今後、どの戦略構想を選択するか?


   F/1999-9-04

  戦後、冷戦体制のトルーマン・ドクトリンが、ソ連崩壊まで 40年間続いた。しかし、その後これに匹敵するような戦略構想が 日の目を見ずにいる。状況証拠や今までの米国のやり方から類推する ことで、米国の戦略を推し量るしかない。
  米国は世界を3分割しているのは明確であるが、戦略構想の ような政策レベルまでは明確ではない。それに、欧州は、世界市場 で日米に挟み撃ちにあっているため、ニッチを探している。日米の 戦略構想を明確化すると、欧州はその隙間を狙ってくるため、 もし戦略確定していても明確化はできない。
  日米欧3者が同一の戦略目標を持つことが必要であるが、 そこに至っていない。中国・ロシアの扱い方、中間的な国々の 扱い方等である。
  このため、いろいろな戦略構想がいろいろな国や指導者から 提案される状況になっている。これをみてみよう。

1.米国サイドの戦略
  クリントンの戦略は、中国と友好関係を築き、日本を制御する ことがいいと思っている。クリントンが選出された時は、日本の 絶頂期であり、この日本を倒すことにクリントン政権の前半は 邁進したのですから当たり前です。
  しかし、共和党ブッシュJrの戦略は、日本と友好関係を築き、 中国のアジア拡大を制御することが必要と考えている。これは、 日本が現時点弱いし、今後も制御可能であると考えているためで、 それより、中国の軍備拡大よる東南アジアの危機がより大変である と考えている。
  ここの点が次回大統領選挙の争点のはずであった。
しかし、ゴア候補もどうも共和党と同意見のような印象を受ける。 このため、クリントン大統領も積極的にゴアを援助していない。 気になる点である。

2.欧州サイドの戦略
  ここが難しい。英国と仏独国の思惑が一致していないように 見える。英国は米国と連携する動きをするが、独仏国は日本と連携 し、英米国の動きを止めようとする。特に仏国は日本との連携を望 んでいるようだ。独仏の2ケ国連合でEUを運営する意向であるので ここは亀裂が入らないと思うが、英国と仏独国の関係は?。

3.マハティールの戦略構想
  マハティールの構想は欧米と対抗する東アジア共同体を構築 することである。日本はこの構想を拒否しているが、中国は 米国との関係が冷たくなると、乗る可能性がある。そうすると、 日本はアジアをとるか欧米をとるかの選択を迫られる。 しかし、この構想は東南アジア諸国も中国の軍備拡大がある限り 乗らないと思う。このため、集団安全保障会議の形にして 中国を一方で押せ込むことが必要であろう。

4.リークワンユの戦略構想
  シンガポールは中国人の割合が高いため、華人連合を提唱したが 中国と台湾の関係がおかしくなって、一時後退した印象を 受ける。現在は、香港市場からシンガポール市場への資金移動を すすめているために欧米金融資本の連携して自由化・グローバル化を 推進している。

5.中国サイドの戦略
  軍部と経済官僚では、方向が違う印象を受ける。 軍部は米国など自由主義国と対決が必要と考えているが、 朱首相は、米国連携を重要視していた。しかし、このままでは 軍部が再度勢力を盛り返して、逆コースに行く可能性もあると 思う。

6.日本の戦略
  日米が基本、仏国と日本は一部連携して動くこともある。携帯 電話の基準でW−CDMAになったのが良い例である。
  日米以外、日本は外交目標が明確でない。このため、外交的には 米国の属国のような印象を受けてしまう。独自外交はうまくいって いない。ロシア関係はIMFでさえお手上げになっている。この ロシアをどう助けるか提案しないと、北方4島は返還されない。 逆に、日本がロシアの混乱を止める資金を援助するといえば 返還は可能である。しかし、その資金は300億ドル以上で かつ、ロシアは継続的援助を要求するはず。
  日本は北方4島とこの資金を引き替えるか国内の世論に 問う必要がある。
  中国の対応も米国の戦略が決まらないため、どうしていいか わからないのが現状であろう。

日本、米国、欧州の三者間駆け引きとアジアでの中国、日本,ASEAN の三者間駆け引きの動向から目を離してはいけないようです。


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