政治のリーダを考える

TT/1998-3

1.リーダとは
 政治のリーダとは、国の指導者のことであり、国の指導者は国民の生命・財産・文化伝統 を守る義務がある。この義務を履行する代わりに、国は税金を国民から頂いている。
 よって、政治のリーダは、国民の生命・財産・伝統が危機の時その危機を乗り越えたり、 衰退の時国の向かう方向を変更する役割を担っているのです。

2.模範リーダと失格リーダは
 この基準から見ると、リーダとして合格なのが、明治維新の方向を決定した大久保利通、 戦後の方向を決定した吉田茂首相、裏が白紙の紙幣を作り、金融恐慌拡大を止めた高橋是清蔵相 などであろう。不合格なのが神戸震災時無策で5000人以上の生命を奪った村山首相、 日華事変を不拡大にできなかった近衛首相だろう。危機の時は、日常的に運用している法律では 時間ロスが大きく、危機を拡大させる。このため、危機時には、法律の一部変更や停止などを 臨機応変にする必要がある。これを村山首相はしなかった。また、近衛内閣は、政治リーダの発言 と出先機関の対応が違うという醜態で当時の日本の信用を傷つけ、日本の交渉力を弱めて、 米国と戦争して数百万の国民を死に追いやった大元である。

3.日本リーダ像
 また、政治のリーダが求められるのは、国民の生命・財産・伝統が危機である時だけ。 危機でない時や高度成長など順調な時は、日常的な法律を公平に施行することが重要で、 佐藤首相のような人事に長けただけで、短期施策か無策の人の方がいいこともあるのです。
 もう1つ、日本が欧米諸国に比べて優秀な政治リーダがでないのは、農耕文化と島国のため、 民族の危機をあまり経験していない。このため、有能な政治リーダの必要を日本民族自体が あまり感じていない。このため、強引な小沢タイプのリーダを好まない。

4.日本の危機 3つの課題
 しかし、55年体制崩壊後、現在まで5年以上日本は危機の中にある。 日本は、世界最大の債権国家であるため、その日本の資金が世界に流れて、 世界の経済は維持している。この胴元の資金が変調を起こせば、世界の経済にもいつかは 変調を起こすことは明白である。このため、米国の政府が日本の内政に干渉する発言をする。
 戦後50年日本は、経済中心の吉田茂首相が策定した戦略を続けてきた。しかし、 今この戦略を変更する必要がでてきているのです。
何故か?それは、戦略変更を迫っている3つの課題があるためです。
 1つ目が、この5年間放置していた銀行の不良債権を早期に処理することにより、 資金の詰まりを解消して、この不況を止めること。経済政策の根幹である「銀行を潰さない政策」 の変更となる。これは完了する可能性あり。
 2つ目には、2015年に65才以上の人が全人口の4分1を占める高齢化社会へ日本は向かっている。 これに対応した年金制度・税金制度など戦後の社会構造を変革することが必要になっている。
 3つ目には、国際問題。
まず、北朝鮮が日本をミサイル攻撃して日本国民の生命を脅かす可能性が出てきた。 今まで他国から攻撃されることを日本国民は意識せず、有事立法も真面目に議論できなかった。 しかし、今有事に対応できるように国民の意識改革が必要になっている。
 もう1つが米国の金融中心経済が問題を起こすと、世界最大の債務国米国から海外資金が 逃げていく。世界唯一の覇権国家の没落が起きる可能性もある。このことが起こると、 世界の維持における日本の役割を変更しなければならなくなる。

5.今必要なリーダは
 この3つの問題の解決は、政治の優秀なリーダが新戦略を構築するしかないのです。
この課題を解決するためには、まず初めにリーダは、課題の解決と今後の日本と世界の動向を 考察した新戦略を見つけることが必要である。リーダがその戦略で解決すると確信できれば、 戦略案は他人の提案でもいいのです。
 それより、危機の時は時間ロスが致命傷になるため、戦略の実行スピ−ドを早くすることが 重要である。
 この3つの問題間には、相互間の関係があり、2つめの問題は消費税などの増税が必要であるが、 1つめの問題は消費を増やすため減税が必要という相矛盾した政策が必要である。 それをまとめた新戦略が必要なのです。このため、新戦略は簡単ではないのです。 そして、この新戦略を国民にわかるように説明することが必要です。また、政権を取らないと 新戦略の政策を実行できないために、同じ意見の仲間を多数集める必要もあるのです。
 最後に、リーダが危機意識を持ち行動し、かつ国民のため国家のためで、政治家個人の 私利私欲のためではないという意識を持つことが最重要であり、今後の危機を乗り切るためには、 小沢型のリーダが必要であろう。

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