世界の動向と今後のあり方


   F/1997-11-3

  今後世界がどうなるのかを日本の立場を離れて検討したいと、思います。 アジアの混乱や世界の同質化の進行などの問題も取り上げます。

1.世界の潮流
 CNNなどのマスメディアに代表されるように、英語の文化圏が世界に 拡大して同質化を押し進めている。この中心にいるのがアメリカ報道機関で あり、かつアメリカ政府である。このアメリカが、人権外交等の新しい宣言 を1997年に打ち出していた。 この人権の宣言に逆らえる国は、中国を含め世界にはなくなっている。 中国は1997年、アメリカの企画した軍事包囲の体制を見て、とうとう 人権問題等で折れてしまった。
これで、アメリカと対決できる国は地球上ではなくなってしまったのです。
 アメリカの企画した軍事包囲体制は、まずロシアとの2国の軍事演習を 中央アジアで行い、その後カザフとの3軍合同演習を中国国境近くで行い、 それと同時に日米安保のガイドラインで日本自衛隊の協力体制を明確化した。
中国は危機感を募らせ、アメリカに全面的に妥協し、1997年江沢民 中国国家主席がアメリカを訪問し、軍事包囲を解いてくれと交渉したので した。
 これにより、世界の歴史上初めてアメリカの一強国世界体制になり、 その強引な外交を進めることができることになったのです。
 この後、アメリカは、ユーゴ戦争で中国大使館誤爆をして、中国との関係が 冷えるかと思ったが、現在でも米中関係に変更はないようです。

2.アメリカの原理
 アメリカの原理には、旧ソ連の共産主義と同じような理念があるように 思われる。
この理念の根本に位置しているのが、理想的な社会を人為的に作ることが できるという社会実験主義であろう。なぜ、アメリカはこのようなことが できるかというと、アメリカを構成する人のほとんどが移民であり、かつ 元の国で迫害を受けきたため、構成員すべてに対して平等な理想的な社会を 作るというスローガンが受け入れられたからと、伝統がそれぞれ違うため、 理念しか共通的に連帯できるものがなかったためであると考えられる。

 この社会実験主義を言い始めたのは、フランス革命で博愛・平等・自由の 3つの理念をかかげて革命を実施したが、フランス自体は、保守派の巻き返し と、実験主義自体の失敗により、伝統文化主義へ戻っている。 このフランス革命の理念を引き継いだのがアメリカであった。フランス革命で の失敗は、理念上、人間を性善説に見ることになっているためです。 ところが、実際の人間には、権力欲やいろいろな欲望があり、この理念上 定義した人間とは、大幅に違うことになったのです。 例えば、死刑を廃止したため、逆に凶悪犯罪が激増して、刑務所が 足りないとか、権力闘争が多くなり、テロ事件が多発したなどです。
 当初はアメリカでも、黒人やインデアンには、人権を認めなかったのです が南北戦争後、黒人なども解放されて平等な権利があることになっている。 現在は、女性の権利も男性と平等化していることになっている。

3.伝統社会の原理
 アメリカやソ連のような人工国家と違い、ほとんどの国は、伝統的文化を 持っているので、アメリカのような理想主義的な理念で外交されると、 内政干渉と言いたくなる。
例えば、シンガポールのムチ打ち刑に対し、アメリカのマスコミは非人道的と 主張していたのです。
 伝統的社会の基準は、その社会特有な伝統的評価に照らして、善悪の判断 をしている。
例えば、女性の社会での位置は、伝統的社会では、子供を産み育てることが 1番の意義としているが、アメリカの主張は、このような女性観は女性に 対する差別であると言うのである。
 しかし、現在アメリカと戦える国はほとんどないし、アメリカの理念は 正義のように聞こえるため、アメリカに反撥しても世界の世論を味方に できないことになる。
そうすると経済規模の大きな国やアメリカからの援助を必要としている国は、 アメリカと事を構えなくなる。
 このアメリカに対して、反撥ができるのは北朝鮮やイラク・リビア ・キューバなど元社会主義国でかつ経済規模の小さい国のみである。 この1つの例をして、北朝鮮があるのですが、北朝鮮は苦悩しているはずです。 詳しくは、本コラム北朝鮮問題を参照のこと。現代コリア研究所も参照する ことを推奨します。

4.1998年アジア経済混乱の原因
 タイの通貨不安がおこりASEAN諸国の通貨の下落した。その次に、香港の 株暴落と世界の主要株式市場の混乱と、経済的混乱が続いているが、この 原因を探る。
 この最大の原因は、日本の円が79円/ドルから120円/ドルに下がった ことによる。このため、今までは韓国の造船が1番安かったが、1998年当時 日本の造船の方が安くなってしまったのです。この現状は自動車・家電製品 などASEAN諸国に日本が工場移転した製品にも同様なことが起きていた のです。

 日本は79円/ドルで生産しても、出来た製品が儲かるように完全自動化・ 合理化をしたため、現在の120円/ドルになると、大幅な値引きができる ことになり、韓国・ASEAN製品を価格面・品質面両面で圧倒してし まったのです。このため、韓国の起亜自動車がアメリカのフォード向け市場 で日本との価格戦争に負けて倒産してしまったのです。韓国の造船・家電も 元気がない。一方、日本の自動車・家電・造船は復活した。この後、 朝鮮のウオンの大幅下げで、現在は再度日本が苦しくなっている。 このため、日銀は円を1ドル=120円レートで固定しようとしている。
 今後、ロシア、東ヨーロッパや中南米などの社会が安定すれば、工業化し 始めているので、世界的な工業製品の競争が激化することは、確実である。 この時、如何に安くできるかより何を作るかの方が重要になる。

5.アメリカ経済の強さと今後について
 アメリカが1国指導体制を引き、世界を自分の理念で指導できるように なったので、アメリカの動向を見ないと今後の世界を占うことはできたい ことになったのです。
 今時点では政治的にはもちろん、経済的でもアメリカは他の国に比べ 圧倒的強い。この原因は、インターネットやIT技術の商品が近年大量に アメリカから出てきたためですが、この一連の技術も出尽くしたようです。 このため、日本・アメリカともパソコンが、一時のように売れなくなって しまっている。

 この次の技術を提案する時期で、まだその姿が見えないのです。このため、 アメリカの株価もそろそろレベルが上限で、今後下がる可能性が出てきて います。このアメリカで元気がいいのは、インターネットを用いたサービス業 です。たとえば、アマゾンなどのインターネット書店やインターネットを 用いた自動車などの販売です。このサービス業へのインターネットの適用 の基礎には、40%以上の家庭にインターネットが普及しているためと、 アメリカは国土が広く、自分のほしい物がなかなか買えないためです。

 1997・8年このアメリカで日立のバイポーラ半導体を使った大型計算機 がどんどん売れていた。
これは、IBMが計算機を安価にするため、CMOS半導体で大型計算機を 作ったが、この性能はバイポーラに比べて弱いため、好景気なアメリカの 計算機需要には、性能が高い日立製のマシンが必要になったためです。 やっと1999年IBMは、対応のマシンを出荷できるようになった。

6.アメリカの政治と今後について
 アメリカは、世界的な指導をできる存在であるが、この頃のアメリカの 外交政策には、一慣性がないように感じられる。国務省のオルブライト長官は、 アメリカの歴代国務長官に比べ政権内での重要性もないし、政策面でも重み がない。国防総省との意見調整ができていなかったり、商務省の意向で 突然政策が変更されたりと政策の構想が揺れ動くことが多いのです。中東の 平和交渉でも、アメリカの構想があって、それを基に議論するのではなく、 両方の主張を聞いて、2で割ったような案を出す交渉が中心であったよう に感じるのです。
 クリントン政権内で一番重みがあるのは、元ルービン財務長官であった。 政権としても、国内の経済重視をしているように思える。外交面はその次の 印象を受ける。
 中国の政策は、当初人権を全面に出して交渉していたのが、中国との ビジネスが拡大すると、人権より著作権などのビジネスに比重を移した 交渉になってきてしまった。このため、中国もアメリカとの関係正常化が できたとは思うが、外交交渉としては、原則が曲がってしまった印象を 受ける。

 アメリカは中南米への関与は大きいが、他地域への関与がだんだん少なく なっていくように思える。アメリカのGNPは世界の30%程度で世界全体 に関与できる金を持っていないのが現実なのです。北朝鮮の軽水炉原子力 発電所援助のKEDOで、始めは、アメリカが半分程度の資金を援助する ことになっていたが、現在は、日本と韓国で全額負担してほしいと、態度 を変えているのです。1998年ASEAN諸国の通貨危機でもアメリカ は一銭も資金援助せず、日本がタイ支援のため、資金援助をしたのでした。
 アメリカは、またロシアへの援助もほとんどをドイツからの援助で、 自分はロシア宇宙開発の資金援助しか出していないのです。そのドイツも 東ドイツ地域の復興資金やドイツ語圏のスロベニア援助が必要でロシアまで 手が回らないのです。 このため、ロシアは、苦悩して、どうにか資金を手に入れようと もがいているのです。今度ユーゴ戦争でのロシア軍の動きは、欧米への IMFに資金援助してもらおうとしてのアプールのように感じます。
 次に日本の資金を狙っていますから、注意が必要です。

7.中国の現状と今後
 中国は、世界最大の黒字国になる可能が出てきた。すでにアメリカの 貿易では、日本以上の黒字になり、主要諸国の貿易も今後日本の黒字より、 大きくなるはずです。
製品価格が同一の種類であると、もちろん、品質はよくありませんが、 30%程度安いのですから、発展途上国や先進諸国の低所得者層の需要を 中国が賄っているようです。
 中国が稼いだ金を軍備の近代化に使っているため、中国近隣諸国は 危機感を抱き、アジア地域での軍備拡張競争を引き起こしてしまったのです。 このアジア諸国の軍備は、アメリカとフランスからの輸入であるので、 欧米諸国は漁夫の利を得たような感じになっている。
 中国包囲網の形成は中国にとっては、2正面、3正面作戦をなるため、 アメリカの屈してでも、包囲網形成の中心のアメリカと関係改善をする 必要になったのです。
この行動は遠交近功の中国古来の兵法で説明できることです。
 この後、1999年の中国は、バブルの崩壊が起きて、中国国営工場が 倒産するなど、国の根幹が怪しくなってきている。

8.世界の今後の展望について
 世界が資本主義・自由市場経済となり、敵と味方の区別がつかない状態に なって、それぞれの国が国益中心で行動するため、世界の動向が大変 流動的になっている。
 アメリカの人権外交もある国には、人権といい、ある国では、 ビジネスのルールがおかしいと、アメリカの国益にあった言い方をしている。 また、突然ロシアのように日本との関係正常化を言い出したり、昨日までの 敵が突然味方になる可能性も出てきた。反対に中国のように、アメリカと 関係正常化をして、日米安保を反古にさせようとしたりと、一歩先が 分からない状態になっている。
ユーゴ戦争の時見せたように、中国がロシアと手を結ぶ可能性も出てきている。

 この展開を見ていると、アメリカ・ヨーロッパ・日本の3ヶ国が世界の 地域覇権を取り仕切っているようである。アジアは日本が面倒を見る。 アフリカと東欧州はヨーロッパが面倒を見る。中南米はアメリカが面倒を 見るとなっているが、ASEANや中国が自立したため、日本の資金に 余裕が出た。この資金ため、ロシアがヨーロッパの少ない資金から日本 潤沢な資金援助に乗り換えようとしている姿が見える。中国は日本から 独立し、直接アメリカと関係正常化し、日本に変わって、アジアの地域覇権 を取り仕切る魂胆が見えてくる。
 どちらにしても、アメリカの経済力・軍事力にどの国もかなわないので あるから、今後当分の間は米国に同調している限り、平和な日が続くと 思われます。

9.日本の役割と今後
 北朝鮮は、日本人拉致の問題・ミサイル問題等を片づけたら、 政治体制変革を含めて日本が協議しかつ、変革のための支援する必要が あるでしょう。
 経済の発展は、地域の安定に寄与することになるためで、経済が安定 した中国も簡単に他国に武力侵略はできないはずです。
 日本の支援した地域は全て、経済が安定し国力が増大している。 この実績は大きい。
このため、日本の支援モデルをアメリカは研究するべきです。アフリカも 中南米も日本支援モデルで復興可能であると考えられるのですが。

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