日本の人口の10%と同じ。ソウルは1000万人と韓国の人口
の25%が集中。しかし、この台湾がアジア危機を1人無傷で乗り
越えたのです。この秘密を探りに台北に飛んだ。

2.1960年代の東京=台北
 台北の街は、到る所で工事、工事である。日本のように工事を見
えないようにする囲いをしないため、工事の様子がよく見える。

 丸で東京オリンピック前夜の工事・工事の東京のようだ。この熱
気は大変なものである。この国内景気がアジア危機を無傷で乗り越
えた秘密なのであろう。

 我々は、中山の新光三越デパートの前のホテルに泊まったが、こ
の付近は東京でいえば銀座4丁目のこと。しかし、この地点でもメ
イン道路から1歩裏道路に入ると整備されていない田舎の道のよう
である。

 反対に、MRT地下鉄が1年前から1部完成して運行を開始して
いるが、この駅が非常にモダンにできていて超近代的である。高速
道路も整備されているが、46Fの新光摩天楼しか高いビルはない
し、夜のネオンも全体的に少ない。この面も60年代東京のように
新しいものと古いものが混在した状態になっている。

  道路は米国と同じ左ハンドルで右側通行、街はバイクが多い。駐
車場がないのと一般庶民では車を購入できる所得レベルにないので
あろう。北京の自転車が台北ではバイクになっている。

3.自由化のレベルと価格
 台湾では、日本にない果実が多い。スターフルーツや偏平な桃な
ど日本には輸入されていない果実がある。台湾は農業保護があまり
されていないように感じる。自由化が徹底している。家電製品の種
類も豊富なように感じる。

 日本も早く生産者保護行政から消費者優先行政にして、果実の輸
入を自由化してほしい。日本より台湾の方がOPENである。台湾
は電子産業で国を立てる戦略で、農業は自由化しているのであろう。
日本も国家戦略を明確化しないと、不況から脱出できないのではな
いか。自由化のレベルからすると日本より進んでいる。北京が一番
規制され、次にソウル、東京で一番自由化がされているのが台北で
あろう。

 今回は個人旅行なので、ビジネス面は分からなかったが、服や家
電等の値段は日本と比べて同じか高い。果実類や食料品、交通費は
日本より安いが。
 このため、買う物がない。要注意。
 そして、町中では、日式、中式、欧式、韓式と4つの様式を自由
に組み合わせている。コンビニ、マクドナルドやドドールのような
喫茶店も発達している。このため、日本の古い町にいる感じで過ご
せる。最初は香料の臭いや漢字が気になったが、違和感が2日目か
らなくなった。若者の服装も日本と同じである。

4.中国・日本と台湾
 台湾の人は、家庭で台湾語(福建語に近い)、学校で中国語(北
京語)、第1外国語として小学校から英語教育を9月から開始する。

 しかし、ホテルや店では、日本語を使う機会が多いようである。
欧米人を台北の街で見かけなかった。日本人の方が圧倒的に多い。
このため、英語教育が長いのに効果は出ていないとのこと。町中で
は、日系企業が進出しているため、日本語の文字が多いが、台湾の
人は60才以下の人ではほとんど日本語ができない。英語は少しで
きるため、会話は英語の方がいい。それと、筆談。
それで、まあなんとか通じるようである。

 しかし、台湾語、中国語、英語の3言語を話さないと台湾では
いい職業につけない。政府や企業の上層部は中国語が母国語である
外省人がまだ多いみたいである。
台湾の人は、中国語が日常語でないためハンデがある。

 外省人の上層部師弟は米国留学で英語を話せるようにするとのこ
と。ガイドさんは、日本語、英語、中国語の3語を自由に使ってい
た。このガイドさんは、米国、日本の2つの大学に留学して、日本
語、英語をマスタしたとのこと。

5.日本のプレゼンス
 帰りのJAAのスチワーデスと話したが、台北線の乗客の半分以
上が台湾の人で日本人より多い。そう言えば、行きの飛行機でも成
田で、東京デズニーランド帰りの台湾の団体旅行客が大勢いた。
また、学校は9月が新学期で7月に入ると学校は休みのため、子供
も非常に多かった。

 このため、JAAのスチワーデスの半分以上台湾の人を採用して
いるとのこと。また、関西−台北−香港線の台北−香港間は台湾の
客ばかりで日本人はほとんどいない。
 このことは、台湾の人は豊かで海外旅行、特に日本への旅行が多
いことを表しているのです。

 CATVのチャネルは100chぐらいあり、日本語チャネルが2
つある。1つがNHKで、もつ1つが民放の番組をやっている。
 街の中で日本語の歌が聞こえ、トヨタ・ホンダ・マツダがあり、
花王・資生堂などの商品もある。デパートではそごう、三越、高島
屋などがある。
 日本料理の店は、非常に多い。ほとんど台湾人経営で客も台湾人
である。

6.中国との関係
 1949年に中華民国国民党が台湾を支配してから50年、1つ
の時代が過ぎ、次の時代になる鼓動が聞こえてきている。4年前、
選挙で李登輝総統を選出して、台湾は台湾人による台湾のための政
府になったはずです。このため、中国の主張「台湾は中国の1部」
とはかけ離れることになった。

 また、中国は武力による台湾解放もあり得ると言っている。この
ことでは、米国・日本は台湾の地位保全に協同で取り組む必要が出
てきている。
 中国の領土拡張主義は、世界で一番危険な思想である。今はなる
べく人種毎に独立させ、その地域全体で経済共同体や政治共同体を
作る方向にある。

 この世界秩序の基盤とは違う動きを中国は取っているため、違和
感がある。台湾は日本や米国を含めた世界秩序の体系の中にいる。
このため、米国主導の世界秩序体系の国と中国・ロシアやイスラム
諸国など非世界秩序体系の国に分裂してきた。

 このため、第7艦隊は、仮想敵国を中国にしたようだ。台湾の争
奪戦がその最前線ということか?今度の総統選挙の時期が危ないと
思う。中国がどうでるか。
日本企業は早く中国から撤退した方がいいと思う。日本と中国とは
敵になる可能性が高くなってきた。中国対米国の世界秩序軸がだん
だん明確になってきている。自由主義対反自由主義の戦いである。
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